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「リーダーズ・プラス」は「新解さん」か? [辞書・学習参考書]

smooth operator という表現のからみで前回触れたシャーデー Sade という歌手に関連して、研究社の「リーダーズ・プラス」について書いてみたい。この辞書、「リーダーズ英和辞典」を補うために編まれたものと理解しているが、分野によっては、ときに本編も顔負けの充実した説明が出ていて驚くことがある。

Sade を引用してみよう。

シャーデー(1958- ) ナイジェリア生まれの英国の女性ポップシンガー;母は英国人、父はナイジェリア人で本名Helen Folasade Adu;抜群のプロポーションを誇るエキゾチックな風貌の美人歌手で、ジャズ風のクールなヴォーカルとジャズファンクサウンドで人気が高い;英国の黒人シンガーとしては最も成功したシンガー;バックバンドもSadeとよばれる;シングルヒット曲 'Smooth Operator' (1984);アルバム Diamond Life (1984), Love Deluxe (1992)

個人が編んだ辞典や、音楽辞典ならともかく、一般の英和辞典にはないような長さと詳しさで、書き写すのが疲れるほどである。のみならず、やや主観的ともいえる記述が面白い。

一方で、一般的な知名度ではシャーデーと比較にならないほど高いはずの the Beatles は本編の「リーダーズ」の方に載っているが、記述はいたってシンプルである。

[the~] ビートルズ 英国のロックグループ(1962-70);メンバーはJohn Lennon, Paul McCartney, George Harrison, Ringo Starrの4人で全員Liverpool出身

こうした”逆転現象”は、他にも見られる。例えば、映画で「アレン」といえば、ウディ・アレンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。その彼も、「リーダーズ」では Allen の項の中で、「Woody Allen (1935- ) 米国の劇作家・演出家・俳優・映画監督;本名Allen Stewart Konigsberg」と短く扱われているにすぎない。

映画制作者の「アレン」としては、もうひとり、アーウィン・アレン Irwin Allen というプロデューサー・監督がいる。SFやパニックもののテレビドラマや映画をつくった人で、「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」などで知られる。Woody Allen ほど知名度が高くないということか、「リーダーズ・プラス」で扱われているが、記述の量はやはりずっと多く、充実している。

2つの辞書が共通して取り上げている言葉もある。これまで私も何回か取り上げている Star Trek というテレビドラマ・映画は、「リーダーズ」だけでなく「リーダーズ・プラス」にも載っている。

後者の方がずっと詳しいのは予想した通りだが、そもそもなぜ「リーダーズ」にある項目を「プラス」で再度わざわざ取り上げたのだろうか。その分のスペースを別の項目にあてることもできたはずなのに、と編集陣の意図を想像するのも愉しい。

一般の辞書で個性的な記述で知られるものとしては、三省堂の「新明解国語辞典」があげられるだろう。「新解さん」という愛称をつけ、その面白さについて書いた本すらあるほどだ。この「リーダーズ・プラス」も、「新解さん」的な要素のある、「読める辞書」なのだろうか。

私が使っている「プラス」は電子辞書に収められたもので一覧性に乏しく、そのへんのところがわかりにくい。ここはぜひ、冊子版を手に取り、拾い読みをして調べてみたいところだ。ところが残念なことに、この辞書が面白そうだと気づいてこのかた、店頭で目にしたことがない。古本屋に行った時にも気をつけているのだが、まだお目にかかっていない。

すでに電子辞書で持っているうえ高価なので、確かめずに注文して取り寄せるほどの勇気も懐具合も持ち合わせていない。分厚い本が家の中にさらに増えたら、家人がどんな顔をするか想像すると恐ろしい。見つけて興味をひかれたら、それはそれで悩ましいことだろう。

リーダーズ・プラス

リーダーズ・プラス

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 研究社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

タグ:音楽
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コメント 6

6

「リーダーズ・プラス」の記述は確かに小百科並みの情報が得られたりする一方で、意外にムラがあったりして、その点でも興味深いですね。

今度ゆっくりとこちらのブログ拝見させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
by 6 (2009-03-31 19:19) 

子守男

私が初めて観たアーウィン・アレンの作品は、6さんがブログでお書きになっている「シービュー号」でした。ちょっとマイナーな作品かな、と思っていたので上記エントリでは書かなかったのですが、「リーダーズ・プラス」に絡めた6さんの記事を見つけて、興味深く読ませていただいた次第です。
こちらも6さんのブログを楽しみに拝見させていただきます。よろしくお願いします。
by 子守男 (2009-04-01 02:09) 

えいじゅなす

「リーダーズ・プラス」は,人名や地名にくわしいですが,訳に主観が入っていたり,どういった基準でそれらの語が採択されているのかわからないところがありますね.

地名についても,同じ地名の場所が何カ所かあるとき,かなりマイナーなところを先に載せたりしているところがあります.
by えいじゅなす (2010-05-06 05:37) 

子守男

私は辞書も多少の個性があっていいのではと思っているので、奇異に感じない範囲の主観ならいいかなと思ったりもします。しかし感じ方は使用者によって違うでしょうから一概にもいえないことで、難しいものですね。
by 子守男 (2010-05-12 23:44) 

satyrshedim

リーダーズ・プラスの情報が得られて多謝です。
私も 毎夜というぐらい 近所の BOOKOFF に 顔を出し 辞書の棚を見ていますが 流石に リーダーズ・プラスには お目にかかりません まあ考えてみれば こういう辞書を 手放す人は はなから 購入しませんよね 可能性があるとすれば 故買品かなあ

最近購入した オオモノ?は ランダムハウス英和大辞典のパーソナル版というのを 2500円で手にしました。
by satyrshedim (2016-09-12 23:16) 

tempus fugit

ランダムハウス第2版はブックオフで見たことがありますが、リーダーズ・プラスは私もないですね。数か月前には、最初に使った英英辞典(ホーンビーのISED)を見つけ、迷った末に買うのを見送りましたが、使うというより思い出の本として買っておけばよかったかなと公開しています。

大判の辞書は私も若いころ憧れたものでしたが(当時の研究社大英和や旧版の英和活用大辞典など)、そうした辞書を使ってみてもいいかなと思うトシになった時はすでに電子辞書の利用者となっていました。
by tempus fugit (2016-09-13 23:18) 

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