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罰としての "go to bed" (「花子とアン」) [英語文化のトリビア]

いくら単語や表現そのものの理解を深めても追いつかないのが、言葉にまつわる文化的背景だ。go to bed という何の変哲もない表現に、もしかしたら自分が思いもよらなかった背景があるらしいことを、朝ドラ「花子とアン」で知った。

私は朝の連続テレビ小説の視聴者ではないが、家族が週末にまとめて録画を見ることがあるので、おぼろげな筋が何となくわかる場合がある。

先日、実際には英語がロクにできない花子が宿題でズルをするというストーリーがあった。それがバレてしまい、外国人の先生が激怒して、花子に対し "Go to bed! Go to bed forever and ever!" と大声で叱りつける。

これが耳に入ったので、思わず顔をあげて画面に目をやった。字幕は「ベッドに行きなさい!」となっていたが、叱る言葉が「寝なさい!」とは、どういうことだろうか。花子は寄宿生活をしているので、自室に引っ込んでいろ、ということか(叱られた花子は部屋に戻って、ベッドならぬ布団をかぶって横になる。この英語は理解できたらしい)。

このあと花子が謹慎処分を受けているシーンが続くので、確かに「部屋にいろ」という意味だったらしい。日本語でいえば(最近は廃れてきているだろうが)「押入れに閉じ込める」に近いものがあるのかもしれない。

そんなことを考えたが、引っかかるものがあったので、"go to bed" を辞書で引いてみたが、参考になるような記述は見当たらない。「(命令形で)うるさい、黙れ」という意味が出ていたが、これはあてはまらないだろう。

そこでインターネットで調べてみたら、「花子とアン」の "Go to bed!" について書いたブログ等のエントリが結構あった。おおっと思って読んでみると、多くは「おもしろい場面(セリフ)」、「ベッドならぬ布団」というような内容で、あてが外れたと思ったら、その中に、「子どもがいうこと聞かない時に go to bed を使う」という記述があるのを見つけて、再度おおっと思った。

ただ、文化的背景につながるようなもっと詳しい情報は書かれていなかったので、英語で検索してみると、go to bed と punishment の組み合わせで、「罰として子どもに早くベッドに行かせる」ことについての記述がいくつかあった。

例えば、

- Punishments are not logical or natural. They tend to make kids feel bad. For example, if a child doesn't do his homework, a punishment may include having to go to bed three hours early. Going to bed early and not doing his homework are not related.
( ttp://discipline.about.com/od/disciplinebasics/a/The-Difference-Between-Consequences-And-Punishments-For-Kids.htm )

go to bed には、罰と何らかの結びつきがあるのだろうか。そして「花子とアン」の脚本家は、それを知っていてあのセリフを書いたのか、あるいはネイティブスピーカーの協力があったのだろうか。

それとも「赤毛のアン」に何か似たようなシーンがあって、それのパクリなのだろうか。というのも、今回ネットを調べていて知ったのだが、ドラマで幼い花子が(本名である)「はな」ではなく「花子」と呼んでくれ、としきりに周囲に言うのは、「赤毛のアン」で主人公が、「Ann でなく -e をつけて Anne としてほしい」と頼む場面をもじったものらしい。そこで、それと同じ流儀なのだろうか、と思ったのである。

「赤毛のアン」 Anne of Green Gables (およびそのシリーズ)が「愛読書だった」という女性を複数知っているが、男性からそうした声を聞いたことはない。私も小学生だったか中学生の時だったか、読んだことはあるが、正直それほど印象に残らなかったという記憶しかない。なのでストーリーも覚えておらず、ドラマとつながりがあっても気がつかないし、このトシになって再読しようという気には正直なれない。

ということで、ネイティブに質問できる環境にないこともあり、"go to bed" という表現にまつわる文化的背景があるのかや、「赤毛のアン」とドラマの関係などについて、詳しい方がおられたら教えていただければ幸いである。

余談だが、Anne といえば、「アンネ・フランクの日記」の少女もこのスペリングである。彼女はユダヤ系ドイツ人なので、原語でも「アンネ」のような発音になるはずだが、大学生の時に、英語のネイティブスピーカーが「アン」のように発音していたのを聞いて、なるほど英語ではそうなるのだなと思ったことを覚えている。

(朝の連続ドラマ関連の記事)
70年前に「勇気をもらう」は使われていたか? (連続テレビ小説「ごちそうさん」)

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コメント 7

りんごあめ

マリラが失くしたブローチに関してアンに尋ねたあたりに「部屋へ行きなさい」というシーンがあったと思います。
原書で読んだことはないので、それがGo to bed!かどうかはわからないのですが…

いつも楽しいエントリーありがとうございます
英語苦手な私ですが、こんな表現があるんだと子供と勉強させていただいてます
by りんごあめ (2014-04-22 08:02) 

tempus fugit

りんごあめ さん、ありがとうございました。自分がまったく知らなかったこうした情報を教えていただけるのはうれしいことです。今度書店で調べてみたいと思います。

by tempus fugit (2014-04-23 23:46) 

Bonheur

初めまして。校長の"Go to beeeeed!!!!"、インパクトありますよね。tempus fugitさんの分析、興味深く拝見しました。
男性で赤毛のアンファンというのは、脳科学者の茂木健一郎さん以外に聞いたことがありません。(茂木さんは、アンのファンクラブに入るほどのファンだとか)
英語、私も日々使い、TOEICは以前満点に近い点数を取ったことがありますが、英検一級受検まで頑張ろうという意欲がわきません。
一級の勉強、実用的な英語運用能力の役に立ちますでしょうか?
by Bonheur (2014-04-27 19:27) 

tempus fugit

コメントありがとうございました。さすが茂木さんともなると「女性向け・男性向けの作品」というようなことは無意味なのでしょうね。

TOEICが満点近いとはすごいですね。小生は逆に再度TOEICを受けようという気は起きません。テクニックに走ってスコアアップをめざす「TOEICおたく」を生みやすいタイプの試験ではないかと思っています。イギリスでは受験生に不正があってこの試験がビザの申請に使えなくなったそうですね。

とはいえ、どんな試験であっても、そのための学習が英語の力をアップするため(またその目標づくり)にうまく役立てることはできると思います。私など(実用英語の目のかたきにされることが多い)大学受験勉強のおかげで英語力が大きく伸びたといまでも思っているくらいです。
by tempus fugit (2014-04-27 20:31) 

葉

いつも楽しく拝見させていただいています。英語が苦手なうえにドラマも見ていないのでおこがましいかと思ったのですが、児童文学では子供に「ベッドに行きなさい」「あと一言でも喋ったらベッドに行くことになりますよ」といったシーンは結構よくあるのででてきました。大体は晩ごはん抜きとセットです。罰のなかでも重いほうというイメージです。イギリス文学で多いように思いますがフランスのものでも読んだことがあります。具体例として手元にある本ですぐ確認できたのは『メアリー・ポピンズ』のなかの『悪い火曜日』というお話です。いたずらした子供が夕ご飯をすまさないうちにベッドに行くよう命じられています。兄弟がいる場合はとくに他の子が楽しそうにしている声を聞きながら早い時間に一人でベッドにいるのは屈辱的というかつまらない思いをするのでしょう。廊下に立たせるのと同じで自分がしたことが恥ずかしいことだという自覚を持たせる意味合いが強い罰だと思います。反省した頃を見計らってオートミールやミルクなどを与えられていることが多いです。完全に晩ごはん抜きではかわいそうですからね。
by 葉 (2014-05-08 02:56) 

葉

重ねて失礼します。
ちょっと調べてみましたら、いたずらをした現場ではなくほかの部屋や階段などあらかじめ決めておいた場所で「子供の年齢×1分」time outする、ということはイギリスでは広く行われているようです。Naughty Step techniqueともいうようです。
日本でも子育ての話題でtime outという言葉は時々見ます。子供、親の両方を冷静にする効果があるようです。「super nanny」というイギリスの子育て番組で推奨されており、日本でも放映されたことがあったようです。
Punishmentではなく「discipline」「time out」で検索されるといろいろ出てくるかと思います。
メアリー・ポピンズではまずは壁を向いて反省、そのあとでまたやらかしたら最終手段として「ベッドに行きなさい」でした。
by 葉 (2014-05-08 22:23) 

tempus fugit

葉さん、大変貴重なお話しをありがとうございました。英語が苦手、と謙遜されていますが、英語を含めて自分が知らなかったことであり、大変参考になりました。今後ともお気づきの点がありましたらぜひ教えて下さい。
by tempus fugit (2014-05-09 23:34) 

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