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「ミサイル」と「ロケット」と「飛翔体」 [ニュースと英語]

北朝鮮が「ミサイル」を発射した。この前の発射の時も、英語にからめて何回かここで取り上げたが、早いものでもう3年前のことになる。

今回、北朝鮮は「人工衛星」を打ち上げると予告していたが、日本やアメリカなどは長距離弾道ミサイルの試験とみて対応してきた。宇宙に人工衛星を飛ばす技術は基本的にミサイルと変わりないというし、核開発などこれまでの北朝鮮の行動を見れば、当然の対応だと思う。

打ち上げの計画が明らかになって以来、面白いなと思っていたのは日本のマスメディアの報道だった。私が見た範囲では、どの社もあくまで「ミサイルの発射」という位置づけで表現していたと思う。「事実上のミサイル」「人工衛星名目のミサイル発射」など細かい点で違いはあっても、記事の最初から「ミサイル」を使っていたことでは同じだった。

海外の国際通信社はどうだったか。発射の数日前の記事をネットで見ると、

- North Korea is preparing a rocket to blast off as early as Saturday, officials said, readying what Pyongyang describes as a satellite launch but is widely regarded as a disguised long-range missile test.
(Reuters)

- Reclusive North Korea pressed ahead Friday with final preparations to blast a multistage rocket over Japan as world leaders scrambled to forge a united stance on how to punish Pyongyang for the launch. (中略) The U.S., South Korea and Japan think the communist country is really testing long-range missile technology (後略)
(AP)

どちらも記事の最初の部分だが、まず rocket を使い、そのあとで missile 技術の実験だという見方が広がっていることに触れる、という順番である。別に北朝鮮の言い分が正しいといいたいわけではなかろうが、こうする方が、最初から「ミサイル」と表現するよりも客観的な印象を与えると思う。

さらにネットの記事に目を走らせると、日本のメディアも英文記事では英米風のスタイルを取っていることに気づく。発射前の記事をいくつか引用しよう。

- Defense Minister Yasukazu Hamada ordered Japan's Self-Defense Forces Friday to destroy debris from a North Korean rocket in the event that its launch fails and fragments fall toward Japanese territory.
(Kyodo)

- Lawmakers are pushing for tougher sanctions against North Korea over its plan to launch a satellite-carrying rocket that many countries suspect is a long-range ballistic missile.
(Asahi)

- North Korea's planned launch of what it claims to be a satellite, but which is strongly believed to be a ballistic missile, constitutes a major threat to the international community, especially Japan and the East Asian region.
(Yomiuri)

たまたま目についた記事の話なので、これをもって日本と英米メディアの違いというように一般化することはできないかもしれないが、ちょっと面白いと思ったので記しておきたい。

さて日本政府としては、いくらミサイル技術の試験と考えていても、実際に何なのか確認できなければ「ミサイル」と公に呼ぶわけにはいかない。そこで出てきたのが、「飛翔体」という日常では聞きなれない言葉だった。何だかUFOを連想するが、実際に flying object と訳している記事もあった。

- "I have issued an order ... to prepare to destroy any object that might fall on Japan as a result of an accident involving a flying object from North Korea," Defense Minister Yasukazu Hamada told reporters after a meeting of Japan's Security Council.
(Reuters)

- "We believe a flying object from North Korea is unlikely to land in our territory. Yet, we must be prepared just in case," Terata said.
(AP)

私の頭に浮かんだのは projectile だったが、発射後の英文記事をネットで見ると、実際にはこの単語や flying object よりも、引き続き rocket を使ったものが多いようである。

なお発音だが、projectile は語源に共通点がある名詞 project とは違って、2つめの母音の e に強勢がある( project も動詞だとここに強勢が置かれる)。また最後の -tile の部分は、t と l の音のつながりが難しいと感じる人が多いのではないかと思うので、/-tail/ と母音を入れる発音の方がたいていの日本人には容易だろう。そういえば missile も最後のところが異なる2つの発音がある。

ついだが、vehicle を単に車の類義語や「乗り物」として覚えている人もいるかもしれないが、「(搭載物以外の)ロケット本体」という訳語も辞書に載っている。「何かの運搬手段」「伝達手段」「媒体」として、輸送機関にとどまらず広い意味で使える単語だ。

取りとめのない内容になったが、北朝鮮のミサイル発射についてはこの他にも書きたいことがあり、次回以降に続けたい。

追記(2016年2月)新たな北朝鮮の”ミサイル”発射で、下記の記事を書いた:
ミサイルと rocket は違うのか (北朝鮮が弾道ミサイル発射)


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