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gibberish 「ちんぷんかんぷん」(映画「ブレードランナー」) [映画・ドラマと英語]

前回に続き「わけのわからない言葉」を表す単語を取り上げる。私がまず頭に思い浮かべるのは gibberish である。ハリソン・フォード主演の「ブレードランナー」 で覚えたものだ。

学生時代に初めて観た時は、映画自体がまさに「ちんぷんかんぷん」だったが、しばらくすると「また観たい」と思うようになる、不思議な魅力がある作品だ。

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gibberish は、全編に流れるハリソン・フォードのナレーションの中に出てくる。この語りは、試写段階で「わけのわからない作品」という声があがったため、公開に向けて急きょ付け加えられたものだそうだ。しかしのちに作品がカルト的な人気を得たことを受けて、リドリー・スコット監督は、これをすべて削除して最終版としてビデオで出した。

そして今は、ナレーションの入った最初の版も、DVDで復活して手に入るようになった。


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映画が始まってすぐ、ハリソン・フォード演じるくたびれた中年男 Deckard が登場する。元は腕ききの捜査員だった彼は、かつての上司 Bryant が差し向けた刑事から声をかけられる。

わけのわからない不思議な言葉をしゃべるその刑事 Gaff に、Deckard は「人違いだろ」としらを切るが、結局はいっしょに警察署に向かう。そこに次のような語りが流れる。

Deckerd: The charmer's name was Gaff. I'd seen him around. Bryant must have upped him to the Blade Runner unit. That gibberish he talked was Cityspeak, gutter talk, a mishmash of Japanese, Spanish, German, what have you. I didn't really need a translator. I knew the lingo, every good cop did. But I wasn't going to make it easier for him.
(Blade Runner)

お気に入りの映画なので、日本語にするなら直訳や逐語訳 verbatim からちょっと離れてみたい。例えばこんな感じはどうだろうか―

「このいかれた野郎は顔見知りのガフだ。ブライアントが特捜に引き抜いたのに違いない。こいつがしゃべっていたヘンテコな言葉はシティスピークで、日本語とかスペイン語とかドイツ語とかがごちゃまぜになっている。奴が何て言ったのか、誰かに教えてもらわなくても実はちゃんとわかってる。警官をやってりゃ誰だって知ってる街の言葉だ。ただガフの野郎に甘い顔をするつもりはないから、とぼけてみたってわけだ」

・・・うーん、なかなか難しいものだ。英語の解釈もこれでいいのだろうか。

脱線したが、もうひとつ、以前取り上げたSF小説「ゴールデン・フリース」にもこの言葉が出てきて、印をつけていた。

- "But you can hardly be objective about what effect these things--especially your guilt over Diana's death--have had on your ability to think rationally."
"Oh, I'm thinking rationally all right. You're the one who's talking gibberish."
(Robert J. Sawyer: Golden Fleece) 

英語の辞書がどのように説明しているか確かめてみよう。

- spoken or written words that have no meaning: I was so nervous, I just started talking gibberish.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary & Thesaurus)

- Unintelligible or nonsensical talk or writing.
2 a. Highly technical or esoteric language. b. Unnecessarily pretentious or vague language.
(American Heritage Dictionary)

ところで「リーダーズ英和辞典」を見たら、talk Greek [Hebrew, gibberish] というイディオムに、「唐人の寝言のような[わけのわからない]ことをしゃべる」という訳語をあてていた。

Greek (It's all Greek to me. でおなじみか)そして Hebrew にあわせて、同じく外国人である「唐人(の寝言)」といういささか古い言い回しをもってきたのだろうが、「わけのわからない」の方を2次的な扱いにしてカッコに入れても何だか納得させられてしまうのは、さすが老舗の研究社というべきか。しかし若い人たちにとっては、「唐人の寝言」こそ、「わけのわからない」「ちんぷんかんぷん」なものかもしれない。

gibberish の語源については、次のような記述がある。

- Probably from gibber, to speak unintelligibly (of imitative origin) + -ish
(American Heritage Dictionary)

- ca. 16th century. Either an onomatopeia, imitating to the sound of chatter, probably influenced by jabber, or derived from the root of the Irish gob ("the mouth").
(Wiktionary)

gibber は「早口で話す」「ぺちゃくちゃしゃべる」「サルなどがキャッキャと叫ぶ」という動詞だが、jabber も同じ意味で、関係があるようだ。擬声語らしいというのもうなずける。そういえば jabberwocky という単語もあり、あらためて調べてみたい。

(追記)書き忘れていたことをひとつ。gibberish は「ジ-」の音で私は覚えたのだが、今回あらためて辞書をひいたら、「ギ-」という発音も載っていた。gibber も同様である。ついでに書くと、綴りの似た Gipper (レーガン大統領のニックネーム)を以前取り上げたことがあるが、固有名詞のこちらは「ギ-」である。

関連記事:
・「ゴールデン・フリース」 ("Golden Fleece" by Robert J. Sawyer) 
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-01-14
・レーガン大統領の英語に学ぶ
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2008-06-19


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タグ:SF
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コメント 2

znnn84

tempus fugitさん、はじめまして。
いつも、高度で中身の濃い英語の話題、
ありがとうございます。
大変勉強になります。
by znnn84 (2013-08-03 21:01) 

tempus fugit

znnn84 さん、仕事のかたわら少しずつ書いているので、もっとしっかり調べられたらなあと思うこともしばしばですが、今後も出来る範囲で続けていこうと思っています。励みになります。ありがとうございました。
by tempus fugit (2013-08-04 11:32) 

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