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ダニエル・クレイグの耳 (007「カジノ・ロワイヤル」) [007 ジェームズ・ボンド]

先日取り上げたロジャー・ムーアの「眉の演技」に続いて、今回も007映画をランク付けした Rolling Stone 誌の記事から、新作「スカイフォール」 Skyfall が封切られたダニエル・クレイグの耳の話。

20121108-daniel-craig-picture-x286-1352393776.jpg彼のジェームズ・ボンドは、当初の懸念をよそに高い評価を得ているといっていいだろう。

「ローリング・ストーン」誌の記事で、筆者 Peter Travers はクレイグが初めて007を演じた「カジノ・ロワイヤル」 Casino Royale を4位と上位にランキングし、次のように書き始めている。

The only Bond to rival best-in-show Connery is rugged, jug-eared Daniel Craig, a Brit livewire who reinvigorated the series for a new century.
( http://www.rollingstone.com/movies/lists/james-bonds-best-and-worst-peter-travers-ranks-all-24-movies-20121109/casino-royale-2006-19691231 )

これを読んで、私は同時に2度「おっ」と思った。まずは、初代ボンドのショーン・コネリーに匹敵するのはダニエル・クレイグのみという見方。やはりそうかと思った。「カジノ・ロワイヤル」に出演が決まったときに不安・不評の声があがったことは当時私も取り上げたが、いったん封切られるとそれが一変したのは、冒頭に書いた通りだ。

もうひとつは、この jug-eared という表現で、「なるほど」と思うと同時に笑いたくなってしまった。

jug は「取っ手のついた水差し」のことだ。「ジョッキ」はこの単語から来たという。それに eared 「~の耳をした」がついている。つまり「外側に広がった大きな耳」というような意味ではないか、という想像がつく。

辞書を見ると、それが正しいことがわかる。

- 大耳の、水差しの取っ手のように突き出た耳の
(ジーニアス英和大辞典)

- With ears sticking out, usually said mockingly
(Wiktionary)

とはいっても、ネットを見ると、前回取り上げたロジャー・ムーアの「眉の演技」ほど象徴的とは受け取られていないのか、実例はそれほど見つからなかった。そうした数少ない例としては、

Here comes Daniel Craig, fit and trim in a slim-cut blue suit and handsome in a slightly jug-eared way. A combination of intense and easygoing, he looks like a street tough who has been barely tamed by fashion design. He looks, against all odds, like James Bond.
( http://www.canada.com/life/fashion-beauty/Craig+Daniel+Craig/7499027/story.html )

against all odds 「予想外に」「抵抗や困難をものともせず」とあるので、やはり最初は「えっ?彼がボンド?」というのが大方の見方だったということだろう。余談だが、私のはこのイディオムをフィル・コリンズ Phil Collins のヒット曲 Against All Odds (Take A Look At Me Now) で知った。

もうひとつ、「ガーディアン」紙の「スカイフォール」評にあったのが、

Daniel Craig's Bond looks older, more careworn, slightly more jug-eared. This is a Bond who has something to prove, and who could be damaged goods, physically and even mentally.
( http://www.guardian.co.uk/film/2012/oct/25/skyfall-review )

jug-eared に more がついているのがよくわからないが、looks older, more careworn (やつれた)とあるし、映画の予告 trailer やスチルを見ても今回のクレイグは髪を短くしているので、耳がさらに目立って見えるということだろうか。

これも余談だが、more など比較級を使うときには、何と比べてなのかわかるように気をつけなくてはならない、とライティングを学んでいて教わった記憶がある。上記の文では明示されていないが、歴代ボンドの役者と比べてとは考えづらいので、これまで彼が演じた2本の007映画と比べて、ということだろう。

なお、jug は Joan の愛称から転じたもの、という説明がいくつかの英和辞典に載っている。これだけではよくわからないが、「ジーニアス英和大辞典」には、「平凡な女性→主婦、台所→台所用品」の変遷過程が考えられる、とあった。何だか「風が吹けば…」みたいである。

ついでだが、「ジーニアス」には「ジョッキ」は mug に当る、という記述もある。この単語を使った mug shot (顔写真)という表現について以前取り上げたことがある

土日も仕事や家族サービスでなかなか映画館に足を運ぶ余裕がないが、「スカイフォール」はぜひ観てみたい近作のひとつである。詳しくは書かないが、「ローリング・ストーン」誌の記事でも高ランキングとなっていた。

参考記事:
100パーセントでは不十分 (110 percent)
「007 カジノ・ロワイヤル」
顔写真 (mug shot)

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