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「たぶん」を意味する I think [注意したい単語・意外な意味]

何の変哲もない I think には、実は注意したい使い方がある。何回か取り上げたフレドリック・ブラウンの短編 The Star Mouse に、それを思い起こさせるくだりがあったので書き留めておきたい。

登場人物の科学者の言葉に出てくる。先日も書いたように、ドイツなまりがあることを、スペリングをわざと崩して表している(例えば w を /v/ と発音する、the をドイツ語の定冠詞 der にすることなど)。

それに沿って Mitkey と綴られている家のネズミ「ミッキー」を相手に(つまりひとりごとを言いながら)、製作中のロケットについて説明している場面である。ちょっと長くなるが引用しよう。

- "Und so, Mitkey, ve shall place this vane so-it iss only of assistance in der landing, in an atmosphere. It and these vill bring you down safely and slowly enough that der shock-absorbers in der movable combartment vill keep you from bumping your head too hard, I think." Of course, Mitkey missed the ominous note to that "I think" qualification because he missed all the rest of it. He did not, as has been explained, speak English. Not then.
(Fredric Brown: The Star Mouse)

「衝撃緩衝装置がついているから、着陸の時に頭をぶつけることはない」と言ったあとに、"I think" と付け足している。続けて「不吉な響きを帯びていた」とも書かれているが、この "I think" は、自信なさげなニュアンスを醸し出している。

日本語の「思う」は、「ほぼ間違いがないと確信している」場合にも、逆に「あんまり自信がない、不確かだ」という場合にも使う(と思う)。

奥ゆかしさを美徳とする日本人の伝統的な文化・国民性のためか、断定口調を避けた方が自然に響くこともあって、意味の範囲が広い「思う」は便利で、多用される傾向にある(と思われる)。

しかし、英語に同じような感覚を持ち込んで、あまりに "I think" を使うと、自信なさげに響いて逆効果になる(こともある)。「確信が持てない」ことを示す可能性があるからだ(ろう)。

私の持っている英和辞典で think を引くと、「ジーニアス」が、"I think (that)..." を成句として取り上げて「(発言を和らげたり、丁寧表現として)~と思う」と書いている。また「リーダーズ第2版」が、やはり成句として "I think" に「~でしょう(挿入または文尾で用いる」と説明している。

英語の辞典には、この I think についてもっと直截的な説明をしているものがあった。

- used in speech to reduce the force of a statement or opinion, or to politely suggest or refuse something
(New Oxford Dictionary of American English)

- used to make something you say sound less definite or more polite
(Oxford Advanced Learner's Dictionary)

- used when you are saying that you believe something is true, although you are not sure
Mary is in the garden, I think.
(Longman Dictionary of Contemporary English)

上記のように「リーダーズ」は、「挿入または文尾で使った場合」として取り上げているが、フレドリック・ブラウンの作中人物がまさに付け足しのように言っている例を読んだりすると、感覚的には文頭よりも文尾の方が「確信のなさ度」が大きいように思うが、どうだろうか。

ついでだが、think は古英語の thencan (思う)と thyncan (~のように思われる、見える)がいっしょになったもの、という記述が辞書にあった(「ジーニアス」など)。「確信が持てない」場合に使う think は、後者の名残りなのかもしれない。

こうしたことを書いたら、I think と「思う」について、以前日本語の側からちょっと触れていたことを思い出したので、参考までにあげておきたい。

過去の関連記事:
・「思う」と I think についてさらに思ったこと
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2007-12-01
・ちょっと気になった「思います」の連発
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2007-11-30

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コメント 1

るる

トラックバックありがとうございます。
しかも、とってもためになるトラックバックを頂けたのは、はじめてでした。

いつもスパムみたいなものしかなかったので。
私は、確信が持てない場合,
guessを使っています。

砕けた場所ではありますが。

by るる (2013-09-26 12:49) 

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