SSブログ

ノーベル賞の中村修二さんは「日本人」か [日本のニュース]

今回のノーベル賞は、日本人として嬉しく誇らしいニュースだった。専門的なことは文系の私にはまったくわからないが、LEDという日常生活に密着した研究開発だったことも嬉しさを高める。

海外ではどのように報じられているか、とネットをのぞいてみたら、おもしろいことに気づいた。

- Two scientists in Japan and one at the University of California at Santa Barbara were awarded this year's Nobel Prize in physics for helping create the LED light
(CNN)

- The 2014 Nobel Prize for physics has been awarded to a trio of scientists in Japan and the US for the invention of blue light emitting diodes
(BBC)

- An American and two Japanese scientists won the 2014 Nobel Prize for Physics on Tuesday...
(Reuters)

- ...a Nobel Prize for two Japanese scientists and a Japanese-born American
(AP)

こうした表現を見て、あらためて日本語の記事を読み直したら、中村修二さんはアメリカ国籍を取得していたことを知った。

国内メディアは、「日本人3人が受賞」としている記事がある一方で、「日本の3人」とぼかしたと受け取れる書き方をしているものもあった。それでも、「過去の日本人受賞者」の数を、中村さんを含めて足し上げていることでは共通している。

私は、「日本人」とする記事が誤りだといいたいのではない。中村さんは日本で生まれ、日本にいる時に今回の研究を行なっており、アメリカ生まれの日系人とは違う。日本生まれということでは、ノーベル文学賞の候補に数える人もいるカズオ・イシグロも同じだが、彼は幼い時に一家でイギリスに移りずっとそこで育ち生活していて、やはり日本人とはいえまい(本人もそう発言している)。やはり中村さんとは異なるだろう。

さらにネットを見ていたら、まさに「中村さんは何国人か?」を話題にしている記事があることも知った。日本は二重国籍を認めていないので、アメリカの市民権を取った時点で、国籍のうえでは「日本人」ではなくなる、というのが正しいらしい。

ノーベル賞の公式サイトにあるpdf版のプレスリリースを見ても、

- SHUJI NAKAMURA
American citizen. Born 1954 in Ikata, Japan.
Ph.D. 1994 from University of Tokushima, Japan.
Professor at University of California, Santa Barbara, CA, USA

となっている。外国のメディアもこれに従って「(日本生まれの)アメリカ人」という記事を書いたのも当然だろう。

ここで思い出すのは、中村さんが勤務先を相手取って起こした訴訟である。今回も報道されていたが、中村さんの世界的研究で特許を取った企業が、その対価として彼に支払った額は2万円。提訴の時に話題となり、その後中村さんが勝訴した時も大きく報じられたのを覚えている。中村さんは確か日本の制度、慣行についての厳しい批判も口にしていた。

そういえば、まったく関係ないが、かの「イスラム国」に加わろうとした日本の大学生がいた、というニュースにも驚いた。こちらはどこまで確たる信条に基いているのかよくわからないところもあるが、「日本」に縛られないという印象を与える点で、なんとなく重なって見える。

日本に生まれ育った私は、それほど豊富ではないが海外との関わりを重ねるたびに、自分の中の「日本的なもの」をより一層自覚するとともに、そうしたものから離れることができず、またそのつもりもないという感を強くしている。

しかし「○○人」「○○国生まれ」というワクの中で考えてもあまり意味がない事柄がどんどん増えるだろうし、またそうしたワクにとらわれず、すっと乗り越えていく日本人も多くなっていくのだろう、と(月並みな考えだが)あらためて思った次第である。

ついでだが、今回のプレスリリースは、専門的な内容をのぞけば、素人の私もなんとなくわかったような気になる英語で書かれているが、

- When they obtained bright blue light beams from their semiconductors, the gates opened up for a fundamental transformation of illumination technology. Incandescent light bulbs had lit the 20th century; the 21st century will be lit by LED lamps. (注: incandescent light 白熱灯)

というような記述を読むと、今回の研究が持つ、歴史的で国境にとらわれない意義を端的に表現しているようで、何だか感動してしまった。

なおついでの脱線で、これまたノーベル賞とはまったく関係ないが、同じ音でも「受賞」と「授賞」では立場と意味が異なるので注意が必要である。プライベートな文だけでなく、れっきとした出版物でも間違っている例を見たことがあるので、つまらぬことだが付記しておきたい。

nice!(1)  コメント(7)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 1

コメント 7

シロート・モネ

はじめまして、
わたくしもアメリカ生活がしばらくありましたので、アメリカ国籍を持っておられる中村さんは、残念ながらアメリカ人だと思います。 以前、ノーベル賞を取られた根岸教授についても、アメリカの永住権を持っておられますし、今更日本人がそんなに自国民だと喜ぶのは、違和感がありました。

でも、日本出身の方がノーベル賞を取ってくれた事は、とても嬉しく思っております。

日本は日本人の両親から生れていれば、一生日本人だと思っているようですが、アメリカでは移民された方が多いので、元外国人だと差別する事も良くないという意識がありますね。
by シロート・モネ (2014-10-11 12:14) 

ばずりみっくす

個人の国籍の在り方も今後どんどん変わっていくでしょうね。そうするとますます「日本的なもの」をはっきりさせて行く必要がありますし、優秀な人材を日本国内にとどめておく必要があります。そう考えた時に、どんな制度が必要なんでしょうか?
by ばずりみっくす (2014-10-11 13:12) 

tempus fugit

シロート・モネ様、出張もあり御礼が遅くなってすみません。
国籍について血統主義を取っている国は日本以外にも多く、それ自体が良い悪いということではないでしょうが、「○○人」であることを意識するあまり、それが排外的な考えにつながらないよう注意しなくてはならないなと思います。

by tempus fugit (2014-10-15 23:06) 

tempus fugit

ばずりみっくす様、出張もあって御礼が遅くなってすみません。
宮仕えの身から考えると、私が若い頃とはずいぶん違ってきたとはいえ、それでもまだまだ日本では、ある組織から別の組織へ移るという敷居はけっこう高いのではないかと思います。より自分にあっていると感じる環境に簡単に移れないのなら、いっそのこと海外に打って出よう、という人は今後も減ることはないような気がします。

by tempus fugit (2014-10-15 23:07) 

NO NAME

はじめまして。
10年ほど在米していましたが、実際アメリカではアメリカ国籍を取得した日本人でさえ「Asian」と呼ばれているのが現状です。中国人であれ、ベトナム人であれ「Asian」になります。なので今回、アメリカのニュースが挙って「American」と報道したことには違和感しか覚えませんでした。

通りすがりに御邪魔致しました。
by NO NAME (2014-10-27 15:26) 

tempus fugit

NO NAME様、コメントありがとうございます。このAsianとは「アジア系」「東洋系」ということでしょうかね。使っている人にどのような意味合いなのか尋ねてみたいですね。
by tempus fugit (2014-10-29 22:07) 

morikana香菜子

morikana的にはノーベル賞は人格的にも優れた人に授賞してほしい。中村さんは実績は素晴らしいのだけれど、日本ではなかなか受け入れられないと思う。悪気はないのかもしれないけれど、上から目線で傲岸不遜、傲慢無礼な態度や言動に見える。勤務先とも揉め事やトラブルも起こしているし。ノーベル賞の品位も考えてほしい。
by morikana香菜子 (2017-03-19 14:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

にほんブログ村 英語ブログへ
にほんブログ村← 参加中です
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...