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fabled 「伝説の」「名高い」 (ポール・マッカートニーの公演キャンセル) [音楽と英語]

英語学習では古い知識やカン違いに気づいて unlearn することが大切だろう。前回書いた「和製英語」もその例といえるが、ポール・マッカートニーの来日公演が体調不良で中止になったことを伝える記事を読んでいたら、あれっと思った単語があったので、少し書いてみたい。

ロイター通信のサイトで見つけた記事はやさしい英語で書かれているが、この中にある、

- (McCartney) was set to play at the fabled Budokan on Wednesday and in the western city of Osaka on Saturday.
( "Paul McCartney cancels Japan tour due to illness"
ttp://uk.reuters.com/article/2014/05/20/uk-paulmccartney-concert-japan-idUKKBN0E00A620140520 )

に一瞬引っかかった。fabled は、fable を「神話、伝説」「作り話」「うそ」、また動詞として「作り話をする」「うそくさいことを言う」というイメージでとらえていたので、fabled Budokan と書かれているのを見て、おやっと思ってしまったのである。

ひと呼吸置いて、「神話、伝説」とのつながりで「伝説的な」という意味だろうな、と考えなおした。辞書を引くと、確かにそうした訳語や、「有名な」「名高い」と書かれている。

同時に「架空の」「作り話の」ともあったので、私の持っていたイメージも間違いではなかったが、もっと広い意味で覚えておくべきであった。「そんなのは常識で、お前の英語力の低さが知れる」と言われればそれまでだが。

自分の認識を改める意味もあり、英語の辞書にある定義や用例を調べてみよう。

- describes something or someone who has been made very famous, especially by having many stories written about them:
the fabled film director Cecil B. De Mille
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary & Thesaurus)

- 1. celebrated in fables: a fabled goddess of the wood.
2. having no real existence; fictitious: a fabled chest of gold.
(Random House Unabridged Dictionary)

- Synonyms
legendary, fictional, famed, mythical, storied, famous, fabulous
(Collins English Dictionary)

これで the fabled Budokan がわかったが、日本人(の中高年)としては、こう書かれると、いやでも「1966年のビートルズ来日で公演が行われたあの武道館」と思わざるを得ない。

しかし、ロイターの記事を読んでみると、48年前に「伝説の公演」が行われたのと同じ会場、という説明はひと言もない。こうした背景事情を知らない人にとっては、ここに fabled があってもなくても、あまり違いはないということにならないだろうか。

とはいえ、そもそもこの記事の筆者がビートルズの来日公演を念頭にこう書いたのかどうかはわからない。もしかしたら原稿あるいはオリジナルの記事にはそうした記述があったが、ウェブに掲載する際に最終的に落とされたのかもしれない、という勝手な想像もしたくなる。

私はビートルズをリアルタイムでは経験していないが、中学生以降さんざん聴いてきたし、英語学習でもずいぶんとお世話になった(過去のエントリでも何回か取り上げている)。

そんなわけで今回のポールの公演は私も行きたかったが、宮仕えの哀しさ、去年同様、到底ムリであることがわかっていた。それでもキャンセルはやはり残念である。かつて "When I'm Sixty-four" と歌ったポールももう71歳、無理はしないで、体調を万全にしてぜひまた来日してほしいものだ。

余談だが、ポールのツアーは「アウト・ゼア」と銘打たれているが、この out there という表現については以前取り上げたことがある(→自分からは使えない表現 out there)(→out there 「いっちゃってる」「ぶっとんだ」)。

また fable の同義語として legend があるが、これについて書いたエントリもついでに紹介しておきたい(→「伝説」と legend)(→legend 「キャプション」)。

しつこくもうひとつ、上記に引用した Random House 辞典の定義に celebrated が使われていたが、これでもわかるように celebrated や celebrity は「有名(な)」が基本の意味である。日本語の「セレブ」のイメージにある「金持ちである」「品がある、高級感が漂う」ということではないので注意が必要だろう(→celebrity と「セレブ」)。

タグ:ビートルズ
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Euler

英語のunlearningの重要性に関しては、私も実感しています。
言うのも恥ずかしい限りですが、私の場合は"amazing"の意味を少し履き違えていました。
"amazing"という単語はてっきりpositiveな意味での驚きであるとばかり認識していたので、ある事故のニュース記事で"amazing"が出てきた時に戸惑いました。
LONGMANによると、
amazing:
1.very good,especially in an unexpected way
2.so surprising you can hardly believe it
ですので、私は前者の意味しか知らなかったようです。
by Euler (2014-05-24 00:37) 

tempus fugit

unlearning の難しさは、ひとつには自分のカン違いにどのように気づくかということだと思います。とはいえ結局は、英語に触れる機会を増やす、ということに尽きるということになりそうですが。また私のように中高年になると、頭が固くなってきて言葉の変化についていけず、古い用法にこだわるという危険性もあるでしょうね。

amazing については、私はアメリカの古いSF雑誌のタイトル「アメージング・ストーリーズ」で知ったということもあり、very good というより surprising の方で覚えていました。でも事故にも使うというのはちょっとおもしろいですね。



by tempus fugit (2014-05-24 17:58) 

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