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クリスマスの名文 Yes, Virginia, there is a Santa Claus. [英語文化のトリビア]

Yes, Virginia, There Is A Santa Claus: The Classic Edition

Yes, Virginia, There Is A Santa Claus: The Classic Edition

  • 作者: Francis P. Church
  • 出版社/メーカー: Running Press Kids
  • 発売日: 2001/08/23
  • メディア: ハードカバー


クリスマスにちなんだ英文として、まっさきに私の頭に浮かぶのは、「サンタって本当にいるの?」という少女の問いに答えた "Yes, Virginia, there is a Santa Claus." である。100年以上も前に書かれたものだが、今でもこれをもじった言い回しが使われているほどだ。

友だちから「サンタなんていないよ」と言われた Virginia が父親に尋ねると、「新聞にきいてみなさい」との答えだった。何だか責任逃れだなあと思うが、少女からの投書にちゃんと答えた The New York Sun 紙のおかげで、短いが心温まるこの社説が生まれた。

文章は、バージニアの質問から始まる。

Dear Editor:
I am 8 years old.
Some of my little friends say there is no Santa Claus.
Papa says, "If you see it in The Sun it's so."
Please tell me the truth; is there a Santa Claus?

英語面で気がつくのは、Santa Claus に a がついていることだ。英文法の本に出てくる「可算名詞として使われる固有名詞」とか「固有名詞の普通名詞化」というやつだろうか。本当に本人が書いた通りの文だとしたら、ネイティブは8歳にして、すでにちゃんと使っていることになる。もうひとつ、友だちを little といっているのが面白い。これは小さいとか年下ということではなく、親しみを込めた意味だろうか。

これに回答が続く。名文だと思う。一部を引用してみよう。

- Yes, Virginia, there is a Santa Claus. He exists as certainly as love and generosity and devotion exist, and you know that they abound and give to your life its highest beauty and joy.

- Nobody sees Santa Claus, but that is no sign that there is no Santa Claus. The most real things in the world are those that neither children nor men can see. Did you ever see fairies dancing on the lawn? Of course not, but that's no proof that they are not there. Nobody can conceive or imagine all the wonders there are unseen and unseeable in the world.

難しい語彙・構文は使っていないが、かといって必要以上に子ども扱いしているわけでもない。少女の質問に真摯に答えようとしている姿勢が見て取れるが、同時に、大人も念頭に置いていることもうかがえる。

無記名の社説とあって、誰が書いたか明かされたのは、筆者が亡くなってからだった。Francis Pharcellus Church は、南北戦争の取材もしたベテランの記者だったという。

この文章、「もっとも再録・転載された社説」という記録を持っているそうで、今も、"Yes, Virginia,..." をもじった言い方に触れることがある。

以前、「冥王星は惑星か否か」が国際学会で討議されたことにからんで、「水金地火木土天海冥」は英語で何というか」について書いたことがあるが、惑星を12個にする案を報じるある記事には、"Yes, Virginia, Pluto is a planet." という文が出てきた。

討議の結果、この案は否決され、逆に冥王星は惑星から外されてしまったが、ネットで調べたら、今度は、"No Virginia, Pluto Ain't a Planet No More." と、さらにもじったタイトルの記事も見つかった。

こうした例は、もとの文章を知らなくても、せいぜい「なんで Virginia って名前が出てくるんだ?」と思うくらいで、ほとんどの場合、内容の理解に支障はないだろう。しかし、知っていればやはり面白さが違ってくるはずだ。

Virginia や Santa Claus の見出し語の中でこの社説に触れた英和辞典はないかと店頭で調べたが、見た範囲では見つからなかった。英米の通常の辞典にもないようだが、それにならう必要はなく、むしろこうした文化的情報はもっと英和辞典に取り込んでほしいと思う。

さてこの社説、あまりによく出来た話だと思われたのか、「質問した少女は本当にいるのか」という疑問も出たそうだ。バージニアはれっきとした実在の人物で、それどころか肉声をネットで聞くことができる。

教師となって47年間教壇に立ち、1971年に亡くなった Virginia O'Hanlon が、この社説から何を教えられたのか、生前語った音声が次のサイトにある。
http://archives.cbc.ca/IDC-1-69-412-2344/life_society/christmas_fun/clip4

社説の全文や解説は、ネットでいくつも見つかるが、次のサイトでは写真を拡大すると、オリジナルの紙面で本文が読める。
http://www.newseum.org/exhibits/online/yes-virginia/

私には幼い子供がいる。成長するにつれ、世の中のさまざまな現実を知ることだろう。だが、この社説の最後にある次のような言葉を素直に受けとめることができる心を失わないでほしいと願っている。

No Santa Claus! Thank God, he lives, and he lives forever. A thousand years from now, Virginia, nay, ten times ten thousand years from now, he will continue to make glad the heart of childhood.

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Medlearning

とても心温まる話ですね。冠詞の解説も勉強になりました。
by Medlearning (2007-12-24 20:25) 

子守男

Medlearning さん、どうもありがとうございました。
by 子守男 (2007-12-25 22:00) 

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