Gravity (Tess Gerritsen) [読書と英語]
宇宙と地上を舞台に、いわゆる「バイオハザード」を扱ったサスペンスである。アマゾンの読者評を見ると、「アポロ13」や「エイリアン」、また「アウトブレイク」や「ER」の要素をあわせたようなもの、とあり、何となく内容を想像していただけるだろうか。私はマイケル・クライトンの初期の作品「アンドロメダ病原体」も連想した。以下、多少のネタばれがある。
国際宇宙ステーションで、乗組員が謎の死を遂げる。関係者がバイオハザードだと気づいた時には、ステーションから帰還したスペースシャトルによって病原体が地球にもたらされていた。はたして病原体を封じ込める戦いに勝つことはできるのか。そして、地球への帰還が許されない宇宙ステーションの乗組員たちの運命やいかに。
…といったストーリーだが、舞台の構図や対比がはっきりとしていて、わかりやすい。片や宇宙ステーションの閉ざされた空間、乗組員は逃げ場がない。片や開かれた地上で、不特定多数が被害にあう危機に直面している。そして中心となる登場人物は離婚を決めたばかりの夫婦で、夫が地上に、妻はステーションにいるという設定だ。
こうした要素を絡み合わせながら、舞台を交互に切り替えていけば、読者を引っ張っていけるという寸法だ。みえみえの手法ではあるが、それでも息もつかせぬ展開がうまく、次はどうなるのかとページを繰ることになる。
英語の面では、航空宇宙用語がぞろぞろ出てくるのがちょっと手ごわいかもしれない。小説なのに、巻末に説明をつけた単語リストまでついているほどだ。私は以前、この分野でよく見聞きする単語を2、3回にわたって書いたことがあるが、そこで取り上げた「動詞でない go」も出てきた。また医学用語も多く、まじめに理解しようとすると辞書が必要になってくる。
しかし、ちょっと乱暴だが、こうした単語は読み飛ばしても筋の理解にそれほど差し支えることはなさそうだ。ひとつひとつの意味がわからないと気がすまない人だとうんざりしてくるかもしれないが、いずれにせよ楽しめる小説である。
ひとつ残念だったのは、日本人の宇宙飛行士が出てくるのだが、これがなんとも情けない人物なのだ。英語があまりうまくなく、他のクルーとの意思疎通に苦労しているという設定である。日本人というと、こういうイメージが(少なくとも作者には)あるのだろうか。スペースシャトルに乗った本物の日本人宇宙飛行士たちは、魅力あふれる人たちばかりと思われるだけに、何とも悲しくなってしまう。
ところで「宇宙飛行士」 astronaut というが、スペースシャトルでは担務・専門によって具体的な呼び名もある。
これまでの日本人飛行士はみな、宇宙船の操縦そのものではなく、船内で行う実験を担当する Payload Specialist (搭乗科学技術者、PS) か、船外活動 (Extravehicular Activity, EVA つまり宇宙遊泳)をしたりパイロットを補佐したりする Mission Specialist (搭乗運用技術者、MS) のいずれかである(両方の資格がある人もいる)。
こんなことを書くのも、スペースシャトルに日本人が乗り込むようになった当時、「パイロット」と書いている文章をいくつか見かけたからだが、これは正しくないので注意が必要だ。
国際宇宙ステーションで、乗組員が謎の死を遂げる。関係者がバイオハザードだと気づいた時には、ステーションから帰還したスペースシャトルによって病原体が地球にもたらされていた。はたして病原体を封じ込める戦いに勝つことはできるのか。そして、地球への帰還が許されない宇宙ステーションの乗組員たちの運命やいかに。
…といったストーリーだが、舞台の構図や対比がはっきりとしていて、わかりやすい。片や宇宙ステーションの閉ざされた空間、乗組員は逃げ場がない。片や開かれた地上で、不特定多数が被害にあう危機に直面している。そして中心となる登場人物は離婚を決めたばかりの夫婦で、夫が地上に、妻はステーションにいるという設定だ。
こうした要素を絡み合わせながら、舞台を交互に切り替えていけば、読者を引っ張っていけるという寸法だ。みえみえの手法ではあるが、それでも息もつかせぬ展開がうまく、次はどうなるのかとページを繰ることになる。
英語の面では、航空宇宙用語がぞろぞろ出てくるのがちょっと手ごわいかもしれない。小説なのに、巻末に説明をつけた単語リストまでついているほどだ。私は以前、この分野でよく見聞きする単語を2、3回にわたって書いたことがあるが、そこで取り上げた「動詞でない go」も出てきた。また医学用語も多く、まじめに理解しようとすると辞書が必要になってくる。
しかし、ちょっと乱暴だが、こうした単語は読み飛ばしても筋の理解にそれほど差し支えることはなさそうだ。ひとつひとつの意味がわからないと気がすまない人だとうんざりしてくるかもしれないが、いずれにせよ楽しめる小説である。
ひとつ残念だったのは、日本人の宇宙飛行士が出てくるのだが、これがなんとも情けない人物なのだ。英語があまりうまくなく、他のクルーとの意思疎通に苦労しているという設定である。日本人というと、こういうイメージが(少なくとも作者には)あるのだろうか。スペースシャトルに乗った本物の日本人宇宙飛行士たちは、魅力あふれる人たちばかりと思われるだけに、何とも悲しくなってしまう。
ところで「宇宙飛行士」 astronaut というが、スペースシャトルでは担務・専門によって具体的な呼び名もある。
これまでの日本人飛行士はみな、宇宙船の操縦そのものではなく、船内で行う実験を担当する Payload Specialist (搭乗科学技術者、PS) か、船外活動 (Extravehicular Activity, EVA つまり宇宙遊泳)をしたりパイロットを補佐したりする Mission Specialist (搭乗運用技術者、MS) のいずれかである(両方の資格がある人もいる)。
こんなことを書くのも、スペースシャトルに日本人が乗り込むようになった当時、「パイロット」と書いている文章をいくつか見かけたからだが、これは正しくないので注意が必要だ。
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