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グレン・グールドの映像版「ゴルトベルク変奏曲」 [ジャズ・クラシック]

Goldberg Variations [DVD]

Goldberg Variations [DVD]

  • 出版社/メーカー: Sony Classical
  • メディア: DVD

その昔、社会人になってほどなく出会ったのが、グレン・グールドというピアニストが弾いたバッハの「ゴルトベルク変奏曲」だ。ひょんなきっかけでこのCDを聴いて、一発で気に入ってしまった。

バッハといえば教科書にあった生真面目な肖像画のイメージが強いが、「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」に登場する怪人レクター博士のお気に入りの曲、といえばわかる方もいるだろうか。

グールドは、「ゴルトベルク」を2回録音している。最初は1955年、22歳の時にデビューアルバムとして。そして、50歳で急死する前年の1981年に再び録音し、こちらは追悼アルバムとなってしまった。

アリアのあと30の異なる変奏が続き、再びアリアに回帰して終わる曲の構成と、「ゴルトベルク」に始まり「ゴルトベルク」で終わったグールドの人生とが重なる。偶然とはいえ、天才とはエピソードに事欠かないものだと思う。

最初の録音をした頃のグールドは、写真で見るとなかなかの美青年だ。この曲を駆け抜けるように一気に弾き、「これではジャズだ」という批判もあがるなど、斬新な解釈が大きな反響を呼んだ。その後、人気のさなかにコンサートに背を向け、録音だけのピアニストになることを宣言する。

2回目に「ゴルトベルク」を録音した時、彼の風貌は1回目の頃とは別人のようになり、演奏も緩急の振幅の差が大きい、別の意味で個性的なものになっていた。

私が最初に聴いたのは2つ目の録音だが、その後1回目の録音も聴き、解釈が異なる2つの演奏いずれも、折に触れて聴く大事なCDとなった。他の演奏家の録音もいろいろ聴いたが、どれもグールドのような充実感はなかなか与えてくれないのだ。

その2回目の録音と同時期に撮影・制作された映像のDVDが再発売されたので、さっそく購入した。

グールド自身が再録音の理由と解釈を説明するプロデューサーとの短いやりとりに続いて、演奏が始まる。映像作品の撮影というのに地味な普段着を着て、楽譜は置いてないのに老眼鏡らしき眼鏡をかけ、不摂生をうかがわせる小太りの身体を低い椅子に沈め、華麗さが売り物の一部の音楽家とは対極的な姿で音を紡ぎだしていく。

音楽に没入した表情、ハミングともうなり声とも聞える低い声、鍵盤の上を躍る長い指。人生という旅をあらわすかのような多彩な変奏が次々と奏でられる。そしてアリア・ダ・カーポの最後の音が消え、静かに頭を垂れるグールド。

画面と音に吸いつけられたままの50分間だった。

グールドは、音楽について語った対談もいくつか音声に残していて、私は英語の聞き取りの練習に使っていた。時にはユーモアもこめた饒舌で自然なやりとりは、即興とばかり思っていたが、実は事前に言葉を練りに練っていたものと後に知った。そうした解説者、話者としてのグールドの才能の一端も、このDVD冒頭の短いやりとりに垣間見ることができるように思う。

グールドと2つの「ゴルトベルク変奏曲」や生前のエピソードをめぐる NPR の短い3回シリーズの番組はこちら。2つの録音の一部も聞ける。
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=1967623

グールドと対談した音楽評論家が、生前の彼を語った WBUR の番組である。
http://www.theconnection.org/shows/2002/09/20020920_b_main.asp

グールドが生まれたカナダの、テレビ局のアーカイブはこちら。
http://archives.cbc.ca/IDD-1-68-320/arts_entertainment/glenn_gould/

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コメント 2

やったくん

はじめまして

先日トラックバックありがとうございました

自分も「ゴルドベルグ」に関してはグールド中心に聴いており、新しい演奏が出るたびに購入するのですがやっぱりグールドに戻ってきてしまいます。

このブログ勉強にもなりますのでまた拝見させていただきます。
by やったくん (2007-12-24 22:54) 

子守男

やったくん さん、ありがとうございました。私も「グールドの呪縛」という感じです。またおじゃまさせていただきます。
by 子守男 (2007-12-25 22:03) 

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