緒方貞子氏のことなど [ニュースと英語]
いわゆる「国際人」をめぐっては、定義を含めていろいろな意見があるだろうが、私がまず頭に浮かべるのは緒方貞子氏である。日本のJICAが組織統合で世界最大の援助機関となったのを受けて、理事長をつとめる緒方氏を取り上げた「ワシントン・ポスト」の記事が目にとまった。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/29/AR2008092903203.html?sub=AR
この中で緒方氏は、援助の問題にとどまらず、少子高齢化など日本の現状に対する政治家の姿勢に苦言を呈している。例えば、
同じような批判を評論家が偉そうに口にしたならば、天の邪鬼な私は何となく反発したくなるだろうが、緒方氏の意見だと重みを感じ、耳を傾けたくなる。国連難民機関のトップとして、デスクに座るのではなく現場を駆け回っていた緒方氏の姿にはやはり強い印象を持っていた。
緒方氏は名家に生まれて海外に育ち、当時としては例外的であろう高水準の教育を受けた人物であるが、ただそれだけで危険な紛争地に何度も足を運び、各国の政治家と渡り合うことができるわけでもなかろう。noblesse oblige (benevolent, honorable behavior considered to be the responsibility of persons of high birth or rank)というフランス語由来の単語があるが、はたして緒方氏に使うのに適切といえるだろうかとも思う。今後も永く精力的に活動を続けていただきたいものである。
ところで会社勤めとしての余談だが、「長」がつく人がしばしば現場に出てくるのはちょっと困りものだ、というのが本音だ。しかし、そういう人の「鶴の一声」で、皆が(時に死ぬ思いで)努力した結果、なかなか進まなかったプロジェクトが予想もできなかったような前進を遂げることがあるのも事実である。人間なり組織なりは(例外もあろうが)やはり圧力や負荷をかけられないとなかなか動かないものなのではないだろうか。
私は国連について詳しいことは知らないが、その崇高な目的や理念の一方で、官僚主義の肥大と非効率な組織運営が慢性化しているのが現実だと聞く。緒方氏が現場主義だったのも、そうした実態を目の当たりにして、組織に風穴をあける狙いも持っていたのだろうか。
そうした国連の官僚に関連して、この記事でやはり面白いと思ったのは speaking at length while saying nothing という言い回しである。
長くなってきたので、これについては、次回書くことにしたい。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/29/AR2008092903203.html?sub=AR
この中で緒方氏は、援助の問題にとどまらず、少子高齢化など日本の現状に対する政治家の姿勢に苦言を呈している。例えば、
Yet Japanese leaders have done "nothing" to increase immigration, "nothing" to ease the strain on working mothers and "nothing" to change a work-obsessed culture that keeps many young couples from having children, she said.
"Everybody knew this was happening," she added. "Nothing was done. Do we have political leaders who are farsighted? No!"
同じような批判を評論家が偉そうに口にしたならば、天の邪鬼な私は何となく反発したくなるだろうが、緒方氏の意見だと重みを感じ、耳を傾けたくなる。国連難民機関のトップとして、デスクに座るのではなく現場を駆け回っていた緒方氏の姿にはやはり強い印象を持っていた。
緒方氏は名家に生まれて海外に育ち、当時としては例外的であろう高水準の教育を受けた人物であるが、ただそれだけで危険な紛争地に何度も足を運び、各国の政治家と渡り合うことができるわけでもなかろう。noblesse oblige (benevolent, honorable behavior considered to be the responsibility of persons of high birth or rank)というフランス語由来の単語があるが、はたして緒方氏に使うのに適切といえるだろうかとも思う。今後も永く精力的に活動を続けていただきたいものである。
ところで会社勤めとしての余談だが、「長」がつく人がしばしば現場に出てくるのはちょっと困りものだ、というのが本音だ。しかし、そういう人の「鶴の一声」で、皆が(時に死ぬ思いで)努力した結果、なかなか進まなかったプロジェクトが予想もできなかったような前進を遂げることがあるのも事実である。人間なり組織なりは(例外もあろうが)やはり圧力や負荷をかけられないとなかなか動かないものなのではないだろうか。
私は国連について詳しいことは知らないが、その崇高な目的や理念の一方で、官僚主義の肥大と非効率な組織運営が慢性化しているのが現実だと聞く。緒方氏が現場主義だったのも、そうした実態を目の当たりにして、組織に風穴をあける狙いも持っていたのだろうか。
そうした国連の官僚に関連して、この記事でやはり面白いと思ったのは speaking at length while saying nothing という言い回しである。
But unlike many high-powered U.N. officials, Ogata never mastered the art of speaking at length while saying nothing.
長くなってきたので、これについては、次回書くことにしたい。
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>やはり面白いと思ったのは speaking at length while saying nothing という言い回しである。
+竹下元首相で有名になった「言語明瞭、意味不明」ですね。ところで、楽しく拝見しています。
by snowbees (2008-10-09 17:40)
snowbees さん、励みになるコメントありがとうございました。事情で返礼が遅くなってどうもすみません。更新の頻度がしばらく落ちますが、今後ともよろしくお願いいたします。
by 子守男 (2008-10-12 10:23)
わたしにはむずかしすぎる内容も多いのですが、いつも楽しみに拝読しています。更新は少なくなっても、ぜひぜひ、続けてください。
by たんご屋 (2008-10-12 20:58)
たんご屋 さん、温かいお言葉どうもありがとうございました。業務の関係で会社にいなくてはいけない時間が長くなってしまいました。少なくとも年内はそんな状態が続きそうです。ブログ自体を休止するつもりはもちろんないのですが、マイペースで更新していこうと思います。たんご屋さんのブログはもちろん今後とも愛読させていただきます。
by 子守男 (2008-10-12 22:23)
{%拍手webry%}”国連について、その崇高な目的や理念の一方で、官僚主義の肥大と非効率な組織運営が慢性化しているのが現実だと聞く”
たまたま上記を拝見しました。 当方昨年までウイーンの国連工業開発機関に10年間奉職し、オゾン層保護のための技術移転業務に携わっておりました。 幸い満足な仕事ができましたが、上記も強く感じました。 主因は政治的な組織であることですが、今こちらで問題になっている天下りも目に余りました。
by タロッペいたばし (2008-11-19 14:00)
{%ペンwebry%}国連工業開発機関(ウイーン)に昨年まで10年間おりました。 在職中にノーベル平和賞が与えられもしましたが、まさしく官僚主義、非効率な組織運営があります。 国際的天下りが主因かとおもいます。
by タロッペいたばし (2008-11-21 10:59)
タロッペいたばし 様、コメントありがとうございました。官僚主義は残念ながら組織につきものということなのでしょうね。それでも、少しでも理想をめざす精神はもち続けてもらいたいものだ、と願わずにはいられません。
by 子守男 (2008-11-23 18:10)