「ゴールデン・フリース」 ("Golden Fleece" by Robert J. Sawyer) [読書と英語]
久しぶりにおもしろいSFミステリを読んだ。はるか彼方の惑星をめざす宇宙船の中で起きた殺人事件。物語を一人称形式で語っていくのは、誰あろう犯人自身。いったい動機は何なのか、そして乗組員たちをどんな運命が待ち受けているのか。
これまで何回かとりあげたTVドラマの「刑事コロンボ」と同じような、犯人と犯行を先に見せてしまう「倒叙」もの inverted mystery である。なのでネタバレをしてもよかろう、ということで書いてしまうと、犯人は宇宙船の活動すべてを統制しているコンピューターだ。
「コンピューターの叛乱」を描いたSFといえば、スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」 2001: A Space Odyssey が思い起こされる。しかしそれがある種哲学的とすらいえる重さを持っていたのに比べて、ソウヤーのこの作品は、殺人を犯しながらユーモアも感じさせるコンピューターの言動など、SFに不案内な人も肩の力を抜いて読むことができる。
タイトルの Golden Fleece (金の羊毛)のほか、目的地の惑星 Colchis、超大型宇宙船 Argo、未来のスーパーコンピューター Jason といった名前が出てくるが、いずれもギリシャ神話の「アルゴー船の遠征」を下敷きにしている。私は子供の時に星座の神話で読んだ(かつては「アルゴ(アルゴー)座」があったが現在は分割されている)。
以下は、「ウィキペディア」の引用である。
アルゴー船(アルゴーせん、Argo)は、ギリシア神話に登場する巨大な船の名前である。アルゴ船、アルゴー号とも。
船大工でプリクソスの子アルゴスが建造したので、彼の名から命名された。イオールコスの英雄イアーソーンがコルキスの黄金の羊の毛皮を求める冒険のために建造された。アルゴー船の乗組員には、勇士50人が募集され、これに応じてヘーラクレース、双子のカストールとポリュデウケース、オルペウス、リュンケウスなどギリシア神話で活躍する英雄たちが乗り込んだとされる。
( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%BC%E8%88%B9 )
ここに出てくる「イアーソーン」が Jason である。英語だと I と J は発音が異なるが、アルファベットではもともと両者は区別していなかった。
そういえば、去年評判になった映画「アルゴ」の原題も Argo だった。私はまだ観ていない。
この作品の話に戻ると、ある意味で全能のコンピューターが犯人とあって、自殺に見せかけた殺人は完全犯罪となるはずだった。しかし被害者が自殺するはずはないと考えた1人の乗組員が執拗に追及を始める。それをかわすべくコンピューターが繰り出すあの手この手がなんとも人間くさくておもしろい。
そんな犯人と探偵役の攻防を楽しみながら読み進めていくと、人類の未来について、「2001年」ばりにあっといわせる真相がラストで待っている。文句なしに傑作である。英語もそれほど難しくない。
参考記事:
・追悼 アーサー・C・クラーク
・「借りた時間を生きる」とは? (live on borrowed time)
これまで何回かとりあげたTVドラマの「刑事コロンボ」と同じような、犯人と犯行を先に見せてしまう「倒叙」もの inverted mystery である。なのでネタバレをしてもよかろう、ということで書いてしまうと、犯人は宇宙船の活動すべてを統制しているコンピューターだ。
「コンピューターの叛乱」を描いたSFといえば、スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」 2001: A Space Odyssey が思い起こされる。しかしそれがある種哲学的とすらいえる重さを持っていたのに比べて、ソウヤーのこの作品は、殺人を犯しながらユーモアも感じさせるコンピューターの言動など、SFに不案内な人も肩の力を抜いて読むことができる。
タイトルの Golden Fleece (金の羊毛)のほか、目的地の惑星 Colchis、超大型宇宙船 Argo、未来のスーパーコンピューター Jason といった名前が出てくるが、いずれもギリシャ神話の「アルゴー船の遠征」を下敷きにしている。私は子供の時に星座の神話で読んだ(かつては「アルゴ(アルゴー)座」があったが現在は分割されている)。
以下は、「ウィキペディア」の引用である。
アルゴー船(アルゴーせん、Argo)は、ギリシア神話に登場する巨大な船の名前である。アルゴ船、アルゴー号とも。
船大工でプリクソスの子アルゴスが建造したので、彼の名から命名された。イオールコスの英雄イアーソーンがコルキスの黄金の羊の毛皮を求める冒険のために建造された。アルゴー船の乗組員には、勇士50人が募集され、これに応じてヘーラクレース、双子のカストールとポリュデウケース、オルペウス、リュンケウスなどギリシア神話で活躍する英雄たちが乗り込んだとされる。
( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%BC%E8%88%B9 )
ここに出てくる「イアーソーン」が Jason である。英語だと I と J は発音が異なるが、アルファベットではもともと両者は区別していなかった。
そういえば、去年評判になった映画「アルゴ」の原題も Argo だった。私はまだ観ていない。
この作品の話に戻ると、ある意味で全能のコンピューターが犯人とあって、自殺に見せかけた殺人は完全犯罪となるはずだった。しかし被害者が自殺するはずはないと考えた1人の乗組員が執拗に追及を始める。それをかわすべくコンピューターが繰り出すあの手この手がなんとも人間くさくておもしろい。
そんな犯人と探偵役の攻防を楽しみながら読み進めていくと、人類の未来について、「2001年」ばりにあっといわせる真相がラストで待っている。文句なしに傑作である。英語もそれほど難しくない。
参考記事:
・追悼 アーサー・C・クラーク
・「借りた時間を生きる」とは? (live on borrowed time)
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