SSブログ

tempus fugit (「光陰矢のごとし」) [ラテン語・外来語]

前回の carpe diem から、同じく時に関係あるラテン語として思い出したのが tempus fugit である。"Time flies." 「光陰矢のごとし」という意味だ。

私がこの言葉を知ったきっかけは、外国語学習でも何でもなく、またもやジャズによってだった。バド・パウエル Bud Powell というピアニストの作品に、「テンパス・フュージット」という快作がある。

ジャズ・ジャイアント

ジャズ・ジャイアント

  • アーティスト: バド・パウエル,レイ・ブラウン,カーリー・ラッセル,マックス・ローチ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2003/04/23
  • メディア: CD

この曲が含まれているアルバム Jazz Giant を最初に聞いたときは、「”テンパス・フュージット”か、変わったタイトルだな」と、例によってあまり気にも留めず、そのずっと後になって、ふと「いったいどういう意味だろう」と調べてみた、というのも、ジャズで知った他の単語の例と同じである。

今回取り上げるにあたって謂れなどを知りたいと思ったが、どの辞書にも「光陰矢の如し」や "Time flies." としか書かれていないので、Wikipedia をのぞいてみた。

Tempus fugit is a Latin expression meaning "time flees", more commonly translated as "time flies". It is frequently used as an inscription on clocks. The expression was first recorded in the poem Georgics written by Roman poet Virgil: Sed fugit interea fugit irreparabile tempus, singula dum capti circumvectamur amore, which means, "But meanwhile it flees: time flees irretrievably, while we wander around, prisoners of our love of detail."

The meaning is sometimes used less colloquially as: "Meanwhile, the irreplaceable time escapes", expressing concern that one's limited time is being consumed by something which may have little intrinsic substance or importance at that moment.

( http://en.wikipedia.org/wiki/Tempus_fugit )

前回の carpe diem はホラティウスだったが、今度の古代ローマの詩人はウェルギリウス Publius Vergilius Maro である。

余談だが、幼い頃「サンダーバード」 Thunderbirds という海外TVドラマを熱心に見ていたことは以前書いたことがあるが、この作品に「バージル」という人物が出てくる。後年、ウェルギリウスが英語で Virgil (Vergil) と呼ばれることを知った時は「何だ、サンダーバードと同じではないか」と思ったものだった。

ところで最初に「テンパス・フュージット」と邦題を書いたのにはわけがある。私はこのカタカナから辞書を引いて tempus fugit を引き当てたのだが、パウエルの作品は、よく見ると "Tempus Fugue-it (Tempus fugit)" となっていて、音楽用語の fugue 「フーガ、遁走曲」 を引っかけてあるらしいことがわかる。

fugue の発音は /fju:g/ で日本語の「フーガ」とは違うし、tempus fugit もラテン語とあって、英語ではいくつか異なる発音がある。「フューギット」のようにも発音されるが、パウエルの作品はむしろこちらの方であろうか。

さらに Wikipedia の記述を見ると、tempus fugit がロックグループ Yes の作品、またテレビドラマの「Xファイル」 X-Files や「スタートレック・ヴォイジャー」 Star Trek: Voyager でエピソードのタイトルに使われていることがわかる。英語圏ではおなじみのラテン語のひとつなのかもしれない。

なお、綴りからわかるように、この tempus は temporal や contemporary などの英単語につながっている。おなじみの「テンポ」 tempo はイタリア語由来で、もちろん関係があるし、同じくラテン系の言葉フランス語で time は temps である。

ついでだが、辞書で tempus fugit を引くと、その前に tempus edax rerum という別のラテン語が載っている。オウィディウス Ovid (Publius Ovidius Naso) の言葉で、time, which devours all things (万物を破壊する時の流れ)という意味だそうだ。

もうひとつついでに、時の短さについてのラテン語といえば、以前 "Ars longa, vita brevis" を取り上げたことを思い出したので、参考としてあげておきたい。


にほんブログ村 英語ブログへ
にほんブログ村

nice!(1)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 1

コメント 5

履歴書の封筒

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 履歴書の封筒 (2014-05-14 18:26) 

Lucy T

こんにちは、イギリスTVからハリウッド、日本の英語教育まで語る日英ふしぎまんだら Yahooブロガーの LUCYTです。
私も、もってます~英検1級。これは生徒指導してるのに自分が持ってないのはということで受けたというものです。
今イギリスのレスター大学でMA TESOL Applied Linguisticsを選考中です(もうすぐ修士終わりです)。

ブログリンクはっておきましたが、いま、BBC Radio4で、Jane AustenのMansfield Parkの朗読をBenedict Cumberbatch, David Tennant, Felicity Jonesがやってるのを再放送してます。ではお元気で。
by Lucy T (2014-05-17 10:03) 

tempus fugit

履歴者の封筒さん、Lucy Tさん、読んでいただきましてありがとうございました。
by tempus fugit (2014-05-19 22:29) 

Archie

色々記事を拝見させてもらいましたが、どれも興味深くて面白いです!!英語をマスターするのは一生かかりそうですねww。それとですが、国連英検特A級を取られているようですが、対策はどうされましたか?
by Archie (2018-07-04 14:54) 

tempus fugit

Archieさん、コメントありがとうございました。英語はどこまで行っても後天的に学んだ外国語、masterすることは一生かかっても不可能で、同じ「マスター」でもpass musterがせいぜいだと(前向きに)割り切っています。

国連英検特A級を取得したのはもうずいぶん前のことなので、今とは試験の方法や内容が違っているかもしれませんが、指定された国連についての本を読み、過去問題集を一冊やってから試験に臨みました。若い頃から時事問題に興味があり、無謀と思いつつ英語の新聞雑誌を読んでいたので、その面では2次面接を含めて特に対策はしませんでした。英会話ばかりやっていても国際問題に疎ければ厳しいかなと思います。あまり参考にならずすみません。



by tempus fugit (2018-07-05 22:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

にほんブログ村 英語ブログへ
にほんブログ村← 参加中です
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...