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続・007と芭蕉 (「007は二度死ぬ」) [007 ジェームズ・ボンド]

「007は二度死ぬ」の原題 You Only Live Twice は、芭蕉がきっかけで生まれたことを前回書いた。丹波哲郎が映画で演じていたタイガー田中という登場人物が、ジェームズ・ボンドに俳句と芭蕉について説明する場面が原作に出てくる。

タイガー田中は、次のような「芭蕉の俳句」を3つあげて、ボンドに俳句の魅力を説明する。

- In the bitter radish that bites into me, I feel the autumn wind.

- The butterfly is perfuming its wings, in the scent of the orchid.

- In the fisherman's hut mingled with dried shrimps crickets are chirping.

良さがわからないというボンドに対して、タイガー田中は

- 'You do not catch the still-life quality of these verses? The flash of insight into humanity, into nature?'

と重ねて語りかける。なお still-life とは「静物画の」という意味である。

前回同様、「芭蕉全発句」(講談社学術文庫)の索引で調べると、この3つは(You Only Live Twice とは違って)いずれもちゃんと芭蕉の作品があった。

多分、「007は二度死ぬ」の翻訳にはその俳句が出ているのだろうが、私は持っていないし、書店でも絶版なのか見つけることができなかった。ということで、おもしろいのでこちらも列挙してみよう。

- 身にしみて大根からし秋の風

- 蘭の香やてふのつばさにたき物す

- 海士(あま)の屋は小海老にまじるいとど哉

原作者のイアン・フレミングは、どのようにしてこの俳句に触れたのだろうか。また英訳は誰の手によるものか。ちょっと興味深い謎だ。

You Only Live Twice の舞台は日本である。映画では何とも奇怪な「ニッポン」が描かれているが、日本に対する西洋人のステレオタイプ的イメージがうかがわれるようで、かえっておもしろかったという記憶がある(007映画としては出来の悪い作品だったが)。原作は未読だがどうだろうか。


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タグ:日本文化
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コメント 3

ぐうたらぅ

ご無沙汰しております。
丹波さんがボンドに俳句の魅力を説明なんて、かっこいいー! ぜひ観たいです。
by ぐうたらぅ (2012-11-11 19:17) 

tempus fugit

ぐうたらぅさん、ご無沙汰しております。私の書き方がまずかったですが、タイガー田中が俳句を説明するのは原作の方です。映画でもそうしたシーンがあったかどうか定かではありません(何せもうずいぶん前に観たもので)。映画は上記のように荒唐無稽でマンガチック度が高まり、この作品でショーン・コネリーもいったん役を降りていますね。

by tempus fugit (2012-11-17 10:31) 

ぐうたらぅ

あ、原作の話ですね。早とちりでした~。
by ぐうたらぅ (2012-11-18 00:30) 

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