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「エコノミスト」誌の見出しに学ぶトリビア [英語文化のトリビア]

最近の「エコノミスト」 The Economist 誌で、「英語文化の常識」にちなんだタイトルや見出しが立て続けに目にとまった。

英文メディアは、英語圏や欧米の歴史、文学、映画、音楽などをもじって記事のタイトルなどに使うことがよくある。その「元ネタ」に気づくことができるようになるのも、英語学習のおもしろさや励みのひとつだ。

Economist20130615.jpg「エコノミスト」の6月15日号の表紙には、世界地図が映った大きな瞳と "i-spy" という文字が描かれている。カバーストーリーは、昨今アメリカで騒ぎになっている、情報機関による個人情報の収集問題だ。
http://www.economist.com/printedition/2013-06-15

この見出しを目にして、いくつかのことを考えた。i とは information あるいは international のことか。アップルの iPhone や iPod の i は internet とか individual などいくつかの意味をかけてあるということだが、それにならったものだろうか。

・・・というのは後で考えたもので、私がこの見出しを見て瞬間的に頭に浮かんだのは、1960年代のテレビドラマで10年ほど前に映画にもなった I Spy だった。これをもじったものであることは、ほぼ間違いないように思う。

さて、1か月ほど前、「エコノミスト」誌が安倍総理をカバーストーリーにしたことを取り上げたが、この号ではその続報が載っている。

あの時の表紙絵にはスーパーマンの格好をして空を飛んでいる安倍総理が描かれていたが、今回の記事のタイトルは "Not so super" で、失速して空から落ちそうになっている安倍スーパーマンのイラストがついている。いうまでもなく、最近の株価や為替の乱高下などで「アベノミクス」に対する不安要因が頭をもたげてきたことを受けたものだ。

この記事の中に出てくる小見出しは、次のようになっている。

- Get back into that telephone booth and change clothes

ご存知の方はピンと来るはずだが、これもやはりスーパーマンにかけたもの。緊急事態が持ち上がったときにクラーク・ケントは公衆電話のボックスに飛び込んでスーパーマンに変身する。

「エコノミスト」は、自分たちの読者層は公衆電話を知っているととらえているのだろうが、電話といえば携帯という世代が増えると、こうした「常識」も変わっていくかもしれない。

いやそれより、1970年代後半のクリストファー・リーブ主演の映画では、近くの電話ボックスで変身しようとしたら、中にいる人の姿が外から見えるタイプだったので、仕方なく回転ドアを利用してスーパーマンになるシーンがあったと記憶する。変身アイテムとしての電話ボックスは当時から危機に瀕していたことになる。

近く Man of Steel というタイトルでリメイク reboot されるスーパーマンだが、変身シーンはどうなるのであろうか。

余談が過ぎたが、同じ号には、"Look who’s listening" "Brum fly with me" "Start me up" "Planet of the apes" "Bluesooth" というタイトルのついた記事がある。

それぞれ、look who's talking (「君も人のことは言えないだろう」「よく言うよ」)というイディオム、Come Fly with Me というスタンダード・ナンバー、ローリング・ストーンズのヒット曲、小説・映画の「猿の惑星」、パソコンの「ブルートゥース」にかけたものだろう。

続いて、最新の6月23日号の見出しを見る。
http://www.economist.com/printedition/2013-06-22

"An inconvenient truth" "A few good men" "Singin’ in the rain" は、アル・ゴア元副大統領のドキュメンタリー「不都合な真実」、トム・クルーズ主演の映画とその原作のタイトル、スタンダード・ナンバーの「雨に唄えば」、をそれぞれ使ったものだろう。

また "Thunderbirds are gone" は、何回か取り上げたことがあるイギリスのドラマ「サンダーバード」に出てくる言葉の変形。元のセリフ "Thunderbirds are go!" については、「動詞ではない go」として以前書いたことがある

また、"Between a rock and a lawsuit" は、これも以前取り上げた between a rock and a hard place (絶体絶命)というイディオムをもじったものだと思うが、どうだろうか。

ほかにも、それらしい見出しがあるが、全部を調べている余裕がない。ためしに怪しいとにらんだ "Dropped stitches" と "Snakes and ladders" をネットで見たら、まさにそうであった(説明は省く)。

さて今回、「エコノミスト」誌がこうした「英語圏の文化的常識」を利用したタイトルを連発しているのを見て、ちょっと複雑な気持ちになった。

英文メディアは、こうした手法によって読者や視聴者の目を引こうとするわけで、最初に書いたように、下敷きとなっている事柄がわかるとうれしく感じ、学習の励みになる。

しかし一方で、気がつかないものも多いはずだ。非ネイティブスピーカーにとって、すべてがわかるわけではないのがくやしいところである。

さらに、ネイティブが「自分たちの文化の常識」を非ネイティブにおかまいなく使うことがある、という現実をつきつけられたのも今回複雑な気持ちになった理由だ。英語がいくら国際語となろうが、その文化的背景と切り離して存在することはありえない。

しかし、後ろ向きにとらえていても仕方がない。こうした「トリビア」を、ひとつひとつ解明していくプロセスを楽しみながら、今後も英語とつきあっていこうと思っている。

参考記事:
elbow aside 「押しのける」 (英誌「エコノミスト」の安倍首相特集)
動詞ではない go (アポロ計画とTVドラマ「サンダーバード」)
「絶体絶命」その他のイディオム

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