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「やられ役」を英語で何という? [和英表現]

ドラマでは、危険な状況に置かれた主要登場人物が死んでしまっては話が続かない。SFドラマ「スター・トレック」の最初のシリーズでは、突発的な危機の際もレギュラー出演者たちは無事で、命を落とすのは見慣れない乗組員、というパターンがみごとに定型化していた。エキストラ俳優演じる名もない乗組員が出てくると、ああこれは「やられ役」だな、とわかってしまうわけだ。

その昔、英文雑誌で「スター・トレック」についての記事を眺めていて、こうした「やられ役」が expendable character、ensign expendable (ensign は「少尉」、発音は通常/ensn/)などと表現されているのに気づいた。「使い捨て」というニュアンスであろうか。

スタートレック」のパロディに、「ギャラクシー・クエスト」 "Galaxy Quest" という1999年公開の映画があるが、ちゃんと「やられ役」が取り上げられていた。

「やられ役」を演じる登場人物は、こんなセリフを口にする。

- I'm expendable. I'm the guy in the episode who dies to prove how serious the situation is.

また、この映画についての記事には、「やられ役」キャラについてこんな文があった。

- He's afraid he's the no-name extra playing the expendable crewman, a role that's a veritable death warrant.

「スター・トレック」の「やられ役」を指すのにファンが使う別の単語もある。redshirt がそれで、「やられ役」の乗組員はたいてい "Security" という部署に属していて、ここの制服は赤と決まっていることから来ているらしい(科学・医療関係の乗組員の制服は青など、部署によって色が違うという設定になっている)。

- A "redshirt" is a stock character in fiction who dies soon after being introduced.
- In many episodes of Star Trek, red-uniformed security officers and engineers accompanying the main characters on landing parties quickly die.
http://en.wikipedia.org/wiki/Redshirt_%28character%29

ここまでくると「おたく」の世界で、ファン以外にはほとんど通用しないように思えるが、Wikipedia の redshirt の項目によれば、徐々にその使用が広まっているということだ。もっともこの項目も、今の時点で "This article or section may contain original research or unverified claims." と冒頭に書かれているので、どこまで真に受けていいのかわからないが。

もっと汎用的な redshirt の意味としては、a college or university athlete who is kept out of competitions for one year in order to improve his or her skills and extend his or her period of eligibility という説明が辞書にある。

さて、元の「やられ役」に関連した英文を読んでいると、disposable を使っている例もあった。

- Guy begins the story as a "Questerian" (Trekkie) who played a small role as a disposable crewman.
http://en.wikipedia.org/wiki/Galaxy_Quest

- John Scalzi's novel Redshirts both spoofs and pays homage to the notion of disposable low-ranking crew members on a Star Trek-style starship.
http://en.wikipedia.org/wiki/Redshirt_%28character%29

ちなみに同じ「やられ役」でも、プロレスで使われる、主役レスラーを引き立てるレスラーのことはどういうのだろうかと思い、以前調べたことがある。答えは jobber で、そうした行為を job というのだそうだ。ネットでは次のような例があった。

- A wrestler who loses every time or almost every time becomes known as a "jobber."
- The act of losing is called jobbing, and a frequent loser is referred to as a jobber.

さて、「やられ役」からさらに連想した単語に cannon fodder (「大砲の餌食」)がある。soldiers who are regarded as expendable in the face of artillery fire; members of the lowest ranks of the military, regarded as an expendable resource in wartime ということで、戦闘で真っ先に犠牲になる可能性のある下級の兵士を指す。軍隊以外にも、一般的に組織でいいように使い回され、使い捨てにされる人を指すのに使われるようだ。

ついでに、 cannon のつながりで頭に浮かんだのが loose cannon で、one who is uncontrolled and therefore a serious and unpredictable danger つまり、何をするかわからない人物・信用できない人ということである。loose cannon on deck ということもあるようだ。

どこへ飛んでいくかわからない大砲の砲弾に由来している、という説明をどこかで読んだような気がしたが、改めて調べるとそうではなく、昔の軍艦で、嵐のときにデッキ上の大砲をしっかり固定しないと動き回って自艦を壊しかねない、ということから来たという。

追記:
「エクスペンダブルズ」 "The Expendables" という映画がアメリカで製作された。かのシルヴェスター・スタローンが主演だ。

追記2:
「スター・トレック」の redshirt をモデルにしたSF小説が、タイトルもこのままで(複数形になっているが)書かれてしまった。関連で次のようなエントリを書いた。「レッドスーツ」という題で翻訳も出ている。

・「技術的に」ではない technically
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2015-07-14


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