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better mousetrap 「もっと優れた製品」 [英語文化のトリビア]

先日「世間では」を意味する out there を取り上げた際、実例としてある名言もあげようと思ったが、むしろその中にある mousetrap について書きたいと考えたので、項を改め、関連情報を調べてみた。

その名言とは、以前作っていた学習ノートに Mortimer B. Zuckerman という人物の言葉としてメモしてあったものだ。何で知って書き留めたのかは覚えていない。

- Before you build a better mousetrap, it helps to know if there are any mice out there.

「さらに良いネズミ捕りを作るなら、まずネズミがいるかどうかを確かめるとよい」とはどういうことだろうか。

この言葉は、同じ build a better mousetrap を使った、別の名言を下敷きにしていると思われる。そちらは大学の授業で教わったものだが、あらためて電子辞書で調べたところ、辞書によって言い方に細かい違いがあった。

- Build a better mousetrap, and the world will beat a path to your door.
いいネズミ捕りを作れば、人々がわっと押し寄せる;いい製品を作ればおのずから売れる(R.W.Emerson の言葉とされる)
(ジーニアス英和大辞典)

- If you build a better mousetrap, the world will beat a path to your door.
魅力的な新製品を作れば世界中が殺到するだろう
(ランダムハウス英和大辞典)

- If a man invents a better mousetrap than his neighbor, the world will make a beaten path to this door.
ある人が隣人よりすぐれたネズミ捕りを発明すれば世間の人はその人の家に足繁く通うようになるものだ(R.W.Emersonの言葉から)
(英和活用大辞典)

ということで、mousetrap には「(消費者の心をひきつける)新製品」(リーダーズ、ジーニアス)「(消費者の注意を引く)新製品、改良品」(ランダムハウス)という意味がある。なお beat a path は「踏み固めて道を作る」、これに to somebody's door をつけると「~に大挙して押しかける」。

私の使っている電子辞書が収録している英語圏の辞書はどれも「ネズミ捕り」の意味しか載せていなかったので、オンライン辞書を見た。

- mousetrap
With attribute "better", a hypothetical new or improved product used in economic projections.
http://www.wordnik.com/words/mousetrap

- build a better mousetrap, to make or offer a superior product.
(Dictionary.com, based on the Random House Dictionary)

- build a better mousetrap
to develop or invent something superior to a device that is widely used. (From the old saying, "If you build a better mousetrap, the world will beat a path to your door.")
Harry thought he could build a better mousetrap, but everything he "invented" had already been thought of.
http://idioms.thefreedictionary.com/mousetrap

メディアで使われた実例をひとつ。スティーブ・ジョブズの偉いところは、ただ単にワクワクするような新製品を作るのにとどまらなかったところだ、という文章の一節である。

- The debate continues as to whether and to what extent Steve Jobs is replaceable. I already identified seven myths about Apple and Steve Jobs here and here and here. Here’s another one: Steve Jobs simply builds a better mousetrap. (中略)
Apple does more than build a better mousetrap
http://www.forbes.com/sites/stevedenning/2011/08/29/myth-8-apple-just-builds-a-better-mousetrap/

最初に紹介した Mortimer B. Zuckerman の言葉に戻ると、ネズミ捕りに引きつけられるネズミとは、つまりは消費者のことだろう。なので、製品開発をする前にはニーズがあるかどうかを確かめて計画を立てよ、という意味ではないかと思うが、どうだろうか。

なお、もとの名言については、私も辞書の引用にあるようにアメリカの思想家ラルフ・ウォルドー・エマーソンの言葉であると習った。しかし下記の Wikipedia によれば、エマーソンは似たような内容の言葉は残しているものの、言い回しはずいぶんと違うものとなっている。辞書が掲載している言葉が少しづつ違うのもそのためだろう。一種の「常識のウソ」というべきか。
http://en.wikipedia.org/wiki/Better_mousetrap

発音について余談だが、日本語の慣用表記のように「エマーソン」という(つまり「マー」に強勢を置く)と通じない。Emerson は最初の /e/ に強勢があるので、カタカナであえて書けば「マスン」とすると少しはそれらしくなる。ジェファーソン Thomas Jefferson も「ファー」ではなく最初に強勢を置いて「ジェファスン」のように発音される。

参考記事:
・自分からは使えない表現 out there
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-02-14
・out there 「いっちゃってる」「ぶっとんだ」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-02-15

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