CDやDVDを「焼く」と burn [和英表現]
ブログの「炎上」と flame について前回書いたが、その連想で、データを書き込んでCDやDVDをつくる際に使われる「焼く」と burn が頭に浮かんだので、ちょっと書いておきたい。
こうした場合の「焼く」を初めて耳にした時は、写真を「焼き増しする」、「焼きつけ」、あるいは複写の「青焼き」などから容易に意味が想像できた。
そして面白いことに、英語でもこれを burn という。英英辞典には次のように説明されている。
ガスバーナーならぬ CD burner は、メディアにデータを書き込む周辺機器、CD-Rドライブ、ということになる。
私が使っている電子辞書では、英英辞典(Oxford 系)は今回の意味を載せているが、英和辞典(「リーダーズ(プラス)」と「ジーニアス大英和」)は編纂されたのが少し前のためか、いずれも載っていない。より新しい紙の辞書「レクシス」と「アンカーコズミカ」はどちらも収録していた。後者など、データを複写して云々といった説明はなく、(CDなど)を「焼く」、とカギカッコつきで書いているだけで、この使い方をほぼ定着してものと見ているようである。
さて、前回の「ブログ炎上」と flame ではないが、「CDやDVDを焼く」についても、burn と何らかの関係があるのではないか、と思いたくなる。つまり、この「焼く」は写真や複写に使われる日本語の意味から転じたものではなく、英語の burn から来たものではないか、というわけである。
そこで電子辞書を引いてみたが、「明鏡国語辞典」には、「ネガを焼く」「写真を焼く」という場合の「焼く」の項に
とあった。私の考えは間違っていたようだ。
あるいは、もともと写真などを「焼く」のも、実は burn から来たということはないか、とも考えた。しかし辞書を改めて確かめても、burn には make an extra copy や print out、あるいは photocopy や duplicate といった意味はないようで、やはり無理があった。
そうすると、CDなどを「焼く」ことを英語でも burn というのは、実はまったくの偶然ということになりそうだ。不思議なものである。
それでも、さらに考えた。最初に業界関係者あるいは専門家が burn にならって「焼く」と呼ぶようになったが、それがたまたま写真に使われる「焼く」と似た発想なので、一般にも広まった、ということはないのだろうか。
ネットで調べてみれば、あるいは関係する情報が見つかるかもしれないが、そうした余裕がない。何かご存知の方がいらしたら、教えていただければ幸いである。
さて、これまで copy という単語が何回か出てきたので老婆心ながら、この言葉は「複写」という意味のほか、同一の本や雑誌などの部数を指す「~冊」「~部」「~枚」としても使われることに注意したい。
ついでに、書類などを「コピーをする」という場合、固有名詞から転じた Xerox が動詞として使われるのは前にも書いたとおりである。なお私は、誤って Zerox と書いて恥をかいたことがある。「ゼロ」ックスという連想だろうが、他山の石としていただければと思う。
余談だが、写真のフィルムが過去の遺物となるにつれて、「焼き増し」などの言葉もすたれていくのだろうか。私も今や、「プリント(する)」という言葉ばかりを使っている気がする。
こうした場合の「焼く」を初めて耳にした時は、写真を「焼き増しする」、「焼きつけ」、あるいは複写の「青焼き」などから容易に意味が想像できた。
そして面白いことに、英語でもこれを burn という。英英辞典には次のように説明されている。
- produce (a compact disc) by copying from an original or master copy
- to copy information, recorded music, images, etc. onto a compact disc: Burn your favourite songs or your important files onto CDs.
- copy data to CD: to copy data onto a CD-ROM or DVD-ROM. It can then be used to transport the content or to create multiple copies.
- to record digital data or music on (an optical disk) using a laser <burn a CD> ; also : to record (data or music) in this way <burn songs onto a disk>
ガスバーナーならぬ CD burner は、メディアにデータを書き込む周辺機器、CD-Rドライブ、ということになる。
私が使っている電子辞書では、英英辞典(Oxford 系)は今回の意味を載せているが、英和辞典(「リーダーズ(プラス)」と「ジーニアス大英和」)は編纂されたのが少し前のためか、いずれも載っていない。より新しい紙の辞書「レクシス」と「アンカーコズミカ」はどちらも収録していた。後者など、データを複写して云々といった説明はなく、(CDなど)を「焼く」、とカギカッコつきで書いているだけで、この使い方をほぼ定着してものと見ているようである。
さて、前回の「ブログ炎上」と flame ではないが、「CDやDVDを焼く」についても、burn と何らかの関係があるのではないか、と思いたくなる。つまり、この「焼く」は写真や複写に使われる日本語の意味から転じたものではなく、英語の burn から来たものではないか、というわけである。
そこで電子辞書を引いてみたが、「明鏡国語辞典」には、「ネガを焼く」「写真を焼く」という場合の「焼く」の項に
「情報をCDに―」「CD-ROMを―」など、CDなどに転用する。データを書き込む意。
とあった。私の考えは間違っていたようだ。
あるいは、もともと写真などを「焼く」のも、実は burn から来たということはないか、とも考えた。しかし辞書を改めて確かめても、burn には make an extra copy や print out、あるいは photocopy や duplicate といった意味はないようで、やはり無理があった。
そうすると、CDなどを「焼く」ことを英語でも burn というのは、実はまったくの偶然ということになりそうだ。不思議なものである。
それでも、さらに考えた。最初に業界関係者あるいは専門家が burn にならって「焼く」と呼ぶようになったが、それがたまたま写真に使われる「焼く」と似た発想なので、一般にも広まった、ということはないのだろうか。
ネットで調べてみれば、あるいは関係する情報が見つかるかもしれないが、そうした余裕がない。何かご存知の方がいらしたら、教えていただければ幸いである。
さて、これまで copy という単語が何回か出てきたので老婆心ながら、この言葉は「複写」という意味のほか、同一の本や雑誌などの部数を指す「~冊」「~部」「~枚」としても使われることに注意したい。
ついでに、書類などを「コピーをする」という場合、固有名詞から転じた Xerox が動詞として使われるのは前にも書いたとおりである。なお私は、誤って Zerox と書いて恥をかいたことがある。「ゼロ」ックスという連想だろうが、他山の石としていただければと思う。
余談だが、写真のフィルムが過去の遺物となるにつれて、「焼き増し」などの言葉もすたれていくのだろうか。私も今や、「プリント(する)」という言葉ばかりを使っている気がする。
タグ:日本語
にほんブログ村← 参加中です
うーん、明鏡の説明は本当なんですかねえ。むかし burn をそのまま「焼く」と訳して使った技術者か技術翻訳者がいて、それがレーザーで「焼く」こととつながって違和感なく使われるようになったのではないかという気がしていましたが。それと、「焼く」というのは、青焼きとか焼印みたいな、もう直せない、1回限り、というイメージもありますね。
by たんご屋 (2009-02-21 10:18)
たんごさん、コメントありがとうございました。私も本編に書きましたように、英語の burn と関係があるのではないかと実は考えています。
>1回限り、というイメージもあり
というご意見は、なるほど、と思いました。同じデータを書き込む・複写する場合でも、ふつう「テープを焼く」とは言わないですよね。
by 子守男 (2009-02-21 19:07)
結論から言うと、技術用語から一般化した。その際、明鏡のように誤解する人が多数。辞書にも載ってしまったので今後も増える。恐らく、正しい語源を記述する辞書も現れるでしょう。
プレス生産のCDは、文字通りプレスして作っていますから、
焼いていません。
CD-Rは、反射面に塗布されている(低反射率の)色素面をレーザー照射により焼き切って透過部分を作り、反射率を変えることにより情報を書き込むので、焼くと言います。laser burn=焼くです。
CD-RWも「焼いて」いますが、今度は結晶構造を変えることで反射率の差を作っていて元に戻せるので何度でも焼けます。
(反射率の差が大きく取れないので、ドライブによっては読み取りエラーが大きくなる場合あり。元に戻すのも時間がかかる。)
写真の焼き増し、焼き付けは、英語ではDPEのPでprintingですね。撮影時にはexposeと言いますが、これはフィルムの露出、感光。感光紙の焼き付けはprint。
ということで、英語圏では焼くに関連する言葉は使われていません。sun burnだと退色するのでイメージが合わないし。
ちなみにburnの連想からtoastというCD burnerがあります。
toast a CDといえば、気が利く英語圏の人なら理解可能。
by nt9 (2009-07-08 11:35)