hoarding 「広告の看板 (billboard)」(「007 ロシアより愛をこめて」) [007 ジェームズ・ボンド]
前回 try ... for size という表現を紹介した映画「ロシアより愛をこめて」は、原作にかなり忠実に作られている。それを教えてくれた翻訳はもう持っていないが、積ん読のペーパーバックが本棚にあるので見たら、くだんの狙撃シーンもちゃんとあった。その場面に目を通したら、やたらと hoarding という単語が目についたので、今回はこれを取り上げたい。
ジェームズ・ボンドとイギリス秘密情報部のイスタンブール支局長ケリムが、敵をライフルで狙う時の会話である。
- 'He hides out in a shack behind a bill-hoarding. There is a front door to the shack. Also a trap-door to the street through the hoarding.'
- 'He will slip through the hoarding. Then I shoot him. All right?'
- After ten minutes, they came in sight of the twenty-foot-high hoarding that formed a facing wall to the T intersection at the bottom of the street.
(Ian Fleming: From Russia with Love)
辞書を引くと、
- 1. (空き地・建築現場などの)一時的板囲い、仮囲い
2. (英) 広告掲示板(<米>billboard)
(ランダムハウス英和大辞典)
- BrE (also billboard NAmE, BrE) a large board on the outside of a building or at the side of the road, used for putting advertisements on
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)
ということで、イギリス英語であり、アメリカ英語では billboard であることがわかる。
前回も書いたように、建物の映画広告に描かれた女優の口が出入り口になっているが、ここから敵の男が出てくるのは原作も同じだ。しかし広告となっている映画が異なる。原作では「ナイアガラ」 Niagara (1953年)で、描かれている女優はマリリン・モンローだ。この場面がある第19章のタイトルも "The Mouth of Marilyn Monroe" となっている。
一方、映画の「ロシアより愛をこめて」では、製作したイオン・プロダクション Eon Production が同じ1963年に作った「腰抜けアフリカ博士」 Call Me BWANA で、敵が出てくる広告の女優は主演のアニタ・エクバーグ Anita Ekberg だ。つまり映画の中で自分たちが作った別の新作をちゃっかり宣伝しているわけである。ついでだが bwana とはスワヒリ語で「旦那さま」という呼びかけを表すと辞書にある。
なお、前回書いたように、映画ではまずボンドがライフルを撃とうとし、ケリムが "Try this for size." と言って肩を貸す。映像を見ればわかるためか簡潔なセリフだ。一方、原作では最初からケリムがライフルを構えたうえ、ボンドに対して 'Mind if I use your shoulder as a rest?' と言葉をかけていた。
余談だが、原作の翻訳は「ロシアから愛をこめて」で、映画と微妙に異なる。その映画も、最初に公開されたときは「007 危機一発」というタイトルだったという。
追記(2013年2月):
From Russia with Love の後のほうで、この狙撃についてアメリカ英語の billboard を使って回想する描写が出てきたので、記しておく。
- He reflected that they would soon be passing the back of the great bill-board where Krilencu had lived -- until less than twenty-four hours ago. Bond saw again the scene in every detail.
追記その2(2015年1月):
アニタ・エクバーグの訃報が伝えられた。残念ながら「ロシアより愛をこめて」のシーンについて触れた記事は目にした範囲ではなかったが、実際の出演作ではないので仕方がないのだろう。
ジェームズ・ボンドとイギリス秘密情報部のイスタンブール支局長ケリムが、敵をライフルで狙う時の会話である。
- 'He hides out in a shack behind a bill-hoarding. There is a front door to the shack. Also a trap-door to the street through the hoarding.'
- 'He will slip through the hoarding. Then I shoot him. All right?'
- After ten minutes, they came in sight of the twenty-foot-high hoarding that formed a facing wall to the T intersection at the bottom of the street.
(Ian Fleming: From Russia with Love)
辞書を引くと、
- 1. (空き地・建築現場などの)一時的板囲い、仮囲い
2. (英) 広告掲示板(<米>billboard)
(ランダムハウス英和大辞典)
- BrE (also billboard NAmE, BrE) a large board on the outside of a building or at the side of the road, used for putting advertisements on
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)
ということで、イギリス英語であり、アメリカ英語では billboard であることがわかる。
前回も書いたように、建物の映画広告に描かれた女優の口が出入り口になっているが、ここから敵の男が出てくるのは原作も同じだ。しかし広告となっている映画が異なる。原作では「ナイアガラ」 Niagara (1953年)で、描かれている女優はマリリン・モンローだ。この場面がある第19章のタイトルも "The Mouth of Marilyn Monroe" となっている。
一方、映画の「ロシアより愛をこめて」では、製作したイオン・プロダクション Eon Production が同じ1963年に作った「腰抜けアフリカ博士」 Call Me BWANA で、敵が出てくる広告の女優は主演のアニタ・エクバーグ Anita Ekberg だ。つまり映画の中で自分たちが作った別の新作をちゃっかり宣伝しているわけである。ついでだが bwana とはスワヒリ語で「旦那さま」という呼びかけを表すと辞書にある。
なお、前回書いたように、映画ではまずボンドがライフルを撃とうとし、ケリムが "Try this for size." と言って肩を貸す。映像を見ればわかるためか簡潔なセリフだ。一方、原作では最初からケリムがライフルを構えたうえ、ボンドに対して 'Mind if I use your shoulder as a rest?' と言葉をかけていた。
余談だが、原作の翻訳は「ロシアから愛をこめて」で、映画と微妙に異なる。その映画も、最初に公開されたときは「007 危機一発」というタイトルだったという。
追記(2013年2月):
From Russia with Love の後のほうで、この狙撃についてアメリカ英語の billboard を使って回想する描写が出てきたので、記しておく。
- He reflected that they would soon be passing the back of the great bill-board where Krilencu had lived -- until less than twenty-four hours ago. Bond saw again the scene in every detail.
追記その2(2015年1月):
アニタ・エクバーグの訃報が伝えられた。残念ながら「ロシアより愛をこめて」のシーンについて触れた記事は目にした範囲ではなかったが、実際の出演作ではないので仕方がないのだろう。

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