stutter 「どもる」「とちる、噛む」 [単語・表現]
今回も、言葉の使われる様子を示す単語をアイザック・アシモフの連作小説「ファウンデーション」から取り上げる。stutter は「どもる」「たどたどしく話す」ということである。名詞として「どもること、どもり」も意味する。
- Does this man sound like him? He's fluent, he's confident, he's full of theories, and by Space, he doesn't stutter. Is he the same person?
(注・By Space は by God と同義で、驚きを表す)
(Isaac Asimov: Second Foundation)
SFの古典的名作「ファウンデーション」3部作の最終作「第二ファウンデーション」の、クライマックス一歩手前の場面だ。おどおどして、どもる癖のある知り合いにしばらくぶりに再会したら、理路整然と立て板に水を流すように話していた。まるで人が変わったようだ。いや、果たして本当に同じ人物なのだろうか?
英語圏の学習用中辞典は、定義にやさしい語彙を使っているので、ぴったりした単語がわからない時の言い換えを身につけるうえで役に立つ。stutter を知らない場合に「どもる」をどう表現すればいいか、一例を見てみよう。
- to speak or say something, especially the first part of a word, with difficulty, for example pausing before it or repeating it several times:
She stutters a bit, so let her finish what she's saying.
"C-c-can we g-go now?" stuttered Jenkins.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
stutter には「ぎこちなく動く」といった意味もあり、車(のエンジン)や冷蔵庫、さらに経済について使った用例が辞書に載っていた。また銃がパンパンと発射音を立てることにも使えることがわかる。
- a refrigerator which stuttered and hummed
(LDOCE)
- The car stuttered along in first gear.
(OALD)
- the stuttering economy
- She flinched as a machine gun stuttered nearby.
(Oxford English Dictionary)
同義語として stammer という動詞・名詞がある。辞書を見ると、stutter と違って機械や銃にも使うとは書かれていなかった。しかし比喩的な意味なら使えるのではないかという気もする。
ネットで調べたら、この2つの単語に違いがあるのかについて議論した掲示板もあった。結論ははっきりしないが、おもしろい。
http://forum.wordreference.com/showthread.php?t=209574
また、こうした単語がスピーチや放送について使われた例も見たことがある。「どもる」ではなく、辞書にはないが「とちる」とか「噛む」と訳したほうがふさわしい場合もありそうだ。ネットには海外のテレビのリポーターやアンカーが stutter した映像がいくつかアップされていた。意地の悪い人たちもいるものである。なお、こうした「とちる」には stumble も使えるだろう。
ついでに和英辞典で「吃音」「どもり」を引くと、stuttering, stammering のほか dysphemia という専門用語が載っていた。似た響きのある dyslexia を連想したが、こちらは「失読症」「読書障害」で、アメリカのブッシュ前大統領との関係でよく目にした単語だ。
もうひとつついでに、「ランダムハウス英和大辞典」は、stutterer (どもる人)の中で、「人を指す『どもり』は差別的になるので注意」と書いていた。これは英単語ではなく日本語を使う際の注意喚起だと思うが、英和辞典にこうしたことが書かれているのは興味深い。
(参考記事)
・non sequitur 「流れにそぐわない話」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20
・in monosyllables, monosyllabic 「そっけない(返事)」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-29
・reply with uninterested yeses and noes 「気のない返事」 (ハメット「マルタの鷹」)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-27
- Does this man sound like him? He's fluent, he's confident, he's full of theories, and by Space, he doesn't stutter. Is he the same person?
(注・By Space は by God と同義で、驚きを表す)
(Isaac Asimov: Second Foundation)
SFの古典的名作「ファウンデーション」3部作の最終作「第二ファウンデーション」の、クライマックス一歩手前の場面だ。おどおどして、どもる癖のある知り合いにしばらくぶりに再会したら、理路整然と立て板に水を流すように話していた。まるで人が変わったようだ。いや、果たして本当に同じ人物なのだろうか?
英語圏の学習用中辞典は、定義にやさしい語彙を使っているので、ぴったりした単語がわからない時の言い換えを身につけるうえで役に立つ。stutter を知らない場合に「どもる」をどう表現すればいいか、一例を見てみよう。
- to speak or say something, especially the first part of a word, with difficulty, for example pausing before it or repeating it several times:
She stutters a bit, so let her finish what she's saying.
"C-c-can we g-go now?" stuttered Jenkins.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
stutter には「ぎこちなく動く」といった意味もあり、車(のエンジン)や冷蔵庫、さらに経済について使った用例が辞書に載っていた。また銃がパンパンと発射音を立てることにも使えることがわかる。
- a refrigerator which stuttered and hummed
(LDOCE)
- The car stuttered along in first gear.
(OALD)
- the stuttering economy
- She flinched as a machine gun stuttered nearby.
(Oxford English Dictionary)
同義語として stammer という動詞・名詞がある。辞書を見ると、stutter と違って機械や銃にも使うとは書かれていなかった。しかし比喩的な意味なら使えるのではないかという気もする。
ネットで調べたら、この2つの単語に違いがあるのかについて議論した掲示板もあった。結論ははっきりしないが、おもしろい。
http://forum.wordreference.com/showthread.php?t=209574
また、こうした単語がスピーチや放送について使われた例も見たことがある。「どもる」ではなく、辞書にはないが「とちる」とか「噛む」と訳したほうがふさわしい場合もありそうだ。ネットには海外のテレビのリポーターやアンカーが stutter した映像がいくつかアップされていた。意地の悪い人たちもいるものである。なお、こうした「とちる」には stumble も使えるだろう。
ついでに和英辞典で「吃音」「どもり」を引くと、stuttering, stammering のほか dysphemia という専門用語が載っていた。似た響きのある dyslexia を連想したが、こちらは「失読症」「読書障害」で、アメリカのブッシュ前大統領との関係でよく目にした単語だ。
もうひとつついでに、「ランダムハウス英和大辞典」は、stutterer (どもる人)の中で、「人を指す『どもり』は差別的になるので注意」と書いていた。これは英単語ではなく日本語を使う際の注意喚起だと思うが、英和辞典にこうしたことが書かれているのは興味深い。
(参考記事)
・non sequitur 「流れにそぐわない話」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20
・in monosyllables, monosyllabic 「そっけない(返事)」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-29
・reply with uninterested yeses and noes 「気のない返事」 (ハメット「マルタの鷹」)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-27
Second Foundation (Foundation Novels)
- 作者: Isaac Asimov
- 出版社/メーカー: Spectra
- 発売日: 1991/10/01
- メディア: マスマーケット
タグ:ブッシュ アイザック・アシモフ
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