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「震源」と「震源地」はどう違うのか [ニュースと英語]

石川県沖を震源とした震度6強の地震が起きた。英語で「震源」は epicenter だと思う人もいるだろうが、はたしてそれでいいのだろうか。

地震国日本とあってか、今回の被害は海外のニュースサイトの中にもかなり大きく扱っているものがあった。BBCのサイトを見てみよう。

The Japan earthquake struck at 0942 (0042 GMT). Its epicentre was 300km (200 miles) north-west of Tokyo about 50km (30 miles) below the seabed, Japan's meteorological agency said.

確かに epicenter が出てきた(この記事ではイギリス式綴り)。次はロイター通信の記事である。

The focus of the tremor was at a depth of 50 km (30 miles) below the seabed off the Noto peninsula in Ishikawa prefecture, about 300 km (190 miles) from Tokyo, the Japan Meteorological Agency said.

こちらは focus という単語を使っている。何か違いがあるのだろうか。

一方、日本の共同通信のサイトを見ると、focus と center を使った英文記事があり、epicenter はなかった。

- The center of the quake was some 40 kilometers west-southwest of Wajima in the sea off Noto Peninsula and about 50 km underground, according to the agency.

- The meteorological agency initially put the quake's magnitude at 7.1 but revised it downward to 6.9. The depth of the focus was also changed to 11 km from the initially estimated 50 km.

辞書で確かめると、「震源」とは、地震が起きた地中の箇所のことで、英語では epicenter ではなく、focus (または center) というのが正しいことがわかる。英英辞典には、

- the exact location below the surface where the quake originated

- the point of origin of an earthquake. Compare with EPICENTER

とある。

一方、epicenter は「震源地」または「震央」にあたる英語であり、「震源」の真上にある地表の場所を指す。epi- は upon や above という意味で、辞書ではまさに

the point on the Earth's surface directly above the focus of an earthquake

と定義されている。もう一度まとめると、

震源 - focus, center - 地中
震源地(震央) - epicenter - 地上

ということになる。

実は、上に引用した英文は地震が起きてから数時間後にインターネットを眺めていて見つけたもので、その後、記事はいずれも更新された。BBCも、新しい記事では epicentre を東京からの距離を示すためだけに使っていて、深さについての情報は消えていた。最初の記事でこの単語を使ったのは不適切だったと判断したからなのかどうかはわからない。

以前、あるアメリカ人と話した時にこの2つの言葉について話題にしたことがあるが、彼も epicenter と focus の違いを認識していなかった。こうした例を見ると、「震源と震源地の違い」は、英語のネイティブでもそれほど意識していない人がいるといえるかもしれない。勝手な想像だが、epicenter を「震源」のつもりで使っているケースもけっこうあるのではないだろうか。

もっとも日英ともに、日常レベルでは、この2つをいっしょにしたからといって、問題が起きることはあまりなさそうなのもまた確かだろう。

ついでに書くと、epicenter は比喩的に focal point の意味でも使われる。辞書には stood at the epicenter of the international crisis という用例が載っていた。

また、「震源」を意味する単語としては、他に hypocenter がある。こちらは the point on the earth's surface directly below the center of a nuclear bomb explosion という意味もあり、広島・長崎関係の英文によく出てくる。

ground zero も同じような意味だが、こちらは911テロのあと、貿易センタービル跡地を指す単語としてもよくお目にかかる。

余談だが、地震の「マグニチュード」は an earthquake measuring X(数字) on the Richter scale のように使われるが、今回読んだ記事では、a strong earthquake with an estimated magnitude of 6.9 や the 6.9 magnitude earthquake のように、いずれも Richter scale は使っていなかった。もういわずもがなになった、ということだろうか。

この指標を考えた Richter はアメリカ人で、-ch- は/k/と発音するが、日本地震学会のサイトに「英語ではリヒタースケールという」とあるように、ドイツ語風の読みで定着しているようだ。

ついでに書くと、日本の震度階は気象庁が定めたもので、国際的なものではない。数字だけあげるのではなく、今回の地震について共同通信の記事が書いているように、

It registered upper 6 on the Japanese seismic intensity scale of 7 in the Noto area in Ishikawa, the first intensity 6 quake to hit the prefecture since 1926, the earliest year for which observation data are available.

などと工夫しないと意味をなさないだろう。

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