「生の喜び・死の芸術」 [ジャズ・クラシック]
- アーティスト: ヘンゲルブロック(トーマス),バッハ,J.L.バッハ,パーセル,バルタザール=ノイマン・アンサンブル
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: CD
バッハとパーセルの声楽作品を収めたCDが新譜として店頭に並んでいた。収録曲の中にはバッハのカンタータ131番もある。指揮者がヘンゲルブロックと知り、期待とともにすぐに購入した。
バッハが書いた初期のカンタータといえば、私にとって106番、131番、150番がひとつの「3点セット」になっている。別にCDが決まってこうしたくくりでリリースされているということではないが、私の頭の中には何となくこうしたセットがある。
この中では106番がダントツに有名で、バッハの全カンタータの中でも屈指の名作とされているはずだ。バッハがまだ若い時の作品とは思えない深さを感じる。
ほかの2曲のうち131番は、オーボエと声とのからみが美しい。しかしこれまでなぜか、もう一歩つっこんで味わえないという気持ちをこの曲に抱いていた。そこに現れたのがヘンゲルブロックの新譜である。
さっそく耳を傾けると、期待は裏切られなかった。特に合唱の部分は、ゆったりと、じっくりと聞かせてくれる。それでいて、もたれる感じがしない。
私はヘンゲルブロックの録音をたくさん聞いてきたわけではないが、バッハについては「ミサ曲ロ短調」をじっくりと聞かせてくれたのが印象に残っていた。ピリオド演奏といえば、ひと昔まえの、テンポは速めでさわやかというイメージがまだ強いのではないかと思うが、彼の演奏に単純なあっさり感はなく、といって大昔の厚化粧的バロック演奏でもなかった。
131番のピリオド録音をすべて知っているわけではもちろんないが、これまで聞いたものには、もうちょっとじっくり聞かせてくれたら、という思いを持っていた。「重くはならないじっくりさ」でこの曲を聞かせてくれるのでは、というのが、このCDを見つけた時に抱いた期待だった。うれしいことに、その通りだったわけである。
バッハのカンタータは、リフキンが提唱した1パート1人方式(OVPP)での録音が最近増えている。その歴史的妥当性は私にはわからないが、面白いと思って聴いている。106番など、合唱では味わえない美しさがある。
その一方で、1パート複数の従来型によるヘンゲルブロックの131番を今回聴いて、これはこれでやはりいいな、と感じた。「深き淵よりわれ汝に呼ばわる、主よ」という歌詞を複数の声が歌うと(原題は ich なので単数なのだが)、その内容がより強まるように感じられる。私はキリスト教徒でないので、あくまで音楽の効果についての印象であるが。
このCDは Lebenslust and Sterbekunst (The Joy of Life - The Art of Death) というタイトルで、バッハとパーセルの渋い曲が集められている。残念なのは、ヘンゲルブロック自身によるこのアルバムのテーマや選曲の意図が、ブックレットには書かれていないことだ。曲目解説と、生と死についてのエッセイが載っているのだが、どちらもこの指揮者が書いたものではない。ここはぜひ(仮に彼が意図してこの選曲を企画したのでなかったとしても)何か書いてほしかった。
ついでだが、このCDはブックレットの写真もすばらしい。これも残念なのは通常のプラケースになっていることだ。どうせなら写真をよく大きく見せられるデジパック仕様だったらよかったのだが。
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おはようございます。
この度はTBをありがとうございました。
このCDにつきましては、まだまだ書き足りないことがあって、未だに未完成のままです。言葉の不十分な記事に目を止めてくださいましたこと、嬉しく思うと同時に恐縮です。
子守男さんのブログを拝見し、内容の濃い記事に共感し、また啓発される思いでした。
また改めましてゆっくりお山させていただきますね。
まずはお礼まで。
by aosta (2009-02-02 05:32)
コメントありがとうございました。aosta さんのブログ、興味深く読ませていただきました。パーセルについてもお書きになっていて、こちらこそ啓発される思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by 子守男 (2009-02-03 12:22)