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marginal note 「欄外の注」 (「詳註版シャーロック・ホームズ全集」) [シャーロック・ホームズ]

「不思議の国のアリス」の詳註本 The Annotated Alice について前回書いたが、私がすでに持っている annotated 本といえば「シャーロック・ホームズ全集」である。


The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories (2 Volume Set)

The New Annotated Sherlock Holmes 150th Anniversary: The Short Stories (2 Volume Set)

  • 作者: Arthur Conan, Sir Doyle
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
  • 発売日: 2004/11/30
  • メディア: ハードカバー

これまでも何回か書いてきたが、私はコナン・ドイルの「ホームズもの」が好きで、ベアリング=グールドという(ファンの間では高名な)ホームズ研究家が1967年に著した詳註版の翻訳を持っている。全10巻の文庫本で、残念ながら絶版のようだが、折にふれて拾い読みして楽しんでいる。


詳注版シャーロック・ホームズ全集 (1) (ちくま文庫)

詳注版シャーロック・ホームズ全集 (1) (ちくま文庫)

  • 作者: コナン・ドイル
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 文庫


原作の舞台であるヴィクトリア朝イギリスの事物文物の説明のほか、ホームズの手がけた事件が起きた日を、文中の手がかりを元に推定したり(もちろん「事件」はフィクションなのに、である)、作品の中に見られる矛盾や作者のミスあるいは勘違いを指摘したりと、「オタッキー」というべき注釈だが、ファンにはこたえられない内容だ。

原著も絶版だと思うが、10年ほど前、別の研究家による「新・詳註版」 The New Annotated Sherlock Holmes が出た。短編を2巻、長編を1巻にまとめた、装丁も価格も重厚な全集だが、意を決して購入してしまった(現時点で翻訳は出ていないようだ)。これも今は拾い読みをしているだけで、通読するのは定年退職後の楽しみに取っている。

「詳註版アリス」同様、この「新・詳註版ホームズ全集」も、Amazon の「中身を閲覧する」を見るとわかるように、ページのうち本文以外のスペースを大きく取って、小さめの活字でぎっしりと注を載せている。欄外の注が、本文よりずっと長大な部分を占めているところもある。

そして、この「新・詳註版」についての紹介や書評をネットで読んでいたら、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の "Putting Sherlock Holmes Under a Magnifying Glass" という記事に、この「欄外の注」にあたる英語があった。ちょっと長いが引用しよう。

- The stories are set in a single column of black type, with exegetical notes in a parallel outer column. The information they contain ranges from the amusing to the ludicrously literal-minded. We are solemnly told, for example, the number of times in the whole canon that Holmes is recorded as laughing (292, since you ask). When Holmes says that he will be eating "oysters and a brace of grouse, with something a little choice in white wines," the marginal notes cite "Dining With Sherlock Holmes" by Julia Carlson Rosenblatt and Frederic H. Sonnenschmidt.
http://online.wsj.com/article/SB113235611083201878.html

私は note in the margin は思いつくが、形容詞を使った marginal note は出てこない(なお margin では前置詞は in のほか on も使われるようだ)。marginal を最初に「限界に近い」「ぎりぎりの」「十分な能力がない」の意味で覚えたためかもしれない。考えてみれば何ということはない表現だが、何だか新鮮だった。

「余白」「欄外」を margin ということについては、以前取り上げたことがある。そのエントリを読み返すと marginalize については書いているが、marginal には触れておらず、関心の幅が狭かったことと痛感する。

ついでなので、上記の引用に出てきた他の単語について少し書こう。

canon は文字通りには「規範、法規」「(聖書の)正典」ということだが、これも以前取り上げたことがあるように、ホームズ物語では、コナン・ドイルが書いた長編・短編を指す。現代に至るまで、ドイル以外の作者もホームズものを書いているから、原作者のオリジナル作品を別格扱いにする必要があるわけだ。

exegetical (または exegetic) は知らなかった単語で、「評釈の、解釈の」という意味、これも聖書について使われる言葉だと辞書にある。

「欄外の注」に戻って、上記の記事ではこの表現がもうひとつ使われていた。

- There is also learned speculation about which London clubs Dr. Watson belonged to, this time citing "The Clubbable Watson" by Dean Dickensheet. And when in "The Hound of the Baskervilles" Holmes mentions analogous incidents, among them "the Anderson murders in North Carolina," the marginal note says that "possibly Holmes meant South Carolina" and takes 13 lines to explain why.

また、前回取り上げた「詳註版アリス」についてのネットの記事を読んでいたら、やはり marginal を使った文があった。

- Marginal commentaries of texts are not new; they have been with us for centuries, particularly commentaries on the Bible.
http://www.squidoo.com/the-annotated-alice

参考記事:
「余白」「欄外」 margin
「緋色の研究」(あるいは「習作」)のこと
「おたく」と otaku

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