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hark back 「昔のことを思い起こす」 (ローマ法王がアメリカとキューバを仲介) [ニュースと英語]

アメリカとキューバが国交交渉で合意というニュースには驚いた。かつて核戦争の瀬戸際まで至った東西対立の舞台、CIAによる度重なるカストロ暗殺計画、それが名実ともに過去のものになろうとしている。しかもローマ法王が仲介に関与したという。まるで小説やドラマを見ているようである。

バチカンの関与について書いたAP通信の記事があったので、読んでみた。それで目に留まった hark back (to) という表現を取り上げたい。

- Such Holy See interventionism harks back to the papacy of St. John Paul II, who is credited with having helped bring down communism in his native Poland by encouraging the Solidarity movement.
("Pope played crucial role in U.S.-Cuba rapprochement"
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20141218p2g00m0in024000c.html )

今回仲介の労を取ったのはキューバと同じ中南米に属するアルゼンチン出身のフランシスコ法王だが、冷戦終結期にその座にあったヨハネ・パウロ2世は、出身国ポーランドの民主化運動の中心を担った自主管理労働組合「連帯」を支援していた、という史実を引き合いに出している。なお Holy See は「ローマ法王庁」のことである。

hark は命令形で「よく聞け」を意味する文語であり、犬に跡をつけさせる時に「ほら行け」という号令でもある、と辞書にある。

ところが、これに back がつくと、「過去の事柄を思い出す(思い出させる)」、「過去にさかのぼる」という意味になる。

- 1. (of hounds) to return along the course in order to regain a lost scent.
2. to return to a previous subject or point; revert:
He kept harking back to his early days in vaudeville.
(Dictionary.com)

- to return to an earlier subject, point, or position, as in speech or thought
On occasion, their pronouncements seemed to hark back to the days of Duran Duran and Spandau Ballet.
(Collins English Dictionary)

- to be similar to something in the past
music that harks back to the early age of jazz
(LDOCE)

辞書によると、hearken (to...) 「耳を傾ける」という古語がある。hark もこれと関係があるらしい。また犬に対する号令との関係については、Wiktionary に下記のような説明があった。

- Originally a hunting command, literally “Listen! Go back!”, thence a term to refer to the process. In the 19th century US became used in a figurative sense “to go back to an earlier point or topic in a discussion”. In 20th century American usage used more loosely for references to the past (often historical past, rather than earlier in a given discussion), particularly nostalgic.

ところで、アメリカのキューバとの国交正常化は、国内で不人気にあえぐ lame duck のオバマ大統領が、外交で「歴史に名を残す」ために踏み切ったという側面もあるとみて間違いないだろう。フィデル・カストロはすでに引退し、冷戦も過去のものになり、環境も整いつつあった。

とはいえ、長年対立を続けてきた両国とあって、バチカンのほかカナダも仲介役となって、水面下の交渉を慎重に続けてきたという。フランシスコ法王がクローズアップされたが、もちろん他にも何人もの人物がかかわっていただろう。そのうちに交渉の舞台裏が明らかになってくるだろうから、それを知るのが楽しみである。

今回の合意は、(特に私のような冷戦時代に生まれ育った者にとっては)それだけで歴史的、画期的なものだが、カトリックの総本山であるバチカンが、宗教だけでなく国際政治の面でも大きな力を持っていることをあらためて知らしめたという点でも、たいへん印象的な出来事であった。

なおかなり前に、キューバ危機に関連する英語のトリビアについて書いたことがあるので、紹介しておきたい(→キューバ危機での「イエスかノーか」」)(→clear and present danger 「今そこにある危機」と集団的自衛権の容認

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