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職責にしがみつかなかった「美しい国」の総理大臣 [日本のニュース]

先日、安倍総理が「職責にしがみつくことはない」と述べた際、言葉の使い方が変ではないかという指摘がいくつかネット上に載った。私も以前、総理が言った「慙愧に堪えない」について書いたことがあるが、今回は「職を賭して頑張る」ということをいいたいのだろうと思った。しかし坊っちゃん育ちという先入観もあって、「職といっても総理の椅子。辞めても失業するわけではなし、説得力がないな」などと思っていたが、日をおかず、本当に職と職責を放り投げてしまったのには驚いた。

「党首会談を断られてしまった」と、駄々っ子のようなことを言っていた辞任会見の説明も、よくわからないものだった。その後、官房長官が健康不安をあげた。前農水相の絆創膏事件ではないが、そうなら本人がきちんと説明すればいいだけの話だ。いくら坊っちゃん育ちでも、自分の行動がいかに無責任・非常識かくらいはわかるはずだ。やはり、一部で囁かれている本人のスキャンダルなど、人前で言えないような本当の理由があるのではないか。

そんな風に思っていたら、実際に入院してしまった。仮にスキャンダルでなく、伝えられる病状が辞任につながったのだったら、肉体的にも精神的にも総理大臣の職に堪えるだけの資質に欠けていたということであろう。

そもそもその器ではなかったのに、出自と成り行きで担がれてしまったのが悲劇だったが、それにしては、「美しい日本」を唱えながら、逆に最後まで「美しくない」言行の悪しき手本ばかりだった。反面教師ならまだしも、「劣化する日本人」の一例とすらいえるように思う。

英米の主要メディアのサイトにある記事をいくつか読み比べてみた。アメリカのメディアは、やはり自国との関わりに目が行くようだ。。「ニューズウィーク」は、ブッシュとの協調路線の取った末に退陣に追い込まれたブレアやベルルスコーニらと同じ末路を安倍氏も辿った、というようなことを書いていた。また「ワシントン・ポスト」の社説は、

But Mr. Ozawa has stepped beyond the bounds of serious debate by denying the legitimacy of the Afghanistan operation itself, announcing, absurdly, that "the U.S. started this war unilaterally without waiting for a consensus to be built in the international community."
(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/12/AR2007091202263_pf.html)

などと、(日本の)民主党についてかなりはっきりとした見方を示している。

ブレアが首相をつとめていたイギリスのいくつかのメディアは、辞任直後というタイミングで日本人として読む分には、より面白いと感じた。「インディペンデント」のある記事は、

Mr Abe's departure, ostensibly over his failure to fulfil a personal promise to President George Bush that Japan would continue to back the US "war on terror", is a textbook case of the arrogance of power.
( http://comment.independent.co.uk/leading_articles/article2956400.ece )

と書いている。安倍氏の出自にも触れている。

Mr Abe found it increasingly hard to shake the perception of a man badly out of touch with popular concerns and obsessed with a narrow nationalist agenda, inherited from his ex-prime minister grandfather.

この点については、「ファイナンシャル・タイムズ」も、

The preoccupation with restoring pride to Japan and ditching what Mr Abe considered its masochistic self-image following its defeat in war came from his grandfather. Nobusuke Kishi (中略). Mr Abe admired Kishi’s patriotism and his determination to do what he considered the right thing in the national interest, even if his popularity suffered.
( http://www.ft.com/cms/s/0/e0743c4e-6190-11dc-bf25-0000779fd2ac.html )

としていた。

さて、今回の騒ぎを見ていて、安倍氏以外にも見苦しいと思ったことがあった。ひとつは、前首相を担ぎ出そうという「小泉チルドレン」たちの動きである。すぐさま署名活動を始めた彼らは、ほとんどアイドルの追っかけ同然に映った。「チルドレン」だから当然の行動なのか。しかし childlike と childish というふたつの形容詞では、後者を使うべきだとしか思えない。

一部の野党政治家の反応も首を傾げるものだった。ちょっと前まで「即刻辞めるべきだ」と言っていたのに、実際に辞められると「無責任極まりない」という。見方によってはこれも無責任な発言だ(一部、というのは、民主党の党首がずいぶんと慎重なコメントをしていたからだ。彼をどう評価するかは別として、長年の経験とカンから、ここは大人の態度を示したほうが得策だと感じたのではないか)。

ところでネットなどで、一国の首相でありながら「安部」「阿部」という誤記が多いのが気になっていた。こんな点にも存在の軽さがあられていた、というのは言いすぎだろうか。


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