「チック・コリア&ゲイリー・バートン・イン・コンサート」 [音楽と英語]
このジャズの傑作を初めて聴いたのは、もう二十数年前のことになる。演奏はもちろんだが、LPのジャケットも素晴らしかった。CDになってすぐに買い求めたが、少しでも楽しめる紙ジャケット化されないものかとずっと思ってきたので、見つけた時は小躍りした。
最初に聞いたのは、確かレンタルしたLPだった。すでにLPがCDに駆逐されつつあったころだ。ピアノとビブラフォンという意表をつく組み合わせによるライブ演奏だが、大げさにいえば超絶的に美しかった。硬質な音の中にもある種の暖かさが感じられ、ダビングしたテープを何度も聞いた。
そしてジャケットの写真である。ライブが行われたチューリヒの街並みだろうか、暮れなずむ夕空を眺めていると、その微妙なグラデーションに吸い込まれていくような錯覚を覚えた。
プラスチックケースよりはましな今回の紙ジャケットとはいえ、やはりLPに敵うはずはない。それでも「紙ジャケ」を求めるのは、実のところ、パッケージそのものよりも、過去への郷愁にあるのだろう。LPの代替物というより、過去の記憶につながる触媒である。それにいくばくかの金額を投じるのは考えてみればおかしいことだが、理屈で割り切れないのが人間である。
残念なのは、最初にCD化された際にLPに収録されていた2曲がカットされたのだが、今回も復活されなかったことだ。紙ジャケットはLPの装丁をそのまま模しているため、2曲ともタイトルだけ残っているのが虚しい。何回も聞いたはずのテープはすでになく、それとともに記憶も薄れ、ついにはどんな曲だったか覚えていないのが悲しい。いつの日か、完全CD化して欲しいものだ。
Chick Corea と Gary Burton は、このほかにもデュエット演奏のアルバムを制作している。そのひとつ "Crystal Silence" も傑作だが、この "In Concert" の方が聞き応えがあると感じるのは、ライブでの完成度の高いインタープレイが生み出す緊張感と臨場感によるものか。その点では、楽器編成は違うが、以前取り上げたビル・エヴァンス Bill Evans の "Waltz for Debby" と共通したものがあるように思う。
ところで、「ビブラフォン」(あるいはヴァイブラフォン、ヴァイブ)は鉄琴の一種で、これをを叩いて音を出す器具は「ばち」ではなく「マレット」mallet と呼ばれる。太鼓を叩くときの「ばち」は stick である。ちなみに一般的な鉄琴は glockenspiel などという。
ついでに、「木琴」はシロフォン(ザイロフォン) xylophone と呼ばれる。xyl- や xylo- は「木の」という意味で、キシロース(木糖) xylose からつくられるのが「キシリトール」である。
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