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滝川クリステルさんの「おもてなし」 (selfless hospitality) [日本のニュース]

今回もオリンピックについて書く。滝川クリステルさんのプレゼンはフランス語で、英語学習の参考にはならないからとその美貌ばかりに見とれていたら、途中で「おもてなし」という日本語が飛び出した。英語ではこれが selfless hospitality となっていた。



- Japanese TV presenter Christel Takigawa spoke of Tokyo’s “selfless hospitality,” which dates to its ancestors, mentioning that $30 million in lost money was turned into police last year.
“If you lose something, you will almost certainly get it back,” Takigawa said.
http://olympictalk.nbcsports.com/2013/09/07/tokyo-wins-2020-olympics-host-istanbul-madrid-ioc/

のちにプレゼンテーション全文を掲載した別のサイトを見つけて読んだら同じ訳になっていたほか、続く「落し物も返ってくる」の部分の英訳も上の記事と同じだった。つまり、これは招致委員会の公式訳ということだろう。

selfless は、c’est un sens profond de l’hospitalité, généreux et désintéressé…という原文の最後の部分にあたる(generous と disinterested ということだろうとは何となく想像がつく)。

ネットで "selfless hospitality" を検索すると、それほど多くないもののヒットがあったが、こうした表現は逆立ちしても私の頭には浮かばない。

フランス語の原文は省いて、冒頭からのある程度まとまった部分の英訳を引用する。

- We will offer you a unique welcome.
In Japanese, I can describe it in one unique word: omotenashi.
It means a spirit of selfless hospitality
One that dates back to our ancestors…
Yet is ingrained in Japan’s ultra-modern culture.
'Omotenashi’ explains why Japanese people take care of each other… and our guests... so well.
http://www3.nhk.or.jp/news/0904olympic/presentation.html#takigawa

なお ingrain は「しっかりしみ込ませる、植えつける」。いつぞや取り上げたことのある instill と似たような意味だ。「おもてなしの精神は、現代の日本にもしっかりと継承され、根づいている」ということになる。個人的には、ホンマかいな、とも思うが、まあ野暮なことはいわないことにしよう。

ちなみに手元にある和英辞典で「もてなし」を引くと、hospitality のほか welcome, entertainment, treatment, reception, service といった単語をあてている。状況によって使い分けを考えなくてはならない場合もあるだろう。また、これにつける形容詞としては kind, cordial, hearty, warm があげられていた。

上記のサイトには、クリステルさんのプレゼンの日本語訳も載っている。

- 東京は皆様を、ユニークにお迎えします。
日本語ではそれを「おもてなし」という一語で表現できます。
それは、見返りを求めないホスピタリティの精神、それは先祖代々受け継がれながら、日本の超現代的な文化にも深く根付いています。「おもてなし」という言葉は、なぜ日本人が互いに助け合い、お迎えするお客様のことを大切にするかを示しています。

このサイトには、クリステルさんを含むすべてのプレゼンが紹介されているが、添えられている日本語の中には、不自然だったり、日本人だったらこうは言わないだろう、と感じたりするものがある。

「日本語訳」とサイトにあるので当然かもしれないが、見方を変えれば、日本が行ったプレゼンは(全部かどうかはわからないが)、日本語の原文があってそれを翻訳したのではなく、初めから外国語で書かれたか、あるいは伝えたい主旨は生かしつつ外国語で自由に書き換えたのではないかと思う。

日本語としてよくできた文章でも、それを単純に英訳しただけで同じような感想を持ってもらえるとは限らない。和文英訳が役に立つのは単発的な表現力向上に限られるのではないか、ということも以前書いたことがある

もうひとつ、美貌ばかりに目を奪われていた滝川クリステルさんのプレゼンだが、私が違和感を持ったのは「お・も・て・な・し」と言ったあとに手をあわせて小さく礼をしたことだ。

日本人ならふつうはしない動作だと思う。しかし外国に行った時に、ああした合掌で現地の人からあいさつされたことが私も何度かあった。先方はこれが日本人の礼の仕方だと思っているのだろう。

もちろん、クリステルさんあるいは招致委員会はそんなことは承知の上だったと思う。外国人が持っているであろう日本人のイメージを利用した、IOC総会向けの意図的な演出のはずだ。今回はイギリス人のアドバイザーが入念なプレゼンテーション指導を行ったと聞く。

私のように「伝統的日本人」の発想で「違和感を持つ」と言っているようでは、国際競争には打ち勝っていけないのかもしれない。「おもてなし」の心は継承しつつ、なりふり構わない図太さ、面の皮の厚さを国際舞台で示すことも今後ますます必要になっていく気がする。

参考記事:
東京五輪は日本のカンフル剤になるか (a shot in the arm) 
instill 「(考えを・人に)徐々に吹き込む・植えつける」
vox pop 「街の声」「街頭インタビュー」

タグ:要人の発言
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