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shining city on a hill [辞書に載っていない表現]

前回に続いて、オバマ氏についての記事からである。The Economist 誌を読んでいたら、shining city という言い回しが出てきた。すぐに、これは (shining) city on [upon] a hill という表現を下敷きにしているのではないかと思った。この表現、私が持っている辞書にはいずれも載っていないが、アメリカ関係の文章で時々お目にかかることがある。

Under George Bush America's international standing has sunk to awful lows. This week Americans voted in record-smashing numbers for many reasons, but one of them was an abhorrence of how their shining city's reputation has been tarnished. Their country will now be easier for its friends to like and harder for its foes to hate.
(http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=12562373)

この shining city を見て連想したのが、故レーガン大統領が離任演説で使い、よく引用されるようになった shining city on a hill だった。

この演説でレーガン大統領は、間もなく終える自分の任期を振り返ったあと、次のように述べる。

And that's about all I have to say tonight. Except for one thing. The past few days when I've been at that window upstairs, I've thought a bit of the "shining city upon a hill." The phrase comes from John Winthrop, who wrote it to describe the America he imagined.(中略)

And how stands the city on this winter night? More prosperous, more secure, and happier than it was eight years ago.

(http://www.reaganfoundation.org/reagan/speeches/farewell.asp)

ここにあるように、レーガン大統領は John Winthrop という人物が述べた言葉としている。さらに調べると、この人物は17世紀初めにイギリスからアメリカにやってきたピューリタンの指導者であった。Wikipedia に次のような記述がある。

Winthrop is most famous for his "City upon a Hill" sermon (as it is known popularly, its real title being A Model of Christian Charity), in which he declared that the Puritan colonists emigrating to the New World were part of a special pact with God to create a holy community. This speech is often seen as a forerunner to the concept of American exceptionalism.
(http://en.wikipedia.org/wiki/John_Winthrop)

そして、例えば以下のサイトを見ると、この表現が新約聖書マタイによる福音書の「山上の垂訓」の一節を下敷きにしていること、また、特別な存在・理想の国としてのアメリカを指すものとして、これまでも使われてきたものであることがわかる。

http://www.bartleby.com/73/1611.html

http://en.wikipedia.org/wiki/City_upon_a_Hill

http://www.sourcewatch.org/index.php?title=America_is_a_shining_city_upon_a_hill

個々の例について書くと長くなるので、マタイ伝の該当箇所を引用しよう。

"You are the light of the world. A city on a hill cannot be hidden."
(Matthew 5:14)

また今回のアメリカ大統領選挙では、共和党副大統領候補のペイリン氏も、レーガンを引用する形でこの表現を使っている。これについての次の記事は手厳しい。

http://www.ihatewhatyoujustsaid.com/2008/10/04/the-literary-offenses-of-sarah-palin/

さらに最近、私は日本語でも今回の表現にお目にかかった。新聞を眺めていたら、読書欄の書評にこんなくだりがあったのだ。インターネットでも読むことができる。

舞台は今回も著者の故郷ボストン。しかし、時代は第一次大戦終結前後の動乱期――アメリカ独立の誇り高きこの「丘の上の町」にもロシア革命の影響が及び、労働組合が次々と組織され、社会主義者、共産主義者、アナーキストが暗躍していた頃だ。
(http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20081117bk04.htm)

カギカッコで引用してあるということは、皆になじみがある事物だ、という考えが筆者にあるとも受け取れるが、ふつうの日本人の間にどれほど知れ渡っているものなのか、とも思う。

いずれにせよ、英語の表現は時おりお目にかかるものだし、歴史的背景もあるので、少なくとも英和辞書がもっと取り上げてもいいように思うが、どうもそうなっていないようなのがちょっと不思議である。

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R

先日、borrowed timeでコメントを送らせていただいた者です。私も手持ちの英和辞書で調べてみましたが、確かに乗せていませんね。すでにご覧になっているかもしれませんが、唯一、英辞郎on the WEBが以下のように取り上げていました。(あともう一歩つっこんで解説してくれると、さらに嬉しいんですけれど)

shining city on a hill
丘の上に輝く町◆米40代大統領Ronald Reaganがアメリカ国民にとって「帰るべき場所」はどこなのかとして示した一つのビジョン
by R (2008-11-27 13:25) 

子守男

R さん、コメントありがとうございました。
英辞郎は、以前は参照してたのですが、おかしな訳や不適切な解釈、意味不明な例文をいくつも見つけて、使わないようにしています。いまやネット時代、辞書で見当たらなかった単語・表現は、検索して実例をいろいろ読んだ方がより深い理解が得られるように思います(ブログのネタにもなります…)。
by 子守男 (2008-11-29 12:09) 

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