動詞ではない go (アポロ計画と「サンダーバード」) [注意したい単語・意外な意味]
先日の記事でティコ・クレーターのことに触れたが、人類が初めて月に第一歩を記したのは38年前の今の時期、7月20日だった。この時に同時通訳をした西山千氏も、今月初め鬼籍に入られた。偶然にも、今月は1969年7月と各日の月齢がほぼ同じだ。そんなことから、アポロ計画や宇宙飛行から連想した英語について綴ることにしよう。
宇宙飛行士と地上の交信は、専門用語が多くてわからないことが多いが、いよいよ月へ降下するアポロ11号の着陸船 lunar module イーグルとヒューストンの交信記録を読んでいてひとつ気がつくのは、動詞ではない go がよく使われていることである。
例えば、
などという言葉が出てくる。なお通信によく出てくる表現として、read (あるいは copy)は「聞える、聞き取れる」、over は、文章の最後では「どうぞ」にあたる。
実は私は早くから、動詞ではない go に出会っていた。子供の頃、「サンダーバード」 Thunderbirds というイギリスのテレビドラマが日本でも人気だったが、毎回オープニングで "Thunderbirds are go." という言葉が原語のまま出てくる。その後映画化された際は、これがタイトルになっていた。
いったい何でbe動詞の後にまた動詞の go がつくんだ、と思ってある時辞書を見たら、ちゃんと答えがあり、辞書は厭わず引くべきだといういい体験になった。考えれば当然だが、この go は動詞ではなかった。
もっとも、上記の交信記録の場合は、許可や指令の意味に取るほうが自然のようにも思える。最初の"You're go for powered descend." (エンジンを使った降下、ということか)は、交信状態が悪かったのか、すぐ後にイーグル上空の司令船コロンビアが、"Eagle, this is Columbia. They just gave you a go for powered descent." と内容を伝えている。
名詞の go については、次のような説明がある。
交信は短く簡潔な言葉が要求されるだろうから、be given a go (for) が、このように短くなったのだろうか。このへんはよくわからないので、ご存知の方は教えていただければ幸いである。
さて月といえば、先日の silver lining からの連想でもあるが、英語では銀色で形容することが多いようだ。エリザベス朝の詩人 Charles Best の “A Sonnet of the Moon” という作品がある。"Look how the pale queen of the silent night"と始まるが、"the silver waggon of the moon" というところがある。
http://theotherpages.org/poems/best01.html
SF作家の御大ロバート・A・ハインラインに「月は無慈悲な夜の女王」という作品があるが、原題は queen ではなく、"The Moon Is A Harsh Mistress" である。ローマ神話で月の女神はディアナ(ダイアナ)、純潔の女神でもあり、性格は厳しく無慈悲だそうだ。
また、アラビア語で女性を誉めるときは「月のように美しい」と形容するそうだ。あちらの地域では、「あなたは私の太陽です」とか "O sole mio" といって女性を讃えるのには日差しが強烈すぎ、玲瓏とした月の方が似合うのだろうか。
「アポロ計画」と関連する英語については、次回も続けたい。
宇宙飛行士と地上の交信は、専門用語が多くてわからないことが多いが、いよいよ月へ降下するアポロ11号の着陸船 lunar module イーグルとヒューストンの交信記録を読んでいてひとつ気がつくのは、動詞ではない go がよく使われていることである。
例えば、
- Eagle, Houston. If you read, you're go for powered descent. Over.
- You're go for landing. Over.
- Eagle, looking great. You're go.
( http://www.hq.nasa.gov/alsj/a11/a11.landing.html )
などという言葉が出てくる。なお通信によく出てくる表現として、read (あるいは copy)は「聞える、聞き取れる」、over は、文章の最後では「どうぞ」にあたる。
実は私は早くから、動詞ではない go に出会っていた。子供の頃、「サンダーバード」 Thunderbirds というイギリスのテレビドラマが日本でも人気だったが、毎回オープニングで "Thunderbirds are go." という言葉が原語のまま出てくる。その後映画化された際は、これがタイトルになっていた。
いったい何でbe動詞の後にまた動詞の go がつくんだ、と思ってある時辞書を見たら、ちゃんと答えがあり、辞書は厭わず引くべきだといういい体験になった。考えれば当然だが、この go は動詞ではなかった。
- adj. 1. ready. 2. functioning properly.
"two minutes before the satellite is to be launched and all systems are go."
- (informal) functioning correctly and ready for action
- functioning properly : being in good and ready condition
もっとも、上記の交信記録の場合は、許可や指令の意味に取るほうが自然のようにも思える。最初の"You're go for powered descend." (エンジンを使った降下、ということか)は、交信状態が悪かったのか、すぐ後にイーグル上空の司令船コロンビアが、"Eagle, this is Columbia. They just gave you a go for powered descent." と内容を伝えている。
名詞の go については、次のような説明がある。
- permission to proceed: go-ahead
"gave the astronauts a go for another orbit"
- a situation in which planned operations can be effectuated
"The space mission is a go."
交信は短く簡潔な言葉が要求されるだろうから、be given a go (for) が、このように短くなったのだろうか。このへんはよくわからないので、ご存知の方は教えていただければ幸いである。
さて月といえば、先日の silver lining からの連想でもあるが、英語では銀色で形容することが多いようだ。エリザベス朝の詩人 Charles Best の “A Sonnet of the Moon” という作品がある。"Look how the pale queen of the silent night"と始まるが、"the silver waggon of the moon" というところがある。
http://theotherpages.org/poems/best01.html
SF作家の御大ロバート・A・ハインラインに「月は無慈悲な夜の女王」という作品があるが、原題は queen ではなく、"The Moon Is A Harsh Mistress" である。ローマ神話で月の女神はディアナ(ダイアナ)、純潔の女神でもあり、性格は厳しく無慈悲だそうだ。
また、アラビア語で女性を誉めるときは「月のように美しい」と形容するそうだ。あちらの地域では、「あなたは私の太陽です」とか "O sole mio" といって女性を讃えるのには日差しが強烈すぎ、玲瓏とした月の方が似合うのだろうか。
「アポロ計画」と関連する英語については、次回も続けたい。
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この記事に関係ないコメントでご免なさい。用が無くなれば削除してください。
「The game is afoot その2」(391)を書きましたのでごらんください。
by Michio (2007-07-26 08:59)
Michio さん、記事を拝読し、大変参考になりました。コメントもさせていただきました。どうもありがとうございます。
by 子守男 (2007-07-27 00:06)
専門家の方には挑発的な書き方ですが、
Thunderbirds are go! について二つほど文をものしています。よければご一読なさってください。
http://luckforty.nikki-k.jp/n.k/GenreNumber.53
by generaltrash (2008-03-13 04:37)
generaltrashさん、どうもありがとうございました。参考にさせていただきます。
by 子守男 (2008-03-13 09:38)