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What's in a name?~イタかった安倍総理の「バラク」連呼 [日本のニュース]

帰宅してウェブで日米両首脳の記者会見を通して見た。オバマ大統領がはっきりと「尖閣防衛」に言及したのはやはり日本への「おみやげ」で、見返りにTPPでの譲歩を引き出して自国民への「おみやげ」にして帰国したいということだろうか。

以前取り上げたことがある「オモテナシ」も(→ 滝川クリステルさんの「おもてなし」)オバマ大統領の口から出たが、それはともかく、会見を見て奇異に感じたのは、安倍総理が何度も「バラク」を使っていたことだった。



オバマ大統領も同じように応えればまだいいのだが、「シンゾー」と呼んだのはごくわずかで、基本はフォーマルな Prime Minister (Abe) で通した。

オバマ政権のアジア重視政策「リバランス」をもじっていえば、「アンバランス」さが目立った。それが奇異に感じた理由のひとつだが、もうひとつの理由は、やはり「バラク」のパフォーマンスがいかにも不自然、総理本人のイメージにあわない、ということがあると思う(あくまで私個人の印象であるから、異論がある人もいるだろう)。

かつて小泉総理がアメリカを訪問した時に見せたパフォーマンスについては、私も当時ちょっと触れたことがあるが(→ ブッシュ大統領の "nucular" ~nuclear の発音をめぐって)、「変人」小泉のせいか、「イタい」とは感じなかった。日米関係も良好だったし、相手のブッシュ大統領も Dubya というニックネームを持つ軽め?のキャラクターだったことも大きいだろう。

そんなことを考えながら、続いてオバマ訪日を伝える記事をウェブで眺めていたら、ロイター通信のサイトで、まさに「安部総理のオバマ連呼」に触れたサイド記事があるのを見つけた。

タイトルは

- Japan PM Abe and U.S. President Obama - what's in a name?
( ttp://jp.reuters.com/article/topNews/idUSBREA3N0I620140424 )

というもの。

この What's in a name? という表現は一種の反語で、「名前に何の意味があるっていうのか」→「名前よりも実質が大切」ということである。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」に出てくると辞書に説明がある。

このタイトルは、本文を読むと、安倍総理が「バラク」を連呼したことにひっかけたものであることがわかる。うまい。

記事は、次のように始まっている。

- Japanese Prime Minister Shinzo Abe may have hoped to demonstrate his personal ties with President Barack Obama during the U.S. leader's state visit to Tokyo - but if how they addressed each other in public was any gauge, the effort fell a little short.

そして、古くはロナルド・レーガン大統領と中曽根康弘総理の「ロン・ヤス」関係、また先も書いた、ブッシュ大統領を前に小泉総理が演じたエルヴィス・プレスリーのパフォーマンスについて触れたあと、

- Abe, perhaps keen to dispel talk that he and Obama - often described as cerebral and businesslike - didn't click, spoke warmly of their Wednesday evening casual sushi dinner.

click は「ウマがあう」ということで、その否定だから、「ソリがあわない」ということになる。そうした見方を打ち消そうとしてか、会見で安部総理は、オバマ大統領から「すしはサイコーだった」と言われた、と披露する。

しかし会見で、「バラク」と言われたことにオバマ氏が示した態度を見ると、安倍氏の意気込みも空回りだったようだ、と筆者は次のように書く。

- But Abe's repeated use of Obama's first name during the media event - he called him "Barack" at least six times - went mostly unrequited, with the president referring to the Japanese prime minister as "Shinzo" only a couple of times.

unrequited は、辞書によっては「一方的な」と訳されているが、「報われない」というニュアンスがあり、これはやはり unrequited love 「片思い」という言葉で覚えたい単語だと思う。

安倍総理に対する海外の見方はもっぱら「右寄りのナショナリスト」だとメディアで伝えられ、本人や周囲の人にもそれを裏書きするような言動が見られる。そのためか、オバマ政権ではよく思われていないらしいということは広く知られている。

ブッシュ氏と違って、ビジネスライクで、いわば「遊びの少ない」キャラだと伝えられるオバマ大統領、しかも安倍氏に対する見方が厳しいのは周知の事実だ。そこまでの個人的な関係がないことは皆が知っているのに、「バラク」を連呼するのはむしろ白々しく聞こえるのではないか。

そうした相手なのだから、むしろフォーマルに「オバマ大統領」を使い、どこかここぞという時に「バラク」を使う、という形のほうが効果的だったのではないだろうか。

以前も書いたが(→ 気になる安倍総理のカタカナ語)、安倍氏は(「ナショナリスト」にしては)カタカナ語が多いし(しばしば意味不明である)、今回のとってつけたような「バラク連呼」などの言動を見ても、どうにも「幼さ」のようなものを感じてしまう。そして、個人的にはむしろその点が、「右派のナショナリスト」であることよりも危うさを感じている点である。

今回も、「国賓」扱いとなる日程をかなり無理をして設定したり(「国賓」は名ばかりで実は伴っていないと受け取れるほどだ)、超高級すし屋で夕食会を開いたり(オバマ大統領はすしを全部は食べなかったという報道も目にした)、そして「バラク」連呼のパフォーマンスである。

ロイター通信の記事の最後には記者の名前が載っていて( byline という)、書いたのは(私のように斜に構えた日本人ではなく)外国人であることがわかるが、オバマ大統領も、内心ではこの記事の筆者と同じように感じたのではないかと考えると何となくおもしろい。

TPPで実を取りたいために、顔には出さないものの、実は苦々しく思ったのではないだろうか。さらに、このまま(現時点でも継続中の)貿易交渉が妥結しなかったら、オバマは尖閣言及という彼からの「おもてなし」を無視されたことになって、ますます安倍政権と日本に距離を置きたくなるのではないか。アメリカ国内の経済界からはTPPをまとめられなかったとのオバマ批判が出るかもしれない。

私が高校の英語教師だったら、きょうの授業では、2人の首脳の会見をビデオで見せ、ロイター通信のこの記事をプリントにして配って(単語はやさしい)、上記のようなちょっとおもしろい英単語や表現を紹介する漫談をすることだろう。

愛国心の押しつけはイヤだが、さりとて観念的な「世界に平和を」といった内容の英語リーディング教材も嫌いだった私のような高校生の中には、おもしろがってくれる生徒もいるのではないかと思うが、どうだろうか。

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コメント 4

Euler

私もあの会見を中継で見ながら、総理の「バラク連呼」に関して言葉は悪いですが、うるさいなと感じましたね。
そのあとちょうどそのロイターの記事が目について、笑ってしまいました。
What's in a name? その言葉の通りだと思います。




by Euler (2014-04-26 02:58) 

河野博明

英語にあかるくないけれど、バラクを連呼するのは痛々しい感じでした。
by 河野博明 (2014-04-26 04:34) 

tempus fugit

河野博明 さん、コメントありがとうございました。安倍さんが仮に英語でスピーチしたのだったら、もしかしたらそれほど不自然には聞こえないのかもしれませんね。日本語でファーストネームを使うことは(親しい仲のフォーマルな会話では例外もありますが)まずないので、余計に目立ってしまうのかもしれませんね。
by tempus fugit (2014-04-27 11:30) 

tempus fugit

Euler さん、コメントありがとうございました(「オイラー」という名を使われているとは理系の方でしょうか?)。同じようにロイターをお読みになったのですね。短いけど、なかなかしゃれた記事でしたよね。

by tempus fugit (2014-04-27 11:34) 

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