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war to end all wars 「あらゆる戦争を終わらせる戦争」って何だ? [注意したい単語・意外な意味]

アメリカ大統領選挙では、クリントン候補が挽回したとたん「オバマ候補の人気に翳り」といった記事が続出したのには面食らったが、それはともかく、先日の TIME 誌に "The Primary to End All Primaries?" というタイトルの関連記事があった。この X to end all Xs は一種のイディオムであり、直訳するとまずい場合がある。

ある英和辞典は end の語義のひとつとして取り上げ、「~を(質・程度などで)上回る、越す」と説明した上で用例をあげている。しかし、学習者にとっては不親切ではないだろうか。やはり次にあげる辞書の記述のように、成句欄で独立した形で説明してもらいたいと思う。

- the [a, an] thing to end all things [them all]
<口>きわめつけの...
a novel to end all novels 小説の中の小説

- a -- to end all --s
used to emphasize how impressive or successful something is of its kind
She is going to throw a party to end all parties.

- a/the sth to end all sths
used to emphasize how large, important, exciting, etc. you think sth is:
The movie has a car chase to end all car chases.

さらに、war to end all wars という言い回しがある。ある英英辞典は次のように説明している。

a war, especially the First World War, regarded as making subsequent wars unnecessary

定冠詞をつけると明確に World War I を指すようだ。第二次世界大戦が始まるまでの間に使われ始めたのだろう。BBC のサイトに "The war to end all wars" という第一次大戦についての英文があり、つぎのようなくだりがある。

80 years later it is perhaps best remembered for the staggering loss of human life. In the decade following the Great War many had the firm conviction that it should be "the war to end all wars".
( http://news.bbc.co.uk/1/hi/special_report/1998/10/98/world_war_i/198172.stm )

さらなる惨禍が人類を襲うことを当時の人は想像したくなかったに違いないが、残念なことに「最後の大戦争」にはならなかったわけである。

ちなみにある英和辞典は、この表現について「すべての戦争を終わらせるための戦争<第一次世界大戦>」と書いている。直訳であるうえ、「終わらせる」目的で戦争を起こすようにも受け取れる。文脈にもよるだろうが、適切とはいえないのではないだろうか。

以下は余談である。私はある意味、英語を学び始める前から、この X to end all Xs という表現に親しんできた。

はるか昔の小学生の時、フレドリック・ブラウンという作家が書いた「火星人ゴーホーム」というユーモアSF小説を翻訳(早川書房)で読んだ。風変わりな火星人に侵略された地球を描いた作品だが、そこに、

これは火星人を退散せしめるのみならず、あらゆるジュージューに終止符を打つ、極めつけのジュージューになるのだ。

というくだりがあった(「ジュージュー」 juju とは、西アフリカで行われる魔よけのこと)。面白い言い方だなと思った。

それから十数年たち、社会人となった私は、何かでこの英語表現を知ったが、子供の時に読んだあのくだりを思い起こし、あっと思った。原文も、この表現が使われているに違いないと考えた。

さらにその十数年後(数年前のことになる)、本国でも絶版となっていた Fredric Brown のSF作品が、長編集と短編集にわけて出版されたのをオンライン書店で知り、すぐに注文した。アメリカから分厚い本が届いてまず読んだのが "Martians, Go Home" であり、あの一節の原文に初めて触れた。

It was to be a juju to end all jujus, as well as all Martians.

想像していた通り、この表現が使われていた。さらにこれにひっかける形で、end を「火星人をやっつける」という意味で使っているようでもある。だから翻訳者も「極めつけの」だけでなく、「あらゆる~に終止符を打つ」と、意図的に直訳して重ねたのではないかと思った。

「火星人ゴーホーム」と英語については、もうひとつ書きたいことを思いついた。余談が長くなったので、次回取りあげることにしたい。

"Martians, Go Home" は長編だが、ブラウンの作品で読みやすいのは短編の方だろう。星新一のショートショートのような、意外な結末を持つ作品が目白押しである。英語もわかりやすい。


Martians and Madness (Nesfa's Choice Series)

Martians and Madness (Nesfa's Choice Series)

  • 作者: Fredric Brown
  • 出版社/メーカー: Nesfa Pr
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: ハードカバー


火星人ゴーホーム (ハヤカワ文庫 SF 213)

火星人ゴーホーム (ハヤカワ文庫 SF 213)

  • 作者: フレドリック・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/11
  • メディア: 文庫



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コメント 2

たんご屋

わたしもフレドリックブラウンが好きなので、英語の勉強にもなると思って短編集を買いました。たぶん子守男さんのおっしゃっている本だと思います。でも、わたしにはむずかしすぎたみたいで途中で挫折したままになっています。再挑戦してみようかな。
by たんご屋 (2008-03-13 11:00) 

子守男

たんご屋さん、コメントありがとうございます。ブラウンの作品ですぐに私の頭に浮かぶ印象的なものといえば、わずか1ページの"The End"、ほどよい長さの短編"The Star Mouse"、スター・トレックのエピソードの原作として使われた中編"Arena" などがあります。本国でも忘れられた存在になっているとしたらちょっと悲しいですね。
by 子守男 (2008-03-14 01:20) 

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