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不親切な新聞記事 [日本語]

この週末、爪を切りながら、下に敷いた数日前の新聞に載っている記事を何気なく読んだら、「?」という気持ちになった。

反捕鯨団体シー・シェパードに対するアメリカでの訴訟で、その活動を「海賊行為」と裁判所が認定し、妨害行為差し止めの本訴訟が続いている米連邦地裁に対して、シー・シェパードを支持していた担当判事を交代させるよう命令した、という内容だ。ネットにも掲載されている。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130227-OYT1T01219.htm

何が「?」かというと、「連邦地裁に命令を出す」権能のあるこの裁判所とはどこ(何)なのか、記事を読み終わってもわからなかったことだ。最後まで、単に「裁判所」としか書かれていない。

「地裁より上位にきまっているから高裁だと想像できるだろう」というかもしれない。そして他社の新聞記事を調べると、確かにサンフランシスコの連邦高裁がシアトルの連邦地裁に命令したことがわかった。ならば最初から「連邦高裁」と書けばいいはずだ。わずか1字長いだけである。

さらにいえば、この記事には、誰が訴訟を起こしたのか書かれていない。記事の冒頭に「日本鯨類研究所によると」、また最後に「同研究所が...新たに訴訟を起こす方針」とある。そこで、この研究所が訴えたらしいと想像はできるものの(そして他社の記事を読むと、その通りなのだが)、はっきりとした情報が示されておらず、不親切だと思った。

日本語は主語がない(あるいは、省略できる)といわれる。文脈からわかる場合は明記すると不自然に感じることもある。あえて明確に表現しないことが言葉や内容に味わいを与え、コミュニケーションの高度な技法たりうることを否定するつもりはない。

しかし、それによりかかって、必要以上に明確さを欠くことがあってはならないと思う。新聞は、国語の授業で手本にされることもある。別に名文である必要はないが、記者も編集・校正者も、もう少し気をつけてもらいたいものである。


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