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snake oil 「ニセ薬」「でたらめ」 [英語文化のトリビア]

先日取り上げた、theriac 「古代の抗毒剤」「万能薬」と placebo 「偽薬」からの連想で、snake oil について書きたい。「何にでも効くというふれこみのインチキな薬」という意味である。

- 1.(特に行商人の売り歩く、万病に効くという)怪しげな水薬(主に medicine show で売られた)
2.(俗)当てにならない話(行動)、ほら、でたらめ
The governor promised to lower taxes, but it was the same old snake oil. 知事は減税すると約束したが、それはいつもの嘘八百だった
(ランダムハウス英和大辞典)

上記の定義に出てくる medicine show は、「特に1800年代末に薬の行商人が特効薬や売薬の宣伝・販売のために街角や広場などで行った演芸」(ランダムハウス)のことだそうだ。

おもしろいのは、まさに "Snake Oil" と書かれた古風なラベルの画像がネット上でいくつも見つかることだ。つまり、この名をつけた商品が実際にあったらしい。

そうした文化的背景は私の持っている英和辞典の記述からはわからなかった。またネットを含め英語圏の辞書もいくつか見たが、上記のような定義しか載っていない。Wiktionary には下記のような多少詳しい説明があった。

- snake oil (uncountable)
1.A traditional Chinese medicine used to treat joint pain.
2.A type of 19th century patent medicine sold in the United States that claimed to contain snake fat, supposedly a Native American remedy for various ailments.
3.(idiomatic) A fraudulent, ineffective potion or
nostrum; panacea.
4.(idiomatic) Any product with exaggerated marketing but questionable or unverifiable quality.

つまり、関節痛 joint pain を直すために古くから使われていた中国の薬であり、また、19世紀にアメリカで売られていた、ネイティブ・アメリカン由来とみられるヘビの脂を含むパテント薬、ということらしい。今となっては単に「怪しげな水薬」と片付けられる言葉だが、その昔は実際に売られていて、大まじめに手にした人もいたのだろう。

Wikipedia を見たら、このあたりのことがさらに詳しく書かれていた。1917年にアメリカ政府がこうした商品のひとつについて行った成分分析の結果も載っている。ヘビに関わる物質は発見されず、訴えられた業者は敗訴、ここから「インチキ薬」の同義語に、また snake-oil salesmen が「ニセモノを売る人」を意味するようになった、ということだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Snake_oil

続いて、オンラインの Wordnik が載せていた実例から。

- “We, as taxpayers, are not buying their snake-oil in the form of his pretty speeches but higher taxes and a 1000+ health care bill.”
Evening Buzz: Racism Fueling the Anger at Pres. Obama?

-“And he makes virtually every Republican today look like snake-oil salesmen.”
CNN Poll: Obama approval under 50 percent

ところで snake oil で連想したのは日本の「ガマの油」である。ネットで調べてみると、ガマガエルの分泌液には実際に薬効があるということだが、実際には昔売られていた薬にはその成分は含まれておらず、ガマに似た顔をした住職がよく効く軟膏を使っていたという伝説が名前の由来であるとする記述もあって、どうもよくわからない。

余談だが、「007は二度死ぬ」の原作 You Only Live Twice について以前触れたことがあるが、その後、ペーパーバックで通読した。やはり映画同様、摩訶不思議な「ニッポン」があちらこちらに顔をのぞかせる作品だったが、その中で、ガマガエルに電気ショックを与えて油を出させ、それをトカゲの粉末と混ぜて強力な精力剤を作るという場面があって、のけぞってしまった。

200px-FlemingYOLT.jpgしかし、ガマの油もトカゲも確かに古来より精力剤として使われてきたらしく、むしろ作者イアン・フレミングは日本をしっかり取材していたというべきかもしれない。ついでだが、You Only Live Twice の初版本の表紙には、ガマガエルが描かれている。

余談に輪をかけると、007映画が50周年を迎えたことにあわせて、去年暮れから007シリーズの原作を発表順に読んでいたが、先日全巻読み終わった。同じような表現や単語があちこちに出てくることがあり(一例としてヘアスタイルに使われた comma について以前取り上げたことがある)、作者のお気に入りやクセなのだろうかと思ったりする。

参考記事: 
「タイム」の誤報? ジェームズ・ボンドと芭蕉
007と芭蕉(続き) 
007のヘアスタイルと comma of hair という表現

「特効薬」あれこれ (magic bullet, silver bullet)
「万能薬」さまざま (panacea, elixir, cure-all)
「万能薬」続き (catholicon, nostrum)
charlatan 「はったり屋」「ペテン師」

You Only Live Twice

You Only Live Twice

  • 作者: Ian Fleming
  • 出版社/メーカー: Penguin
  • 発売日: 2009/07/02
  • メディア: ペーパーバック

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