省略符号で始まる it is (キング牧師の "I Have a Dream" 演説) [英語文化のトリビア]
先日、アポストロフィから始まる 'steen という単語を紹介したが、こうした語頭の省略符号で私が連想するのは、マーチン・ルーサー・キング牧師の超名演説 I Have a Dream に出てくる 'tis of thee... というくだりと、スタンダードナンバーの 'S Wonderful である。
以前ちょっと触れたことがあるように、人種差別のない社会の実現を訴えたキング牧師の演説から今年でちょうど50年。いつ聞いても感動的で、英語学習者ならどこかで必ず学んだことがあるのではないだろうか。この中に "My country, 'tis of thee, Sweet land of liberty, Of thee I sing..." という言葉(引用)が出てくる。
I Have a Dream を学んだ高校生の時に、このフレーズはアメリカ国歌になりそこねた19世紀のアメリカの愛国歌にあるものだということも習った。
'tis は it is のことだと辞書に書かれていて、「古」「詩」「方言」、chiefly poetic/literary あるいは old use また First Known Use: 15th century などという注がある。同じ it is の省略形 contraction, contracted form であっても、今も日常で使われる it's とはその点で異なっている。
この My Country, 'Tis of Thee は "America" というタイトルでも知られ、メロディがイギリスの事実上の国歌 "God Save the Queen (King)" と同じなので、独立したアメリカにはふさわしくないとして国歌になる機会を逃したのだそうだ。
代わって national anthem になったのが、日本人にもおなじみの "Star Spangled Banner" である。
このアメリカ国歌は「星条旗」と訳されているが、私は長いこと元のタイトルは "Stars and Stripes" というのだと思い込んでいた。しかしある時この間違いに気づいた。
spangle は「きらめく(もの)」「光るもので輝く」なので、原題を直訳すれば「星が散りばめられて光る旗」というようなことになり、日本語の題と違い、独立時の州の数にちなんだ13本の帯(条)には触れていない。なお「スパンコール」という日本語も spangle から来ている。
ついでだが、アメリカ国歌のタイトルを「星条旗よ永遠なれ」としている例を何回か見たことがあるが、これは適切とはいえまい。このタイトルは別の曲 The Stars and Stripes Forever の定訳になっているからだ。「マーチ王」 the March King と呼ばれるスーザ John Philip Sousa が作曲した行進曲で、メロディを知っている人は多いだろう。
さらに、もうひとつ「第2のアメリカ国歌」として知られる曲に America the Beautiful がある。個人的にはこのメロディが好きである。
さて、"I Have a Dream" は英語での演説ランキング第1位に置くもあるほどで、録画・録音で今も見ることができるキング牧師の肉声の演説は本当に感動的で、思わず目頭が熱くなる。先に書いたように英語学習にもよく使われているだろうが、キング牧師だからこそ可能な独特の名調子はあまりに凄すぎて、音声をまねるシャドウイングなどの教材としては、逆に手本になりにくいのではないかと思う。
もうひとつのスタンダードナンバー「ス・ワンダフル」については余談めいたことしか書けないが、長くなったので次回以降にしたいと思う。
(参考記事)
・ケネディ新駐日大使が引用した「日本の格言」?
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-31
以前ちょっと触れたことがあるように、人種差別のない社会の実現を訴えたキング牧師の演説から今年でちょうど50年。いつ聞いても感動的で、英語学習者ならどこかで必ず学んだことがあるのではないだろうか。この中に "My country, 'tis of thee, Sweet land of liberty, Of thee I sing..." という言葉(引用)が出てくる。
I Have a Dream を学んだ高校生の時に、このフレーズはアメリカ国歌になりそこねた19世紀のアメリカの愛国歌にあるものだということも習った。
'tis は it is のことだと辞書に書かれていて、「古」「詩」「方言」、chiefly poetic/literary あるいは old use また First Known Use: 15th century などという注がある。同じ it is の省略形 contraction, contracted form であっても、今も日常で使われる it's とはその点で異なっている。
この My Country, 'Tis of Thee は "America" というタイトルでも知られ、メロディがイギリスの事実上の国歌 "God Save the Queen (King)" と同じなので、独立したアメリカにはふさわしくないとして国歌になる機会を逃したのだそうだ。
代わって national anthem になったのが、日本人にもおなじみの "Star Spangled Banner" である。
このアメリカ国歌は「星条旗」と訳されているが、私は長いこと元のタイトルは "Stars and Stripes" というのだと思い込んでいた。しかしある時この間違いに気づいた。
spangle は「きらめく(もの)」「光るもので輝く」なので、原題を直訳すれば「星が散りばめられて光る旗」というようなことになり、日本語の題と違い、独立時の州の数にちなんだ13本の帯(条)には触れていない。なお「スパンコール」という日本語も spangle から来ている。
ついでだが、アメリカ国歌のタイトルを「星条旗よ永遠なれ」としている例を何回か見たことがあるが、これは適切とはいえまい。このタイトルは別の曲 The Stars and Stripes Forever の定訳になっているからだ。「マーチ王」 the March King と呼ばれるスーザ John Philip Sousa が作曲した行進曲で、メロディを知っている人は多いだろう。
さらに、もうひとつ「第2のアメリカ国歌」として知られる曲に America the Beautiful がある。個人的にはこのメロディが好きである。
さて、"I Have a Dream" は英語での演説ランキング第1位に置くもあるほどで、録画・録音で今も見ることができるキング牧師の肉声の演説は本当に感動的で、思わず目頭が熱くなる。先に書いたように英語学習にもよく使われているだろうが、キング牧師だからこそ可能な独特の名調子はあまりに凄すぎて、音声をまねるシャドウイングなどの教材としては、逆に手本になりにくいのではないかと思う。
もうひとつのスタンダードナンバー「ス・ワンダフル」については余談めいたことしか書けないが、長くなったので次回以降にしたいと思う。
(参考記事)
・ケネディ新駐日大使が引用した「日本の格言」?
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2013-08-31
タグ:音楽
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