bowdlerize (続・Bewitched) [固有名詞にちなむ表現]
前回取り上げたスタンダード・ナンバー "Bewitched" について、Wikipedia に面白いことが書かれていた。私がCD等で聴いたり読んだりしてきた歌詞は、多くの場合、オリジナルとは違う版なのだそうだ。音楽作品では歌詞の変更はときにあることだが、この歌については、ちょっときわどい内容なのが改変の理由だという。
Wikipedia から、その部分を引用してみよう(適宜改行を入れた)。
ここに出てくる bowdlerize とは、「~から不穏当な部分を削除する」あるいは「~を縮めるなどして勝手に変える」という意味だそうだが、シェイクスピアの削除版全集を編纂した Bowdler という人物から作られた「固有名詞にちなむ単語」であるという。これも面白い発見だ。
定義や由来をいくつかオンライン辞書から引用する。
上記の説明を読んで、前回あげた Millie Vernon など、いくつかのCDを引っ張りだして聞いてみたら、確かにどれも改変された歌詞で歌われていた。
ついでだが、上に出てくる Frederica von Stade とはフレデリカ・フォン・シュターデというメゾソプラノ歌手のこと。私はクラシックも聞くので彼女のことは知っていたが、スタンダード曲に関連して名前に接するとは意外だった。余談だが、彼女はドイツ系だがアメリカ生まれのアメリカ人なので、ドイツ語に沿った「フォン・シュターデ」という表記は適切ではない、と書いた文章を以前読んだことがある。英語ではどう発音されるのだろうか。
意外といえば、ロック歌手のロッド・スチュワート Rod Stewart とシェール Cher がこの曲をデュエットで歌っていることを同じ Wikipedia の記述で知った。調べてみたら2人はオリジナルの方の歌詞で歌っているそうだ。
ポップス歌手が歌った "Bewitched" といえば、リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt を思い出した。1980年代にジャズを歌うようになり、それまで彼女のヒット曲を聞いていた私には意外だった。しかし私にとっては(今となっては確かめようもないが)彼女の歌で初めて聞いたスタンダードも多いはずで、"Bewitched" も多分そうではないか。
CDラックをもう一度引っかき回したら、この曲が入ったアルバムもちゃんと持っていた。久しぶりに聞いたがなかなかいい編曲で、Millie Vernon 同様 verse をつけて、改編された歌詞で歌っている。
なおしつこく表記の話だが、この「ロンシュタット」もドイツ語に従ったものだということを、私は高校生の時にアメリカ人が彼女について話すのを聞いて気づいた。しかし「ロンスタット」のように変えても混乱するだけだろう。こういうことを言いだしたら、例えば「シェール」も「シェーア」ではないか、などという声が出て収拾がつかなくなる。やはり、多少原音とは距離のある表記でも、定着したものは慣用に従うのがいいと思う。
次回は、音楽ではない、もうひとつの有名な "Bewitched" について短く書いてみたい。
Wikipedia から、その部分を引用してみよう(適宜改行を入れた)。
- The original lyrics present an unabashed celebration of feminine sexuality that has been bowdlerized in most covers to remove the song's blatant sexual allusions.
One such line is "When love came and told me I shouldn't sleep," replacing the original "Until I could sleep where I shouldn't sleep"; another switch changed "And worship the trousers that cling to him" to "And long for the day I'll cling to him." The lyric "horizontally speaking, he's at his best" is often sung, "Harsh until he's speaking..." A reprise, including the line "Those ants that invaded my pants," is generally omitted entirely.
The authentic allusions are preserved in Frederica von Stade's 1990 recording with the London Symphony Orchestra, conducted by John McGlinn.
( http://en.wikipedia.org/wiki/Bewitched,_Bothered_and_Bewildered )
ここに出てくる bowdlerize とは、「~から不穏当な部分を削除する」あるいは「~を縮めるなどして勝手に変える」という意味だそうだが、シェイクスピアの削除版全集を編纂した Bowdler という人物から作られた「固有名詞にちなむ単語」であるという。これも面白い発見だ。
定義や由来をいくつかオンライン辞書から引用する。
- 1 : to expurgate (as a book) by omitting or modifying parts considered vulgar 2 : to modify by abridging, simplifying, or distorting in style or content
- DISAPPROVING to remove words or parts from a book, play or film that are considered to be unsuitable or offensive:
The version of the play that I saw had been dreadfully bowdlerized.
- Mid-19th century. < Thomas Bowdler (1754-1825), who published an edition of Shakespeare omitting scenes that he considered unsuitable
- Etymology
From Thomas Bowdler who in 1818 published a censored version of Shakespeare, expurgating "those words and expressions... which cannot with propriety be read aloud in a family."
上記の説明を読んで、前回あげた Millie Vernon など、いくつかのCDを引っ張りだして聞いてみたら、確かにどれも改変された歌詞で歌われていた。
ついでだが、上に出てくる Frederica von Stade とはフレデリカ・フォン・シュターデというメゾソプラノ歌手のこと。私はクラシックも聞くので彼女のことは知っていたが、スタンダード曲に関連して名前に接するとは意外だった。余談だが、彼女はドイツ系だがアメリカ生まれのアメリカ人なので、ドイツ語に沿った「フォン・シュターデ」という表記は適切ではない、と書いた文章を以前読んだことがある。英語ではどう発音されるのだろうか。
意外といえば、ロック歌手のロッド・スチュワート Rod Stewart とシェール Cher がこの曲をデュエットで歌っていることを同じ Wikipedia の記述で知った。調べてみたら2人はオリジナルの方の歌詞で歌っているそうだ。
ポップス歌手が歌った "Bewitched" といえば、リンダ・ロンシュタット Linda Ronstadt を思い出した。1980年代にジャズを歌うようになり、それまで彼女のヒット曲を聞いていた私には意外だった。しかし私にとっては(今となっては確かめようもないが)彼女の歌で初めて聞いたスタンダードも多いはずで、"Bewitched" も多分そうではないか。
CDラックをもう一度引っかき回したら、この曲が入ったアルバムもちゃんと持っていた。久しぶりに聞いたがなかなかいい編曲で、Millie Vernon 同様 verse をつけて、改編された歌詞で歌っている。
なおしつこく表記の話だが、この「ロンシュタット」もドイツ語に従ったものだということを、私は高校生の時にアメリカ人が彼女について話すのを聞いて気づいた。しかし「ロンスタット」のように変えても混乱するだけだろう。こういうことを言いだしたら、例えば「シェール」も「シェーア」ではないか、などという声が出て収拾がつかなくなる。やはり、多少原音とは距離のある表記でも、定着したものは慣用に従うのがいいと思う。
次回は、音楽ではない、もうひとつの有名な "Bewitched" について短く書いてみたい。
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2/25 フォン・シュターデがサンフランシスコ音楽院に登場...
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by サンフランシスコ人 (2018-02-21 08:08)