Beam me up, Scotty! [スター・トレック]
TVドラマ「スター・トレック」の有名なセリフのひとつに、"Beam me up, Scotty." がある。アメリカでは、ファン以外にも広く知られているようで、辞書にも収録されている。
ところが前回書いた「カサブランカ」や「シャーロック・ホームズ」の例と同様、ドラマの中でこれと同じ形で使われたことは、実は一度もないのだそうだ。
Scotty とは、"Star Trek" の最初のシリーズに出てくる登場人物のひとりだ。演じた James Doohan は2年前に亡くなったが、今年の4月、遺言に従って遺灰がロケットに載せられて宇宙を飛んだ。その「宇宙葬」が決まったことを伝える英文記事も、このセリフを見出しにしている。
"beam" とは、「スター・トレック」 に出てくる未来のテクノロジーを使って、人間やモノを移動・輸送する際に使われる。物質をエネルギー光線に変換して別の場所に瞬間的に移動させるというもので、例えば惑星上にいる乗組員は、"beam up" して宇宙空間にいる宇宙船に一瞬にして戻ることができる。Scotty は宇宙船の主任機関士なので、その装置を操作することが多い。
…などといっても、作品を見ないと何のことやらわからないかもしれないが、先ほどの記事では、この言葉がタイトルだけに使われて本文では出てこないものがあり、逆に言えばそれくらい「常識」扱いされているらしいことがうかがえる。
しかし、アメリカ人にとっては「常識」でも、外国人は知らなければお手上げだ。以前、何かの翻訳を読んでいたらこのセリフのもじりが出てきたが、訳者は明らかに何のことか理解しておらず、トンチンカンな訳をつけていた。
私は「スター・トレック」を子供の時から知っていたので、このセリフにはなじみがあった。学生時代初めて行ったアメリカで、このセリフに実生活で初めて出会って感激したが、それはトイレの落書きだった。どこか別の場所に行きたい場合に、おどけて使われたのを耳にしたこともある。
最近はこの表現を収録している辞書もあり、苦境から救い出してほしい、なんとかしてくれ、といった意味で使う、などという説明があった。登場人物が Scotty に beam up してもらって、間一髪危機を逃れるという筋書きから来ているのだろう。
しかし実際のドラマの中では、似たような言い方はあっても "Beam me up, Scotty." として使われたことは一度もなかったというわけだが、そこまで言及している一般の辞書はないようだ。たしかにドラマでも、実際には "Beam me up." と同じ意味の "Energize." という言葉を使っている場合が多いような印象がある。
上記の記事も、この「常識のウソ」に触れたものがある。
ところでドゥーアン氏の「宇宙葬」とは、宇宙空間に散骨するのではなく、遺灰を載せたロケットを打ち上げてまた回収するというもので、しめて495ドル、これなら庶民にも手が届きそうな値段だ。宇宙葬もビジネスになりつつあるということだろうか。実施しているのは Space Services Incorporated という会社だ。
http://www.spaceservicesinc.com
最初の "Star Trek" は、つくられて四十余年になり、今見ると特撮シーンはかなりしょぼいが、人気シリーズとあってか、CGを駆使して特撮部分をリメイクした新版が最近アメリカで制作された。日本でも7月21日からオンエアされる予定になっている。
ところが前回書いた「カサブランカ」や「シャーロック・ホームズ」の例と同様、ドラマの中でこれと同じ形で使われたことは、実は一度もないのだそうだ。
Scotty とは、"Star Trek" の最初のシリーズに出てくる登場人物のひとりだ。演じた James Doohan は2年前に亡くなったが、今年の4月、遺言に従って遺灰がロケットに載せられて宇宙を飛んだ。その「宇宙葬」が決まったことを伝える英文記事も、このセリフを見出しにしている。
- "Beam Me Up, Scotty"
http://www.aero-news.net/index.cfm?ContentBlockID=ab71efa7-6326-41b4-b777-6cfee5d6ba9b
- "Scotty's ashes to be beamed up"
http://www.news24.com/News24/Entertainment/Off_Beat/0,,2-1225-2107_2092057,00.html
- "Beam me up, Scotty: Space launch set for James Doohan's ashes"
http://www.khou.com/news/entertainment/stories/khou070402_tnt_scottyashes.25bcbeb3.html
"beam" とは、「スター・トレック」 に出てくる未来のテクノロジーを使って、人間やモノを移動・輸送する際に使われる。物質をエネルギー光線に変換して別の場所に瞬間的に移動させるというもので、例えば惑星上にいる乗組員は、"beam up" して宇宙空間にいる宇宙船に一瞬にして戻ることができる。Scotty は宇宙船の主任機関士なので、その装置を操作することが多い。
…などといっても、作品を見ないと何のことやらわからないかもしれないが、先ほどの記事では、この言葉がタイトルだけに使われて本文では出てこないものがあり、逆に言えばそれくらい「常識」扱いされているらしいことがうかがえる。
しかし、アメリカ人にとっては「常識」でも、外国人は知らなければお手上げだ。以前、何かの翻訳を読んでいたらこのセリフのもじりが出てきたが、訳者は明らかに何のことか理解しておらず、トンチンカンな訳をつけていた。
私は「スター・トレック」を子供の時から知っていたので、このセリフにはなじみがあった。学生時代初めて行ったアメリカで、このセリフに実生活で初めて出会って感激したが、それはトイレの落書きだった。どこか別の場所に行きたい場合に、おどけて使われたのを耳にしたこともある。
最近はこの表現を収録している辞書もあり、苦境から救い出してほしい、なんとかしてくれ、といった意味で使う、などという説明があった。登場人物が Scotty に beam up してもらって、間一髪危機を逃れるという筋書きから来ているのだろう。
しかし実際のドラマの中では、似たような言い方はあっても "Beam me up, Scotty." として使われたことは一度もなかったというわけだが、そこまで言及している一般の辞書はないようだ。たしかにドラマでも、実際には "Beam me up." と同じ意味の "Energize." という言葉を使っている場合が多いような印象がある。
上記の記事も、この「常識のウソ」に触れたものがある。
Although the Canadian-born actor inspired the catchphrase "Beam me up, Scotty," it was never spoken on the television show.
The Canadian-born actor who inspired the catchphrase "Beam me up, Scotty" - even though it was never actually uttered on the television show - died two years ago at the age of 85.
ところでドゥーアン氏の「宇宙葬」とは、宇宙空間に散骨するのではなく、遺灰を載せたロケットを打ち上げてまた回収するというもので、しめて495ドル、これなら庶民にも手が届きそうな値段だ。宇宙葬もビジネスになりつつあるということだろうか。実施しているのは Space Services Incorporated という会社だ。
http://www.spaceservicesinc.com
最初の "Star Trek" は、つくられて四十余年になり、今見ると特撮シーンはかなりしょぼいが、人気シリーズとあってか、CGを駆使して特撮部分をリメイクした新版が最近アメリカで制作された。日本でも7月21日からオンエアされる予定になっている。
タグ:翻訳・誤訳 =英語文化のトリビア
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以前読んだ翻訳関係の雑誌のコラム記事には「恥をかいてばつが悪くいたたまれないときに "Beam me up" を使う」と書いてありました。これは日本語でいえば「穴があったら入りたい」というような感じでしょうかね。
by たんご屋 (2007-06-27 19:54)
たんご屋 さん、面白い情報ありがとうございます。なるほど、そんな意味もあったのですか。
私からもひとつ、本文には書かなかったのですが、このセリフ、「ドラッグをやってハイになろう」という意味で使われたこともあったと何かで読みました。
by 子守男 (2007-06-28 01:17)
海外のゲームにこの言い回しが出てきて意味がわからなかったのですが、詳しくまとめてありよくわかりました
古い記事ですが、コメントさせていただきます
by モフオ (2014-06-17 01:52)
かなり前に書いたものですが、お役に立てたのでしたらうれしいです。ありがとうございました。
by tempus fugit (2014-06-18 00:46)