panache 「かっこよさ」「風格」 [単語・表現]
週末コンビニに寄った際、某ビールメーカーが「パナシェ」というアルコール飲料を売り出したことを知った。缶に書かれている panache は、「貫禄」とか、少し前に流行った「品格」などと訳すことができる単語だ。
家に帰って自分の学習メモを見返したら、次のような実例を書きとめていた。1つ目は、以前取り上げたことがあるビートルズについてのペーパーバックからで、Brian とはマネージャーのブライアン・エプスタインのこと。
- Brian would demonstrate that for all his panache and urban affectations, he was still only a twenty-seven-year-old furniture salesman from a provincial city.
(Peter Brown : The Love You Make: An Insider's Story of the Beatles)
- They lack the caprice and 'thoughtless' panache of Parisian composers.
(Peter Williams: The Life of Bach)
英和辞典には、下記のような訳語が載っている。なお発音だが、最初の a はあいまい母音 schwa で強勢は第2音節にあり、フランス語由来(「羽」の意)とあって ch は sh 音、最後の e は発音されないので、「パナアシ」という感じになる。
- 堂々たる(貫禄のある)態度、誇示;気迫;尊大な態度;品格
professional panache (医師・弁護士などの)専門家としての貫禄
The actor who would play Cyrano must have panache.
シラノを演じようとする俳優には堂々として貫禄がなくてはならない.
(ランダムハウス英和大辞典)
- 堂々とした態度、華々しさ;みせびらかし、気取り
She played the piano with great panache. ピアノを華やかに弾いた.
(ジーニアス英和大辞典)
- 堂々たる態度、さっそうとしたふるまい、威風、派手さ
(リーダーズ第2版)
なお原意に沿った「帽子などの羽飾り」も指す。
「品格」といえば、dignity, class, grace などが頭に浮かぶが、上記のような他の訳語を読むと、panache は「優しい品の良さ」というより、もっと強さや派手さを示す言葉のように感じる。ついでに連想で、「威風堂々」 pomp and circumstance という表現を以前取り上げたことがあるので付記しておきたい。
panache のニュアンスをさらに掴むには、英英辞典を見たほうがよさそうだ。抽象度が高い意味なので手強そうだが、学習英英辞典は、
- (U) the quality of being able to do things in a confident and elegant way that other people find attractive
(Syn) flair, style
(OALD)
- a stylish, original, and very confident way of doing things that makes people admire you:
The orchestra played with great panache.
He dressed with panache.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
などと、さすがにわかりすく説明している。一方、非ネイティブに容赦がないのは、
- dash or flamboyance in style and action: verve
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- a dashing manner; style; swagger
(Collins English Dictionary)
などで、説明に使われている単語を知らないと辞書を見てもお手上げ、という感じだ。
余談だが、ここにある verve といえば、ジャズのファンにとってはレコードのレーベル「ヴァーヴ」の名前として知らぬ人はいないほど有名で、私もそれがきっかけで覚えた。英和辞典には「(芸術作品などに見られる)熱情、気迫;活気」などとある。
ところで、冒頭にアルコール飲料の「パナシェ」のことを書いたが、調べているうちに実はこれは今回取り上げた panache ではなく、最後の e にアクサン・テギュがつく別の単語 panaché にちなむものであることを知った。
こちらの単語は、語尾がはっきりと「エ」で発音される。辞書を見ると、「(料理を)混ぜあわせた、盛り合わせの」という形容詞で、salade panaché 「ミックスサラダ」、glace panaché 「ミックスアイスクリーム」という例があげられていた。
そしてアルコール好きの私なのに知らなかったのだが、ビールとレモネードでつくるカクテルも指すという。今回見つけて飲んだ「パナシェ」は、発泡酒とレモンを混ぜあわせたもの。メーカーがめんどうくさいと考えたのか、缶の表記にはアクサン記号はつけていない。
もうひとつ余談で冒頭に書いた「品格」だが、一時期流行した頃は、この言葉をタイトルに使った本が続々と出たことを思い出す。最初のベストセラー本にあやかって「柳の下のドジョウ」を狙ったのは明々白々で、品のないこと甚だしいと思ったが、売るためにはそんなことにはかまっていられないのだろう。
流行のきっかけになった、その「国家の品格」は、英語の対訳本には The Dignity of the Nation という題がつけられている。私も読んだが、内容はともかく英語についてはいろいろ勉強になったという記憶がある。家のどこかにあるはずだが見つからなかった。
参考記事:
・「威風堂々」 Pomp and Circumstance とイギリスの愛国歌
・ビートルズの biography 読了
家に帰って自分の学習メモを見返したら、次のような実例を書きとめていた。1つ目は、以前取り上げたことがあるビートルズについてのペーパーバックからで、Brian とはマネージャーのブライアン・エプスタインのこと。
- Brian would demonstrate that for all his panache and urban affectations, he was still only a twenty-seven-year-old furniture salesman from a provincial city.
(Peter Brown : The Love You Make: An Insider's Story of the Beatles)
- They lack the caprice and 'thoughtless' panache of Parisian composers.
(Peter Williams: The Life of Bach)
英和辞典には、下記のような訳語が載っている。なお発音だが、最初の a はあいまい母音 schwa で強勢は第2音節にあり、フランス語由来(「羽」の意)とあって ch は sh 音、最後の e は発音されないので、「パナアシ」という感じになる。
- 堂々たる(貫禄のある)態度、誇示;気迫;尊大な態度;品格
professional panache (医師・弁護士などの)専門家としての貫禄
The actor who would play Cyrano must have panache.
シラノを演じようとする俳優には堂々として貫禄がなくてはならない.
(ランダムハウス英和大辞典)
- 堂々とした態度、華々しさ;みせびらかし、気取り
She played the piano with great panache. ピアノを華やかに弾いた.
(ジーニアス英和大辞典)
- 堂々たる態度、さっそうとしたふるまい、威風、派手さ
(リーダーズ第2版)
なお原意に沿った「帽子などの羽飾り」も指す。
「品格」といえば、dignity, class, grace などが頭に浮かぶが、上記のような他の訳語を読むと、panache は「優しい品の良さ」というより、もっと強さや派手さを示す言葉のように感じる。ついでに連想で、「威風堂々」 pomp and circumstance という表現を以前取り上げたことがあるので付記しておきたい。
panache のニュアンスをさらに掴むには、英英辞典を見たほうがよさそうだ。抽象度が高い意味なので手強そうだが、学習英英辞典は、
- (U) the quality of being able to do things in a confident and elegant way that other people find attractive
(Syn) flair, style
(OALD)
- a stylish, original, and very confident way of doing things that makes people admire you:
The orchestra played with great panache.
He dressed with panache.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
などと、さすがにわかりすく説明している。一方、非ネイティブに容赦がないのは、
- dash or flamboyance in style and action: verve
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- a dashing manner; style; swagger
(Collins English Dictionary)
などで、説明に使われている単語を知らないと辞書を見てもお手上げ、という感じだ。
余談だが、ここにある verve といえば、ジャズのファンにとってはレコードのレーベル「ヴァーヴ」の名前として知らぬ人はいないほど有名で、私もそれがきっかけで覚えた。英和辞典には「(芸術作品などに見られる)熱情、気迫;活気」などとある。
ところで、冒頭にアルコール飲料の「パナシェ」のことを書いたが、調べているうちに実はこれは今回取り上げた panache ではなく、最後の e にアクサン・テギュがつく別の単語 panaché にちなむものであることを知った。
こちらの単語は、語尾がはっきりと「エ」で発音される。辞書を見ると、「(料理を)混ぜあわせた、盛り合わせの」という形容詞で、salade panaché 「ミックスサラダ」、glace panaché 「ミックスアイスクリーム」という例があげられていた。
そしてアルコール好きの私なのに知らなかったのだが、ビールとレモネードでつくるカクテルも指すという。今回見つけて飲んだ「パナシェ」は、発泡酒とレモンを混ぜあわせたもの。メーカーがめんどうくさいと考えたのか、缶の表記にはアクサン記号はつけていない。
もうひとつ余談で冒頭に書いた「品格」だが、一時期流行した頃は、この言葉をタイトルに使った本が続々と出たことを思い出す。最初のベストセラー本にあやかって「柳の下のドジョウ」を狙ったのは明々白々で、品のないこと甚だしいと思ったが、売るためにはそんなことにはかまっていられないのだろう。
流行のきっかけになった、その「国家の品格」は、英語の対訳本には The Dignity of the Nation という題がつけられている。私も読んだが、内容はともかく英語についてはいろいろ勉強になったという記憶がある。家のどこかにあるはずだが見つからなかった。
参考記事:
・「威風堂々」 Pomp and Circumstance とイギリスの愛国歌
・ビートルズの biography 読了
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