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kiss of death 「命取り」 (「007 ゴールドフィンガー」) [007 ジェームズ・ボンド]

このところ続けて面白い英語表現を拾っている007の映画「ゴールドフィンガー」については、かなり前に、主題歌に出てくる表現 midas touch を取り上げていたが、この名曲からもうひとつ、the kiss of death に触れておきたい。

シャーリー・バッシー Shirley Bassey がパンチの効いた声で歌い上げる主題歌は、いつ聞いてもしびれる。映画のヒットにも貢献したのではないかと思う。また個人的には、英語学習の初期に「ほとんどの歌詞が聞き取れる!」とうれしい体験をした、思い出のある歌である。



今回の表現は、その歌詞の中で、

- A golden girl knows when he's kissed her it's the kiss of death from Mr Goldfinger

として出てくる。

「死の接吻」という直訳からも想像がつくが、「身の破滅を招くもの」「致命的な行為・関係」「災いの種」を表す。定冠詞をつけて使う。

「リーダーズ第2版」は、「(一見ためになるようで)最終的には破滅をもたらすもの、かえってあだとなるもの、(政治的)ありがたくない方面からの(計略的な)候補者支持」、また「アンカーコズミカ」が、「最初、よさそうに見えて破滅(失敗)につながるもの」という説明をつけている。

今回おもしろいと思ったことが2つある。ひとつは、この表現について英語圏の辞書を見たら、

- Origin: 1945-50
(Dictionary.com Unabridged based on the Random House Dictionary)

- First Known Use: 1943
(Merriam-Webster's Online Dictionary)

とあったことだ。

この表現は新約聖書に由来するが、実際の使用がさかのぼれるのは、たかだかこの60~70年間だ、ということになる。おもしろいが、ほんとかね、とも思ってしまう。

元になっているのは、イエスを裏切る時のユダが、当局に「自分が接吻する相手がイエスだ」と合図を教え、その通りにゲツセマネの園 the garden of Gethsemane でイエスが逮捕されたというエピソード。「マルコ伝」に出てくる。

- Now the betrayer had given them a sign, saying, ‘The one I will kiss is the man; arrest him and lead him away under guard.’ So when he came, he went up to him at once and said, ‘Rabbi!’ and kissed him.
(Mark 14: 44-45)

上記は欽定訳 King James Version ではなく現代英語の版の引用だが、日本語ではやはり文語訳で読みたいところだ。

- 十二弟子の一人なるユダ、やがて近づきて来る、祭司長・学者・長老らより遣わされたる群衆、剣(つるぎ)と棒を持ちて之に伴う。イエスを売るもの、あらかじめ合図を示して言ふ、「わが接吻(くちづけ)をする者はそれなり、之を捕へて確(しか)と引きゆけ」 かくて来たりて直ちに御許(みもと)に往き、「ラビ」と言ひて接吻したれば、人々イエスに手をかけて捕ふ。
(日本聖書協会 マルコ伝福音書第14章43~46 原文は旧字体)

キリスト教徒でない私が、この「裏切りのキス」の話を印象づけられたのは、新約聖書ではなく、ミュージカルで映画にもなった「ジーザス・クライスト・スーパースター」 Jesus Christ Superstar である。この場面で、イエスはユダに向かって、

- Judas, must you betray me with a kiss?

と歌う。

昔、エルサレムを訪れた時に、オリーブ山とゲツセマネの園にも足を運んだ。もちろん当時とはまったく様子が違うだろうし、知らなければただの木立だと思ってしまうだろうが、ここから眺めた旧市街の光景とあわせて、「ここが聖書の舞台か」と、やはり印象的だった。

さて、もうひとつおもしろいのは、「通例おどけて」(ジーニアス大英和、アンカーコズミカ)、"informal, especially humorous" (OALD) といった注をつけている辞書があったことだ。シリアスな内容に使うものと思っていたが、そうばかりとも限らないらしい。

英語圏の辞典から語義をいくつか引用しよう。用例を見ると、前置詞は to や for が続くことがわかる。

- Something that is ultimately ruinous, destructive, or fatal: "Divorce was once a political kiss of death" (Ellen Goodman).
ETYMOLOGY: From the kiss by which Judas betrayed Jesus (Mark 14:44-46)
(American Heritage Dictionary)

- a fatal or destructive relationship or action: The support of the outlawed group was the kiss of death to the candidate.
(Random House Unabridged Dictionary)

- something that is ruinous
if this were known it would be the kiss of death for my political career
Type of: calamity, cataclysm, catastrophe, disaster, tragedy
an event resulting in great loss and misfortune
(Vocabulary.com)

- .(informal, idiomatic) Something that may seem good and favourable but that actually brings ruin to hopes, plans, etc. The role in the soap opera was the kiss of death for Ann's career as a theatrical actress.
(Wiktionary)

なお、Urban Dictionary には、基本的には同じ意味ながら、ギャングやマフィアで使われるとみられる用法など、いくつかおもしろい使い方が載っているので、興味のある人はご参照いただきたい。
http://www.urbandictionary.com/define.php?term=kiss%20of%20death

ところで kiss of death があるなら kiss of life という表現があるかというと、これがちゃんとある。次回はこちらををとりあげてみたい。

過去の参考記事
「ゴールドフィンガー」と Midas touch
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2008-06-24

タグ:聖書 音楽
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