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「英語学習7つの誤解」 [英語学習]

英語学習7つの誤解 (生活人新書)

英語学習7つの誤解 (生活人新書)

  • 作者: 大津 由紀雄
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本


夏休みの旅先で読んだ新書である。何か持っていこうと出発の前日に書店をぶらぶらしていたら、出版されたばかりで平積みになっていたのが目にとまった。こうした「英語学習法」系の本を私はほとんど読まなくなったが、値段も手頃なので買い求めた。

著者は、「英語学習の誤解」として、次の7つをあげている。

1.英語学習に英文法は不要である
2.英語学習は早く始めるほどよい
3.留学すれば英語は確実に身につく
4.英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である
5.英語はネイティブから習うのが効果的である
6.英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である
7.英語学習には理想的な、万人に通用する科学方法がある

そして、それぞれの項目について、筋道立てて「誤解」を解き明かしていく。このほか、かつて一世を風靡した「英語を考える」という学習論についても考察されていて面白い。

英語学習についての著者の基本的な姿勢は、次のような記述によく表れていると思う(「です・ます調」の原文を多少短くして引用する)。

- 「外国語」の学習を、「母語」や「第二言語」の獲得と混同してはならない。「母語」「第二言語」と「外国語」は身につける過程と成功のための条件がまったく異なる。これらを区別することなく、同じものだと思い込むところに、英語学習の俗説や誤解がはびこる根本的な理由がある。

- 優れた学習者は試行錯誤を含む実践の中から、自分にあった学習法を探し出す。学習の方法は人それぞれ異なる。要は努力であり、結局は、その努力をいかに継続させることができるかどうかということに行き着く。

最近はやりの傾向についてのコメントもある。例えば、「イメージで覚える」といった文法書の長所を認めた上で、こうした方法は万能ではないと指摘している。

- 感覚やイメージによる説明は、基本的な用法については効果的だが、拡張的な用法になると、「そう言われれば、そうも考えられるな」という、後付けの説明になっているのではないかと感じられることがしばしばある。

このように、なるほど、と思わされる記述が多いのだが、その中ではちょっと弱いなと私には感じられたのが、誤解2の早期教育についてである。

1年前の、早期英語教育についてのエントリで、「英語の専門家からの早期教育反対論は、実務の場で今の英語教育に危機感を感じている非専門家とは距離感があり、そうした一般の人の疑問に応えていないのではないか」というようなことを書いた。この本の著者の論拠も、やはり説得力があるものには思えなかった。

私は早期英語教育についてはいまだに考えが固まっておらず、専門家でもないので、著者の考えは間違いだと言いたいわけではないが、例えば、

- 母語の獲得に臨界期があるかどうかについて、脳科学からの明確な回答は出されていない。
- 外国語学習に臨界期が存在するという証拠も、妥当性のある議論も、現在までのところ見当たらない。

といった説明を読んでも、「なるほど早期教育は無意味だ」とは思えない。まったく同じ理由を使って「だから早期教育を進めるべきだ」とも主張できる、と言ったら天邪鬼だろうか。

また著者は、

- 英語学習を早くから始めることへの危惧として、母語の獲得に影響を及ぼす可能性が指摘されることがある。しかし、母語は外国語学習によって影響を受けるほど軟弱ではない。

と述べていて、なるほど、と思うのだが、続いて、

- むしろ問題とすべきは、英語に対する姿勢である。早期外国語教育の対象として、英語という特定の言語だけを選ぶことによって、英語はほかの言語よりも優れた言語であるという印象を子供に与えてしまってはならない。

という記述を読むと、これは何も子供に限ったことではなく、現に大きくなってから英語を学んだ人にも見られることで、早期教育の問題というより、日本の英語教育全体として捉えるべきではないか、と思った。

他にも気になる点がある。「達人たちの英語学習法に学ぶ」という章では、12人の「達人」にアンケートをしているが、そのうち9人までが、英語や言語学の専門家あるいは教師である。その1人が、「英語が好きだったので興味を持って学習しただけ」「学習法というより、きっかけが大事だと思う」と回答しているように、もともと英語が好きで得意だったからこそ、そうした道を選んだのだろう。もっと、実務で苦しみつつ英語を使って上達した人たちから、弱点克服の工夫などを訊いて紹介して欲しかったと思う。

英語は素人の身でありながら、感じたままにいろいろ厳しいことも書いてしまったが、全体として、この本で著者が述べていることは、英語学習者の参考になる内容が多いと思う。だからこそ、言語の専門家であるがゆえの枠のようなものを、時に意識させられることがあるのを惜しく感じた。

早期英語教育の現状や、英語を専門としない人が英語を使わざるを得ない企業などの状況を、著者はどう捉えているのだろうか、理詰めだけではない、現場を踏まえた考察だったら、もっと説得力が増しただろうに、と思わされたのがちょっと残念な点だった。

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