reply with uninterested yeses and noes 「気のない返事」 (ハメット「マルタの鷹」) [読書と英語]
家のガラクタを整理していたら、昔作った学習ノートがひょっこり出てきた。見返すと、いまも身についていない単語や文法の注意事項があってなかなか新鮮だ。今回は、これにメモしていた表題の表現を紹介する。
当時のノートには出典を書かないことが多かったが、これについては「マルタの鷹」であることは文の内容から、また記憶からも明らかだ。ダシール・ハメットが書いたハードボイルドの名作である。
メモしていたのは下記の通りで、主人公の私立探偵サム・スペードがタクシーに乗っている場面の描写である。
- Spade stared ahead at nothing and thereafter, until the chauffeur tired of making conversation, replied with uninterested yeses and noes.
(Dashiell Hammett: The Maltese Falcon)
この部分を抜き書きしたペーパーバックはすでにどこかへ行ってしまったが、それよりずっと前、高校生か大学生の時に読んだ翻訳の文庫本はまだ本棚の隅にあった。ページを繰ってみると、次のように訳されていた。
- スペードは前方をジッと見つめた。それからは運転手が話しかけることにあきるまで、気のない調子で「そうだ」とか「いや」とか答えた。
(角川文庫、絶版)
「マルタの鷹」といえば、原書のタイトルを目にした時、「そうか、マルタの形容詞は Maltese というんだ」と印象的に思い、調べたら犬のマルチーズはまさにマルタ島と関係があると知ったことを今でも覚えている。
しかしそのペーパーバックは、拾い読み状態になり、最後まで読み通すことができなかった。意味が取れない言葉(たぶんスラング)があったり、むしろそれ以前に英語力の問題もあったりしたのだろうが、それと同時に、読んでいてあまりおもしろいと思えなかったと記憶している。そういえばハンフリー・ボガート主演の映画もビデオで見た記憶はあるが、具体的なことは覚えていない。
また、村上春樹による新訳が出て近年話題のレイモンド・チャンドラー Raymond Chandler の作品も、同じ頃原書に挑戦したが、やはり結局拾い読みしただけで終わった。
どうやら自分はサム・スペードやフィリップ・マーロウの棲むハードボイルドの世界とは縁がなかったということだろう。今だったらどうだろうか、久しぶりに見つけた「マルタの鷹」の翻訳を読みなおしてみようか。
英語の話に戻ると、上記の英文にあるように、「yes という返事」という意味の名詞は複数形が yeses、no の場合は noes あるいは nos となる。
しかしネットで検索すると、yes's とか no's を使っている例が非常に多い、というより(私の検索の方法がまずいのかもしれないが)正しい形の方が少数派といえるくらいである。「yes の正しい複数形はどれか」という質問も見つかるので、ネイティブでもとまどうということか。
ところで、以前書いたことがあるように、私はおもしろいと思った単語や表現、あるいは注意したい文法事項や語法をノートやカード、その後は電子ファイルに次々とメモして、自分なりの活用方法を考えて学習してきた。
手書き時代のノートで今も残っているものは少ない。今回見つけたのは十数年前に作ったもののようで、手書きからテキストファイルのメモに切り替えつつある時期だったと思う。パソコンを使うようになってからも、手で書いたほうが記憶に残るのではというアナログ世代の発想で、かなりの間ノートを引き続き使っていた。
こうしたノートにメモする単語・表現の実例は、はじめは短文・単文だけを抜き出していたが、そのうちに文脈が分かるように前後を含めて写すようになった。それはパソコンに移行してからも続いた。
しかしいつ頃からか、こうした手間をかけることはなくなってしまった。本を読んでいて、気になったところに印をつけるのは昔と変わらないが、あとでまとまって写すことはせず、テキストファイルに単語や表現と、出てきたページを書くだけだ(ネットの文章は、これまで同様、まとまった部分をコピペしてURLといっしょに保存しているが)。
そしてノートにメモした言葉を見返して、さらに確かめたくなったら原本を見返す、というやり方になっているが、これでは英語力は向上しそうにない。ものぐさ度が増したこともあるが、年齢的に人生の折り返し点をとうに過ぎて、英語そのものの学習に割く時間がもったいないと思うようになったことが大きいのだろう。
今回見つけたノートを眺め、まとまった英文を手書きで筆写していたのを見ると、けっこう熱心だったのだなとわれながら感心する。やはり英語学習は、意欲がある時にまとまったエネルギーを傾けて集中的に行うべきものだろうな、と年寄りじみた考えをしばし巡らせた次第である。
参考記事:
・私流「英語学習ノート」のつくり方と利用法
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22
当時のノートには出典を書かないことが多かったが、これについては「マルタの鷹」であることは文の内容から、また記憶からも明らかだ。ダシール・ハメットが書いたハードボイルドの名作である。
The Maltese Falcon (Crime Masterworks)
- 作者: Dashiell Hammett
- 出版社/メーカー: Orion (an Imprint of The Orion Publishing Group Ltd )
- 発売日: 2002/03/21
- メディア: ペーパーバック
メモしていたのは下記の通りで、主人公の私立探偵サム・スペードがタクシーに乗っている場面の描写である。
- Spade stared ahead at nothing and thereafter, until the chauffeur tired of making conversation, replied with uninterested yeses and noes.
(Dashiell Hammett: The Maltese Falcon)
この部分を抜き書きしたペーパーバックはすでにどこかへ行ってしまったが、それよりずっと前、高校生か大学生の時に読んだ翻訳の文庫本はまだ本棚の隅にあった。ページを繰ってみると、次のように訳されていた。
- スペードは前方をジッと見つめた。それからは運転手が話しかけることにあきるまで、気のない調子で「そうだ」とか「いや」とか答えた。
(角川文庫、絶版)
「マルタの鷹」といえば、原書のタイトルを目にした時、「そうか、マルタの形容詞は Maltese というんだ」と印象的に思い、調べたら犬のマルチーズはまさにマルタ島と関係があると知ったことを今でも覚えている。
しかしそのペーパーバックは、拾い読み状態になり、最後まで読み通すことができなかった。意味が取れない言葉(たぶんスラング)があったり、むしろそれ以前に英語力の問題もあったりしたのだろうが、それと同時に、読んでいてあまりおもしろいと思えなかったと記憶している。そういえばハンフリー・ボガート主演の映画もビデオで見た記憶はあるが、具体的なことは覚えていない。
また、村上春樹による新訳が出て近年話題のレイモンド・チャンドラー Raymond Chandler の作品も、同じ頃原書に挑戦したが、やはり結局拾い読みしただけで終わった。
どうやら自分はサム・スペードやフィリップ・マーロウの棲むハードボイルドの世界とは縁がなかったということだろう。今だったらどうだろうか、久しぶりに見つけた「マルタの鷹」の翻訳を読みなおしてみようか。
英語の話に戻ると、上記の英文にあるように、「yes という返事」という意味の名詞は複数形が yeses、no の場合は noes あるいは nos となる。
しかしネットで検索すると、yes's とか no's を使っている例が非常に多い、というより(私の検索の方法がまずいのかもしれないが)正しい形の方が少数派といえるくらいである。「yes の正しい複数形はどれか」という質問も見つかるので、ネイティブでもとまどうということか。
ところで、以前書いたことがあるように、私はおもしろいと思った単語や表現、あるいは注意したい文法事項や語法をノートやカード、その後は電子ファイルに次々とメモして、自分なりの活用方法を考えて学習してきた。
手書き時代のノートで今も残っているものは少ない。今回見つけたのは十数年前に作ったもののようで、手書きからテキストファイルのメモに切り替えつつある時期だったと思う。パソコンを使うようになってからも、手で書いたほうが記憶に残るのではというアナログ世代の発想で、かなりの間ノートを引き続き使っていた。
こうしたノートにメモする単語・表現の実例は、はじめは短文・単文だけを抜き出していたが、そのうちに文脈が分かるように前後を含めて写すようになった。それはパソコンに移行してからも続いた。
しかしいつ頃からか、こうした手間をかけることはなくなってしまった。本を読んでいて、気になったところに印をつけるのは昔と変わらないが、あとでまとまって写すことはせず、テキストファイルに単語や表現と、出てきたページを書くだけだ(ネットの文章は、これまで同様、まとまった部分をコピペしてURLといっしょに保存しているが)。
そしてノートにメモした言葉を見返して、さらに確かめたくなったら原本を見返す、というやり方になっているが、これでは英語力は向上しそうにない。ものぐさ度が増したこともあるが、年齢的に人生の折り返し点をとうに過ぎて、英語そのものの学習に割く時間がもったいないと思うようになったことが大きいのだろう。
今回見つけたノートを眺め、まとまった英文を手書きで筆写していたのを見ると、けっこう熱心だったのだなとわれながら感心する。やはり英語学習は、意欲がある時にまとまったエネルギーを傾けて集中的に行うべきものだろうな、と年寄りじみた考えをしばし巡らせた次第である。
参考記事:
・私流「英語学習ノート」のつくり方と利用法
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22
タグ:英語学習
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