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anniversary は「記念日」ではない [注意したい単語・意外な意味]

先日、英語で雑談をする機会があり、「オウム真理教の事件から15年」と表現するのに anniversary を使ったら、その場にいた人(日本人)から不適切ではないかと言われた。日本語の「記念日」の印象から anniversary は悪いことには使えないと誤解している人が結構いるのではないかと思ったので、短く書いてみたい。

「記念」や「記念日」という言葉は、何か望ましくないことや起こらなかったほうがいいものに使うことはほとんどないのではないかと思う(私が持っている国語辞書を見る限り、特段そうした注記はないが)。

「911テロ記念日」とか「原爆投下記念日」と言う人はまずないだろう。原爆ドームのある広島の公園の名称には「記念」が使われているが、その前には「平和」がついていて、原爆投下を記念しているわけではない(余談だが沖縄にあるのは「平和祈念」で、広島とは違う字が使われている)。

手持ちの英和辞典で anniversary を引くと、載っている訳語はどれも「記念日」である。「記念祭」「…周年祭」「記念行事」もあるが、まあ似たようなものだろう。せいぜい「…回忌」という訳語を見て、「なるほど、これにも使えるのだな」と思うくらいだろうか。

さらに辞書の例文を見ると、celebrate our tenth wedding anniversary とか commemorate the 500th anniversary of the arrival of Christopher Columbus といったものばかりが並んでいる。

もちろんこうしたものはこれでいいのだが、一方で、

- A day of mourning also became a day of service Friday as Americans observed the eighth anniversary of 9/11 with acts of kindness, as well as the usual remembrances at three locations scarred by terror attacks that killed almost 3,000.
(USA Today)

- Tokyo marked the 15th anniversary Saturday of the sarin nerve gas attack on its subway system by Aum Shinrikyo cult members, which left 13 dead and sickened some 6,300.
(Kyodo)

といった例もちゃんとネットにある。

つまりこの単語は、好ましいか否かにかかわりなく使われるわけである。そうしたことを説明したり例文で示したりしている英和辞典は、少なくとも私が持っているものでは見当たらない。

今回の anniversary と「記念日」は、英語と日本語の単語を1対1対応で覚えていると、誤ったイメージを持ってしまうという好例といえるのではないかと思う。日本語に引きずられた誤解だけに、英英辞典を使っていれば避けられるというものでもなさそうだ。

結局、さまざまな実例に触れて単語のイメージを自ら掴んでいくことが必要になってくるが、同時に、英和辞書の編者にも記述上の努力をお願いしたいものだと考えている。

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ぐうたらぅ

今年の「阪神・淡路大震災15周年追悼式典」でも、「周年」が祝い事に使われる印象があるので違和感があると話題になりましたね。「周年」や「記念」にそういう含みがあるとすれば、国語辞典を見てもそれがわからないのは日本人にとっても外国人の日本語学習者にとっても困ることですね。

ただ私自身は、そういう違和感や含みは漠然と理解できるのですが、戦争や災害を「記念」したら戦争や災害そのものを祝っていることになるのか?という疑問も感じます。たぶん私は今のところは戦争や災害の遺族という辛い立場にはない、現実を知らない部外者なので、そのような日には、悲しみを思い出すとか亡くなった方を追悼するという意味合いよりも、今年の無事を感謝するとか、あれからどんどん復興してきているようだ、という側面の方を多く感じているせいでしょう。そういう温度差が人を傷つけてしまうのだろうと言葉の難しさを感じます。
by ぐうたらぅ (2010-04-28 22:19) 

子守男

「記念」を使ったからといって戦争や災害そのものを本気で祝っているわけではないことは、たぶんほとんどの人が同意するのではないでしょうか。
であっても、やはり単純にどうにもふさわしくない、違和感を抱く言葉の組み合わせというものがあるのではないかと思うんですね。
理屈で割り切れないところが人間の使う言葉のおもしろさであり、むずかしさでもあるのでしょう。あまり深い考えではなくてすみません。
by 子守男 (2010-04-29 02:45) 

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