SSブログ

やめてほしい電子辞書の「ワーラー (water)」 [発音]

前回に続いて電子辞書の話を続ける。紙の辞書には期待できない大きな特徴といえば音声機能だろう。発音記号だけでなく実際に音を確かめられるのはうれしい。しかし勝手なもので、使っていると不満を感じてくる点もある。

あくまで私が使っている某社の電子辞書についての感想であることを断ったうえで書くと、一部の単語が /t/ を軽くした発音で収録されているのが気に入らない。

つまり、water が「ワーラー」、party が「パーリー」のように、また letter を「レラ―」、little を「レロ」のように聞こえる音で発音しているのである。

ご存知の人が多いと思うが、アメリカ英語では、単語によっては /t/ がこのように聞こえる音で発音されることある。flap 「弾音」と呼ばれる。

「何が悪いのか」という人がいるかもしれない。実際にそう聞こえる、そう発音されるのだからいいではないか。私も、実際に発音される音に慣れることの大切さは重々承知しているつもりであり、こうした発音を示すこと自体は間違ってはいないと考えている。

私が不満に思うのは、「ワーラー」「パーリー」といった発音だけが収録されていることである。初学者のためにも、やはり /t/ をしっかり出す標準的な音を聞かせたあとで、そうした発音を示すべきではないか。

関連してもうひとつ不満なのは、こうした「変化球」的発音を収録するかしないかについて、統一が取れていないことだ。

例えば、center を「セナー」のようにしているかというと、そうではない。winter も「ウィンター」のように、しっかりと /t/ を発音している。international は「イナナショナル」とはしていないし、mountain も「マウン・ン」ではない。

数字でみると違いがはっきりしてくる。forty が「フォーリー」、eighty が「エイリー」である一方、seventy や、語尾の t が抜けて「トウェニィ」のようになってしまうことでおなじみ?の twenty では /t/ がしっかりと発音されている。

つまり、この辞書の音声機能では、母音のあとの単体の /t/ 音は軽く発音する一方、-nt の場合はそうしていないようなのだ。逆にその点でちゃんと統一されているという人がいるかもしれないし、この2パターンの違いについて英語音声学的な説明や分析もあるのかもしれない。

しかし、ここで書きたいのはそうしたことではない。学習者のためには、「変化球」で発音されうる単語ならば、どちらか一方ではなく、両方の発音を収録すべきだと思う。容量上それが無理なのであれば、標準的な発音を選ぶべきだろう。

私の考えは保守的、原理主義的かもしれないが、flap をまねするのは標準的、教科書的な発音を身につけたあとでいいはずだ。

私がこう考えるのは、学生時代にネイティブスピーカーから受けたアドバイスの影響もある。最初にこうした発音を覚えてそのままだと、改まった席などでは sloppy に聞こえてしまうこともある。だから「ワラー」のような発音はやめなさい。そんな内容だった。

「表現や発音などから明らかにネイティブではない人が、こうしたところだけアメリカ人風の発音をまねすると、正直言って余計つたなく聞こえる場合がある」。初老のアメリカ人神父で、立場的・年齢的にも言葉をていねいに使う人だったといえるだろうが、「ベラー」や「トウェニイ」のような発音をして悦に入っていた私には耳が痛かった。

今回、/t/ の flap 発音についてネットで調べたていたら、似たようなことを書いているアメリカ人がいた。

- As a general rule: If you aren't sure, then use the proper "t."
For some words (e.g., "better"), ALL Americans flap the "t." But for some words, a proper/normal "t" is a sign of higher intelligence/education, or at least someone who takes more precise care with their speech. It's better to err on the side of being too proper than too sloppy.
http://www.antimoon.com/forum/t15437-15.htm

ついでに、/t/ の話とは違うが、私の使っている電子辞書は、異なる複数の発音がある場合、例えば advertisement は3つを示しているが、adult は語頭が schwa 「あいまい母音」で2つ目の音節に強勢が置かれる発音だけで、語頭の a- の発音が異なり強勢もここに置かれる発音は収録していない。

細かいことだが、こうした点をみると、やはり音声機能はオマケ程度なのか、まあないよりはいいが、と思ってしまう。

nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 0

コメント 4

∞子

的外れかもしれないのですが、
http://www.youtube.com/watch?v=CdOgNXwCUYE&list=PLEB6CD4CE4C06C76B
by ∞子 (2013-03-18 10:27) 

tempus fugit

Youtube にはいろいろ興味深い英語学習素材がありそうですね。 ∞子 さん、ありがとうございました。

by tempus fugit (2013-03-20 11:29) 

omiso

本ブログ、大変参考になります。
が、本エントリーに関しては、電子辞書の方が忠実なのでは、と思います。
nのあとに来るtはハッキリした発音になります。
一方で母音の後に来るtは筆者さんにとってのラリルレロに聞こえます。lot ofも同じで。”ろろゔ”となります。

つまり、変化球ではなく、収録されている音声が「標準」であると考えます。
by omiso (2014-04-26 21:47) 

tempus fugit

どちらか一方の発音しか辞書に収録されていないのはいかがなものか、というのが本編の主旨です。omisoさんが「標準」と考えている発音がわたしの言う「変化球」と同じであっても、それは全然構いません。どう呼ぶかの問題にすぎないと考えます。

私の考えは、これも本編に書きましたように、アメリカ英語のネイティブから「最初に”変化球”の発音を無理にマネするのは勧めない」とアドバイスを受けた影響が大きいと思います。また過去のエントリに書きましたように、音の響きとして、sloppyなアメリカ英語よりイギリス英語のRP発音の方がはるかに美しいと感じるという、個人的な感覚・好みも大きいと思います。このへんを差し引いて大目に見ていただければ幸いです。

by tempus fugit (2014-04-27 19:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

にほんブログ村 英語ブログへ
にほんブログ村← 参加中です
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...