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ソチで会見した森元首相に「なぜ英語で話さないのか」と記者が質問 [ニュースと英語]

大雪や都知事選、それにソチ五輪開幕といろいろあった週末の出来事についてネットで読んでいたら、森喜朗元首相ら2020年五輪組織委員会の幹部がソチで記者会見を行った際、「なぜ英語で会見しないのか」という質問を受けた、という記事が目にとまった。

これに対して、組織委員会の会長をつとめる森氏は「自分の世代で英語は敵国語であり、よほど特別な勉強をした人でないと外国語は理解しない」と答えたという。

英語の記事がないかと思って調べてみたら、Japan Times 紙が "Tokyo 2020 Olympic chief Mori faces media scrutiny" として取り上げていた。森氏の発言は、次のように訳されていた。

- “You know, in my generation very few people understood foreign languages,” Mori said. “I was in the second grade when the war (World War II) ended and English was considered the enemy's language. And if I should make a huge mistake (by speaking English incorrectly) it could lead to problems.
Added Mori, "And when you come to Japan, can you speak Japanese?”

同紙によると、このほか組織委員会のメンバーはみな年齢が高いうえ、女性がいないことについても質問があり、森氏は、「今後メンバーの数が増えるので、若手や女性の起用を進める」という内容の返答をしたという。

「ジャパンタイムズ」は触れていないが、最初に私が読んだネット上の共同通信の記事は、

- 出席者からは「敵国語とは不快な表現だ」(英国人記者)「ジョークだと言えば笑い話で済んだが、そうではなかった」(米国人記者)と当惑する声が聞かれた。

と書いている。これを掲載した他の国内メディアの中には、森氏が失言をしたといったような見出しを掲げているものもあった。

記事を読んでまず考えたのは、森氏の世代の平均的な日本人にとっては、英語で会見を行えと言っても無理な話だろうな、ということである(何をもって平均的というのかは議論があるかもしれず、大多数、といった方がいいだろうか)。

「正しくない英語を使って意図と違う形で伝わったら、それこそ問題になりかねない」と森氏は考えているわけだが、確かに、公の立場にある人が、公の場で中途半端な英語を使うことのこわさについては認識しておいていいと思う(日本の政治家の失言を見ていると、英語どころか日本語の使い方も危いと思うことがあるが、それはさておき)。

以前、トヨタの社長の英語での発言を取り上げた際にも書いたが、親睦の場は別として、中途半端な「日常英会話」レベルだと、公の場では逆効果になりかねないことがある。だったら、むしろ通訳を使って内容をしっかりと伝えたほうが良いだろう。

また、「英語が敵国語だった」というのも単純な事実を述べただけで、「不快な表現」という外国人記者の反応も、そんなことを言われる筋合いはない、ということもできるかと思う。あえてこうした点にスポットをあて、外国人記者のコメントまで取っている取材者も、ちょっと意地悪ではないだろうか。領土問題や従軍慰安婦についての発言とは意味あいが違うはずだ。

それでは、今回の記者会見がまったく問題なかったかと問われたとしたら(会見全体を映像などで見たわけではないので記事を読んだ限りの感想だが)、やはり、あまり褒められたものではないと答えると思う。

「公の場」と書いたが、今回は(例えば)新都知事の会見などとは違い、自国で開くオリンピックをPRする場である。その点で、組織委員会は、外国人とのコミュニケーションの経験が豊富なメンバーを早い段階で入れておくべきだったと思う。やはり英語で受け答えができる、比較的年齢が若い人であったほうがいいだろう。これは、国際的イベントの運営にあたる組織の戦略・戦術として望ましいことではないだろうか。

今回は、東京が五輪誘致を勝ち取った際のプレゼンテーションと対照的な感じがする。あのプレゼンでは、周到な準備のもと、計算されたパフォーマンスを披露した。しかし今回の会見は、昔ながらの日本の地が出た、という印象を持ってしまった。

「英語は敵国語だった」という答えに「不快」との反応が出たというのも、「そんなことを言われる筋合いはない」と一方で思うとはいえ、東京五輪をPRする場としては、あまりふさわしい答えではなかったともいえるだろう。意地悪な質問が出た際に、仮に英語でなくても、うまくかわして笑いを誘うような、当意即妙な答えができる人物がいて欲しかった。

「事実を言っていれば問題はない」、あるいは「誠意を持って当たれば相手に理解してもらえる」というのは、なるほど実際にそうであればいいのだが、実際にはこちらの一方的な願望でしかないことがありうる。私の乏しい経験からも、国際社会では、いい意味での「ずるさ」が時には必要であると思う。

(参考記事)
トヨタの社長の英語
「シャラップ」大使への失笑は英語が原因?
滝川クリステルさんの「おもてなし」 (selfless hospitality)
a safe pair of hands 「あいつなら任せられる」 (続・五輪プレゼン)
オリンピックの「猪瀬発言」 NYタイムズの記事を読む

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kmetko

ソチでそのような会見があったことを存じませんでした。とてもおもしろい記事をありがとうございます。この元首相は現役時代に
来日したクリントン大統領にwho are you?と質問したことで有名でしたよね。間違ったらいけないどころか英会話の素養すら全くない(失礼)と認識していますがどうなのでしょうか?
英国の元陸上選手(委員長)のような方は日本では無理としても世界標準から遥かに遅れた人選なんでしょうね。時々とても自嘲的に「時代遅れの國」とよんでおります(*_*)
by kmetko (2014-02-12 11:55) 

tempus fugit

森元首相はそういえばそういうこともありましたね。"How are you?" の間違いでしたっけ("Me, too." も確か森さんだったと思いますが、こちらは日本人なら私を含めて間違う人が多そうで、あまり笑い飛ばせないかもしれないですね)。

私は「本人が英語ができないからダメ」とは必ずしも思いませんが、通訳を使ってもいいから外国の人にしっかりとした受け答えができることが、こうしたポジションをつとめる人の条件だろうと思います。そして戦略、もっと平たくいえば損得勘定のうえで、外国語ができる人をサポート役および対外的な顔としてメンバーに含めるべきではないかと考えます。

by tempus fugit (2014-02-14 00:59) 

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