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「巻を措く能わず」 (unputdownable, page-turner) [読書と英語]

秋を迎え、本を読むにうってつけの季節になった。大学生の頃、ペーパーバックを読んでいて、途中で止めるのが惜しいと初めて感じた時はうれしかった。「巻を措く能わず」 というやつで、日本語を読む感覚にほんの少しだが近づけたように思った。

この言葉、「巻を置く」とする人もいるようで、それはそれで実感がこもっているが、それはともかく、まさに「巻を置くこと能わざる」となっている単語が unputdownable だ。

- too interesting to stop reading: so interesting, entertaining, or exciting that the reader cannot stop reading ( informal )
- so well written and entertaining as to be difficult to put down

page-turner という名詞もある。「読み始めたら止まらない」「先へ先へと進みたくなる」「ページを繰るのももどかしい」といった感じだろうか。

- a very interesting, exciting, or suspenseful book, usually a novel
- a book that is so exciting that you have to read it quickly
- a written work, usually a thriller, which is so gripping that readers cannot put down the book before finishing it.

そういえば、以前「page を turn しない本なんてあるのか」と皮肉った英文を読んだことがある。具体的には忘れたが、世の中、そんなに傑作ばかりとは限らないのに、こうした単語が宣伝にあふれているのをチクリと刺した内容だった。

それで頭に浮かぶのは、ペーパーバックの裏表紙や、表紙に続く最初の数ページの部分である。ここには、新聞雑誌の書評などから引用した、その作品のほめ言葉が目白押しだ。読者がどれだけまともに受け取っているかは別として、出版社の担当者が、こうした宣伝文句を見つけるべく目を皿のようにして書評などを読み、見つけたら見つけたで、どう切り取ろうかと考えているのだろうか、と想像すると、なんだか微苦笑したくなる。

こうした部分をじっくり眺めると、いろいろと面白い表現を拾い上げることもできる。ミステリなどエンターテインメント系では、作品や作者をこれでもかと持ち上げる感じになる。文学系の作品では、もう少し落ち着いたお褒めの言葉か。何かの賞を受けていれば当然そのことが書いてあるし、最終選考まで残れば shortlisted for といった表現で売り込みを図る。

そうした言葉の実例を挙げてもきりがないが、うまいと思ったものや、ちょっと笑ってしまったものを中心に、少し書き写してみよう。

- A thriller to out-thrill all thrillers.
- Thriller writing doesn't get any better than this.
- A nonstop roller coaster of a novel.
- Readers learn on page 1 that they are in for quite a ride.
- Leaves the reader tearing through it as though one didn't know how the story ended.
- He knows how to tell a story.
- Let's just say that if this novel doesn't get your pulse racing, you need to check your meds.
- Not only kept me up far too late one night, but got me up two hours early the next morning.
- Don't start this book late at night. It won't cause nightmares but it will cause lack of sleep at least until it's finished.

暇つぶしに書店に立ち寄った時は、洋書コーナーがあれば、ペーパーバックのこうした宣伝文句を次々と眺めてみると、まさに格好の暇つぶしになるかもしれない。

ちなみに、本のカバーなどについているPR用の宣伝文を指すのに blurb という単語がある。

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コメント 4

リウマチばあちゃん

こんばんは。
本当にペーパーバックの本文の前後にはこれでもかこれでもかと、たくさんの褒め言葉が並んでいますね。私はいつも評判の本や、賞を取った本等しか読まないので、こういう宣伝文をたくさん読むのですが、さすが新聞社や週刊誌の書評プロの書く文だけに、なるほどと思わされる表現がたくさんあります。
先日読んだRobert B Parkerの本には1個しか書かれていませんでした。読んでみると面白くなかったので、当然だと納得しました。
本を買う時は、たくさん推薦文の書かれている本に限りますね。(笑)
by リウマチばあちゃん (2007-10-06 21:48) 

子守男

リウマチばあちゃん さん、コメントどうもありがとうございました。
本当にペーパーバックのあの部分は面白いですね。ハードカバーは初出のためああしたほめ言葉はないのですが、PB化されたとたんにあの激しさ、その差が面白いですね。
日本語ではこうしたものがない代わりに、単行本でも文庫本でも初版についている「腰巻」が独自の味わいを出していますね。
by 子守男 (2007-10-06 23:56) 

marimann

書評のなかで、”ページ措く能わず” に出くわし、英語でなんと表現しているのだろう?とググったところ、こちらのサイトにたどり着きました。帯文のことを、英語でblurbというのですね。blurb にどんな情報、どんなキャッチイな言葉を入れるかは編集者の力量の見せ所なのでは、、、私はまさに帯買いの常連です。
by marimann (2024-03-10 08:45) 

tempus_fugit

本の帯は、著者の顔写真をデカデカを載せたものが最近やたら増えているように感じます。個人的には、帯は宣伝文句で勝負してほしいと勝手に思っているので、ちょっと引いてしまうのが正直なところです。
by tempus_fugit (2024-03-14 07:49) 

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