sure-fire 「必ずうまくいく」「絶対そうなる」(刑事コロンボ「溶ける糸」) [刑事コロンボ]
暦通り三連休が取れて、仕事多忙な中でひと息つくことができた。往年の名作ドラマ「刑事コロンボ」 Columbo から、A Stitch in Crime (邦題「溶ける糸」)を久しぶりに観た。このエピソードに出てくる sure-fire (または surefire) を取り上げよう。
これまでも何回か取り上げている「刑事コロンボ」は、私が子供の時に一世を風靡したアメリカのTVドラマだ。犯人とその犯行を先に見せる倒叙もの inverted mystery で、一見うだつのあがらない(しかし実は敏腕の)刑事が、犯人をいかに追い詰めていくかの駆け引きが見どころで、繰り返しの鑑賞に耐える名作である。
今回はやり手の心臓外科医が犯人だ。事件発生を受けて病院にやってきたコロンボ警部は、そのメイフィールド博士に、「事件とは関係ないけど、実は病院ってやつが苦手で、いつも気分が悪くなるんです。どうしたらいいでしょう」と、とぼけた相談を持ちかける。しかし博士からは「効果てきめんの治療法がひとつだけある。病院にはできるだけ近づかないことだ」と軽くあしらわれる。
- Columbo: Is there something that I can do for that?
Mayfield: There's only one sure-fire cure, Lieutenant. Stay out of hospitals as much as possible.
ということで、sure-fire は「絶対確実な」「成功間違いなしの」という意味である。必ず名詞の前に置く限定的な用法で使う。強勢は sure の方にある。
英和辞典の訳語を見ると、いいことについて使うように思ってしまうが、英語圏の辞書には、好ましくないことに用いた例文も載っていた。
- certain not to fail : certain to get successful or expected results
a surefire recipe
The movie is a surefire hit with teenagers.
There is no surefire way to predict the outcome.
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- (only before noun) (informal) certain to succeed
Children soon learn that bad behaviour is a surefire way of getting attention.
a surefire recipe for success
(LDOCE)
- certain or likely, especially to succeed:
The film looks a surefire Oscar winner.
Running into the road like that is a surefire way to get hurt.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
20世紀初めから使われているという記述がいくつかの辞書にあるが、なぜ sure と fire なのかという由来について説明しているものはなかなか見当たらない。ようやく目にとまったのが、
- by 1864, American English, from sure + fire (v.). Originally of rifles.
(Online Etymology Dictionary)
fire といってもやはり火事ではなく、ライフルについて使って「マトを絶対にはさずない」というようなことだったらしい。またこの記述によれば19世紀後半までには使われるようになっていたことになる。
さて、この「溶ける糸」で犯人の Mayfield 博士を演じたのは、これまた本ブログでこれまで何回も取り上げたSFドラマ Star Trek に出演して有名になった俳優 Leonard Nimoy である。
そしてこのメイフィールド先生、「スター・トレック」でニモイが演じたミスター・スポック Mr. Spock というキャラクター同様、いかなる時でも沈着冷静で論理的、という設定なのがおもしろい。スタッフが、ストーリーよりもニモイありきで製作したエピソードではないかと思わせるほどで、これを観たアメリカ人はニヤニヤしたことだろう。
また「コロンボ」は、観る者をしんみりさせるにせよびっくりさせるにせよ、エンディングが印象的なエピソードが多いが、「溶ける糸」は後者の最たるものである。
何しろ、あるはずの証拠が最後の最後まで見つからず捜査の打ち切りまで描かれるので、まさかこれでドラマが終わってしまうのか、と思わせるほどだ。そしてラストカットとひとつのセリフで観る者を「あっ」と言わせてスパッと終わる。初オンエアを観た時は大いに驚いたのを今でも覚えている。
また、手術に使う糸に「溶けない」ものと「溶ける」ものがあることを知ったのも子供心に「ためになった」と思ったエピソードだった。邦題の「溶ける糸」は、内容・トリックからいえばネタバレすれすれのタイトルではあるのだが。
ちなみに「溶けない糸」「溶ける糸」は、英語でそれぞれ permanent suture、dissolving suture ということが原語のセリフからわかる。
追記(2015年3月)
レナード・ニモイ氏が死去した。残念である。
(→cut through the clutter 「(多数の中で)人目を引く」 ("ミスター・スポック"のレナード・ニモイ逝く))
これまでも何回か取り上げている「刑事コロンボ」は、私が子供の時に一世を風靡したアメリカのTVドラマだ。犯人とその犯行を先に見せる倒叙もの inverted mystery で、一見うだつのあがらない(しかし実は敏腕の)刑事が、犯人をいかに追い詰めていくかの駆け引きが見どころで、繰り返しの鑑賞に耐える名作である。
今回はやり手の心臓外科医が犯人だ。事件発生を受けて病院にやってきたコロンボ警部は、そのメイフィールド博士に、「事件とは関係ないけど、実は病院ってやつが苦手で、いつも気分が悪くなるんです。どうしたらいいでしょう」と、とぼけた相談を持ちかける。しかし博士からは「効果てきめんの治療法がひとつだけある。病院にはできるだけ近づかないことだ」と軽くあしらわれる。
- Columbo: Is there something that I can do for that?
Mayfield: There's only one sure-fire cure, Lieutenant. Stay out of hospitals as much as possible.
ということで、sure-fire は「絶対確実な」「成功間違いなしの」という意味である。必ず名詞の前に置く限定的な用法で使う。強勢は sure の方にある。
英和辞典の訳語を見ると、いいことについて使うように思ってしまうが、英語圏の辞書には、好ましくないことに用いた例文も載っていた。
- certain not to fail : certain to get successful or expected results
a surefire recipe
The movie is a surefire hit with teenagers.
There is no surefire way to predict the outcome.
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- (only before noun) (informal) certain to succeed
Children soon learn that bad behaviour is a surefire way of getting attention.
a surefire recipe for success
(LDOCE)
- certain or likely, especially to succeed:
The film looks a surefire Oscar winner.
Running into the road like that is a surefire way to get hurt.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
20世紀初めから使われているという記述がいくつかの辞書にあるが、なぜ sure と fire なのかという由来について説明しているものはなかなか見当たらない。ようやく目にとまったのが、
- by 1864, American English, from sure + fire (v.). Originally of rifles.
(Online Etymology Dictionary)
fire といってもやはり火事ではなく、ライフルについて使って「マトを絶対にはさずない」というようなことだったらしい。またこの記述によれば19世紀後半までには使われるようになっていたことになる。
さて、この「溶ける糸」で犯人の Mayfield 博士を演じたのは、これまた本ブログでこれまで何回も取り上げたSFドラマ Star Trek に出演して有名になった俳優 Leonard Nimoy である。
そしてこのメイフィールド先生、「スター・トレック」でニモイが演じたミスター・スポック Mr. Spock というキャラクター同様、いかなる時でも沈着冷静で論理的、という設定なのがおもしろい。スタッフが、ストーリーよりもニモイありきで製作したエピソードではないかと思わせるほどで、これを観たアメリカ人はニヤニヤしたことだろう。
また「コロンボ」は、観る者をしんみりさせるにせよびっくりさせるにせよ、エンディングが印象的なエピソードが多いが、「溶ける糸」は後者の最たるものである。
何しろ、あるはずの証拠が最後の最後まで見つからず捜査の打ち切りまで描かれるので、まさかこれでドラマが終わってしまうのか、と思わせるほどだ。そしてラストカットとひとつのセリフで観る者を「あっ」と言わせてスパッと終わる。初オンエアを観た時は大いに驚いたのを今でも覚えている。
また、手術に使う糸に「溶けない」ものと「溶ける」ものがあることを知ったのも子供心に「ためになった」と思ったエピソードだった。邦題の「溶ける糸」は、内容・トリックからいえばネタバレすれすれのタイトルではあるのだが。
ちなみに「溶けない糸」「溶ける糸」は、英語でそれぞれ permanent suture、dissolving suture ということが原語のセリフからわかる。
追記(2015年3月)
レナード・ニモイ氏が死去した。残念である。
(→cut through the clutter 「(多数の中で)人目を引く」 ("ミスター・スポック"のレナード・ニモイ逝く))
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