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副長と first officer [ニュースと英語]

私が英語嫌いにならずにすんだ理由のひとつは、高校生の頃、気に入った映画やテレビドラマの小説版ペーパーバックを、読むとまではいかないが眺めていたことだ(ビデオはまだ普及していなかった)。いまBSで再放送されている「スター・トレック」もそのひとつだが、面白いと思ったのが、宇宙船の「副長」を原語で first officer ということだった。

英語では日本語と違い、艦長に仕える士官の筆頭というようにとらえるのだろうか、と考えた。階級としては艦長が大佐 captain、副長は中佐 commander で、ひとつ違うだけなのだが。

こんなことを思い出したのは、いま読んでいる本に、次のようなくだりが出てきたからだ。

戦場における指揮官は孤独そのものである。彼は刻一刻と変化する戦況を冷静に見通し、自らの責任において即時に決断を、時として非情な決断をすらくださねばならない。そのためどこの国の海軍でも、小艦にいたるまで艦長は特別視され、居住・食事・日常生活の万般にわたって副長以下の乗組員から隔離されるよう配慮されている。
(池田清「海軍と日本」中公新書)

英和辞典で first officer を見ると first mate を見よとあり、

- [海事]一等航海士<船長の次、副船長格>
- [海]一等航海士 (=first officer, chief officer) ((商船で船長の次位))

商船について使うと書かれているが、軍艦にも使われた実例を他にも見たことがある。

余談だが、Star Trek では当初、艦長が副長を "Number One" と呼ぶという設定だった。first officer に由来するニックネームだろうが、このテレビドラマだけの話かと思ったら、この表現についてネットでこんな説明が見つかった。

- senior naval officer: the first officer or first mate on a ship, next in rank after the captain ( informal )

- Number One is the naval term for the First Officer on board a ship, second-in-command to the captain.

こうしたことを知らないと、なぜ艦長がナンバー2の地位にある副長をこう呼ぶのかわからないだろう。ちなみに「スター・トレック」では "Number One" のあだ名はボツになり、のちに設定を変えて制作された Star Trek the Next Generation という新シリーズの中で使われた。

さきに commander は中佐と書いたが、これは海軍の場合で、陸軍と空軍の中佐はまた違った言い方をする。この点では日本語の方がわかりやすい。また commander は役職名として「司令官」になりうるので面倒だ。

前回、イージス艦と漁船の衝突事故についてとりあげたが、ハワイ沖で「えひめ丸」がアメリカの原潜「グリーンビル」に衝突されるいまたしい事件が起きたのはちょうど7年前のことだった。USS Greenville の艦長はワドル中佐という人物だったが、次の記事では、comdr (=commander) が階級、captain が職名として同一人物に使われていてややこしい。

Comdr Scott D Waddle, captain of American nuclear submarine Greeneville that sank Japanese fishing vessel with loss of nine lives, will resign from Navy and will avoid any further punishment.

混乱を避けるためには、commanding officer というような言い方をすればいいのだろう。

もうひとつ余談だが、「えひめ丸」は上記の英文にもあるように、漁船のごとく海外のメディアで扱われ、実習船とは紹介されなかったといわれる。当時、日本の国会で、なぜこの点をもっと対外的にアピールしないのかと野党が追及していた記憶がある。

海軍では大佐の captain は、空軍では大尉を意味する。広島に原爆を落としたB-29「エノラ・ゲイ」 Enola Gay の機長はティベッツという名前で、空軍大佐だったので Colonel Paul Tibbets である。ちなみに英文を読むと the pilot of Enola Gay となっているが、「パイロット」だと小型機のようで、やはり「機長」にしないと感じが出ない。日本語も面倒といえば面倒だ。ちなみに航空機の機長は captain と呼ばれ、"This is your captain speaking." という機内アナウンスでおなじみだ。

最後の余談だが、「スター・トレック」は現在映画としてリメイク retcon が進められていることは以前触れたが、本国公開が今年12月から来年5月に延期されたとのこと。ちょっと残念である。

海軍と日本 (中公新書 (632))

海軍と日本 (中公新書 (632))

  • 作者: 池田 清
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1981/01
  • メディア: 新書

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コメント 4

日向清人

こんにちは。アクションものの映画などを見ていると、艦長の次に偉い副長はXOつまりexecutive officer ですから、first officer はやはり商船の場合について言うのでしょうか。ちなみに、航空業界での first officer は副操縦士のことのようですね。
by 日向清人 (2008-02-27 11:16) 

子守男

日向清人さん、コメントありがとうございました。私は first officer を複数の戦記ものノンフィクションで目にして、そのたびに「Star Trek と同じだ」と思った記憶があるので、軍艦でも使われることはあると思っています。ただ私の読んだのは第2次大戦や冷戦ものの本だったので、現在では使われていないのかもしれませんね。
by 子守男 (2008-02-27 22:39) 

Mr.Kato

 詳しい説明で大変参考になりました。有難うございます。スラング程ではないにせよ、軍隊用語等は辞書を使ってもわかららない事が多いですからね。歴史と伝統に由来している事が多いため、一つの言葉を調べるため歴史を調べなおすなんて、私にはとても無理ですから・・・。
by Mr.Kato (2008-05-10 13:43) 

子守男

Mr.Kato さん、どうもありがとうございます。参考になりましたらうれしいです。
by 子守男 (2008-05-10 22:59) 

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