「007 カジノ・ロワイヤル」 [007 ジェームズ・ボンド]
去年、この映画が公開される前、007を演じたダニエル・クレイグ Daniel Craig がインタビューの中で使った "110 percent" という表現について取り上げたことがあった。作品は未見だったが、少し前にDVDがレンタルビデオ店に入ってきたので、このほど借りて観た。
公開前に聞かれた、内容や主演のイメージチェンジをめぐる危惧や不評の声が、封切られたとたんに一転したのはよく憶えている。私の周囲では、ショーン・コネリーのボンド以外考えられないというオールドファンも、ロジャー・ムーア以降のマンガ的路線を好む人も、揃って評価していたので、よほどよくできた作品なのだろうと想像していた。
実際に観たら、なるほど面白く、路線変更は成功したと思った。double-o status を得たボンドの初仕事を、過去のイメージに縛られず、お遊び的要素を排して描いている。主役を別の名前に入れ替えて単発の作品にしても十分ヒットするだろう、と思わせるほどだ。
お決まりのカーチェイスの代わりにボンド自身が走る。そして、銃やハイテク小道具で敵を「倒す」のではなく、ボンドが素手で格闘して「斃す」。時代設定は現代、つまり冷戦後どころか911テロ事件の後であり、携帯やパソコンを駆使しているので、昔風の cloak-and-dagger 的な雰囲気は薄いものの、シリーズのこれまでの作品と比べれば、ずっと暴力的であり、汚い。結末へ向かう展開も、かなりシリアスである。
ダニエル・クレイグも、そうした作風にあっていた。まだ年齢が若いボンドとしてはちょっと老け顔と感じるが、甘さのない冷徹な風貌と筋骨たくましさを持ちながら、ただ強い一方ではなく、失敗や弱さのあるボンドをよく表現していたと思う。
ちょっと不満だったのは、上司のMをこれまでと同じ俳優が演じていたことだ。契約上の理由なのだろうか、彼女のMにそれほど不満があるわけではないのだが、どうせならやはり新顔にしてほしかった。また、よく練られたストーリーだったが、ちょっと長い。もう少し短くしてもよさそうだ。
それから、この作品のひとつの山場はボンドと悪役が対戦するポーカーだが、私はルールを知らないのでスリルを味わうことができなかった。カードゲームといえば、むかし海外出張した時に、仕事のつき合いでブラックジャックをカジノでやって小金を失ったことがあるのが、今となっては懐かしい思い出だ。
ネタばれになるが、この作品のラストシーンは、悪役のひとりが、自分を撃った見えない相手に対して "Who is this?" と問いかけると、姿を現した007が "The name is Bond. James Bond." という例のセリフを答えて、かのテーマ音楽が初めて流れる、というものだ。エンドタイトルの最後には、お決まりの"James Bond will return." の字幕も出てくる。そうなるとやはり気になるのが次回作である。
やや唐突なこの終わり方は、この続きが次回作になる、ということだろうか。またこのラストシーンは、ボンドが秘密諜報員として完成され、その自覚を持った、ということを象徴しているのだろうが、今回と同じようなトーンで作られるのか、それだと二番煎じになりかねないし、しかしもっと娯楽的要素を取り入れると、元の路線に逆戻りしてしまいそうだ。そこらへんの折り合いをどうつけるのか、興味がわく。
関連記事:
・100パーセントでは不十分 (110 percent)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2006-08-12
公開前に聞かれた、内容や主演のイメージチェンジをめぐる危惧や不評の声が、封切られたとたんに一転したのはよく憶えている。私の周囲では、ショーン・コネリーのボンド以外考えられないというオールドファンも、ロジャー・ムーア以降のマンガ的路線を好む人も、揃って評価していたので、よほどよくできた作品なのだろうと想像していた。
実際に観たら、なるほど面白く、路線変更は成功したと思った。double-o status を得たボンドの初仕事を、過去のイメージに縛られず、お遊び的要素を排して描いている。主役を別の名前に入れ替えて単発の作品にしても十分ヒットするだろう、と思わせるほどだ。
お決まりのカーチェイスの代わりにボンド自身が走る。そして、銃やハイテク小道具で敵を「倒す」のではなく、ボンドが素手で格闘して「斃す」。時代設定は現代、つまり冷戦後どころか911テロ事件の後であり、携帯やパソコンを駆使しているので、昔風の cloak-and-dagger 的な雰囲気は薄いものの、シリーズのこれまでの作品と比べれば、ずっと暴力的であり、汚い。結末へ向かう展開も、かなりシリアスである。
ダニエル・クレイグも、そうした作風にあっていた。まだ年齢が若いボンドとしてはちょっと老け顔と感じるが、甘さのない冷徹な風貌と筋骨たくましさを持ちながら、ただ強い一方ではなく、失敗や弱さのあるボンドをよく表現していたと思う。
ちょっと不満だったのは、上司のMをこれまでと同じ俳優が演じていたことだ。契約上の理由なのだろうか、彼女のMにそれほど不満があるわけではないのだが、どうせならやはり新顔にしてほしかった。また、よく練られたストーリーだったが、ちょっと長い。もう少し短くしてもよさそうだ。
それから、この作品のひとつの山場はボンドと悪役が対戦するポーカーだが、私はルールを知らないのでスリルを味わうことができなかった。カードゲームといえば、むかし海外出張した時に、仕事のつき合いでブラックジャックをカジノでやって小金を失ったことがあるのが、今となっては懐かしい思い出だ。
ネタばれになるが、この作品のラストシーンは、悪役のひとりが、自分を撃った見えない相手に対して "Who is this?" と問いかけると、姿を現した007が "The name is Bond. James Bond." という例のセリフを答えて、かのテーマ音楽が初めて流れる、というものだ。エンドタイトルの最後には、お決まりの"James Bond will return." の字幕も出てくる。そうなるとやはり気になるのが次回作である。
やや唐突なこの終わり方は、この続きが次回作になる、ということだろうか。またこのラストシーンは、ボンドが秘密諜報員として完成され、その自覚を持った、ということを象徴しているのだろうが、今回と同じようなトーンで作られるのか、それだと二番煎じになりかねないし、しかしもっと娯楽的要素を取り入れると、元の路線に逆戻りしてしまいそうだ。そこらへんの折り合いをどうつけるのか、興味がわく。
関連記事:
・100パーセントでは不十分 (110 percent)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2006-08-12
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ダニエル・クレイグが原作者のフレミングのイメージに最も近いと言われているそうです。今後が楽しみですね。
by ダニエラ (2007-09-25 11:46)
ダニエラ さん、コメントどうもありがとうございました。フレミングは最後の方の小説では映画のショーン・コネリーのイメージに影響されてしまったそうですが、ダニエル・クレイグにはぜひ新しいボンド像をつくりだしてもらいたいものですね。
by 子守男 (2007-09-25 19:12)