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日本人も参考になる ローマ法王の「お叱り」 [聖書・キリスト教と英語]

前回「間違いやすい英語トップ10」を紹介したが、今回は、やはり年末年始に読んだ英文から、「15の戒め」について書こう。ローマ法王がバチカンの問題点を指摘したものだが、日本を含め、どの社会・組織にもみられそうな内容が含まれている。

フランシスコ法王が去年のクリスマスに際し、「バチカンという身体をむしばむ15の病」として、組織の体質改善を求めたものだ。

もちろん、法王の言葉は宗教的な文脈で語られているが、非キリスト教徒の私も、自分の立場にひきつけて読み換えると、「なるほど、参考にしたい」と思わされるものがある。カトリック Catholic はもともと「普遍的」「万人に共通の」という意味のギリシャ語に由来するが、その通りだなとも感じる。

下記のバチカン公式ホームページにあった英文を中心に、他の英文記事も参考にしつつ、概要(というか、自分なりの読み換え)を紹介しよう。なお Curia とは「ローマ法王庁、法王の補佐たち」を指す。

Presentation of the Christmas Greetings to the Roman Curia
Address of His Holiness Pope Francis
http://w2.vatican.va/content/francesco/en/speeches/2014/december/documents/papa-francesco_20141222_curia-romana.html

1.自分が不滅で不可欠の存在であると思い込むこと
The disease of thinking we are “immortal”, “immune” or downright “indispensable”
原文はあくまで宗教的な戒めだが、常に自分を見返して、これでいいのか、直すべきところはないか、もっと向上できないか、と問いかける姿勢を持たなければいけない、というように読んでもよさそうだ。

2. 「働き過ぎ」の戒め
The “Martha complex”, excessive busy-ness
典型的日本人の私には耳が痛い。
この Martha complex (別の英文記事の訳では Martha-ism) は辞書に載っていないが、調べてみると新約聖書のルカ福音書10章にあるエピソードから取ったものであった。イエスをもてなそうとせっせと働いている姉マルタが、イエスの言葉を聞くだけで何もしていない(と姉には見える)妹マリアについてグチをこぼす、というお話だ。ついでだが busy-ness は過去のエントリ(business は 「ビジネス」ではない)で触れたことがある。

3. 心が石のように頑なになること
The disease of mental and spiritual “petrification”
mental and spiritual hardening と訳していた記事もあったが、バチカンの公式サイトにある petrify の方がやはりふさわしいなと思うのは、「岩」という意味であるペテロ Peter との関連からである。これについては以前少し触れたことがある(→peter out 「バテる」「減ってなくなる」「使い果たす」)。

4. 計画しすぎるのも考えもの
The disease of excessive planning and of functionalism

5. (日本風にいえば)「和」の大切さ
The disease of poor coordination
公式サイトでは、 「これが欠けると、音の汚いオーケストラのようになってしまう」 "Once its members lose communion among themselves, the body loses its harmonious functioning and its equilibrium; it then becomes an orchestra which produces noise: its members do not work together and lose the spirit of fellowship and teamwork." と戒めている。

6. 心のアルツハイマー病
Spiritual Alzheimer's disease
ネーミングを工夫したようなこのくだりは宗教的な内容だが、公式サイトにある、living in a state of absolute dependence on his often imaginary perceptions に陥ることなかれ、という警鐘は心したいものである。

7. お互いに張り合って見栄を競うことへの戒め
The disease of rivalry and vainglory
vainglory は「見栄、見せびらかし、虚栄心」。

8. ”存在の統合失調症"
The disease of existential schizophrenia
いまひとつ具体的なイメージがつかめなかったが、バチカンの官僚機構で働くうちに自分とそれ以外の世界が分裂し、現実や生身の人間との関わりを失いがちになってしまうことを指しているようである。

9. ゴシップや陰口の戒め
The disease of gossiping, grumbling and back-biting
back-biting 「本人のいないところで悪口をいう」のは「卑怯者」のすることであり、「ゴシップというテロに注意しなさい」と厳しい言葉を使っている("It is the disease of cowardly persons who lack the courage to speak out directly, but instead speak behind other people’s backs." "Brothers, let us be on our guard against the terrorism of gossip!")。逆にいうと、こうした「病」がバチカンに蔓延しているのであろう。

10. 上司を盲目的に崇拝することなかれ
The disease of idolizing superiors
"This is the disease of those who court their superiors in the hope of gaining their favour. They are victims of careerism and opportunism." 「自分に対するひいきを期待する出世主義とご都合主義」の虜になることである、とこれも手厳しい。

11. 他人への無関心
The disease of indifference to others
自分のことしか考えず他人への思いやりを忘れることへの警告。

12. 暗い顔をしていてもいいことはない
The disease of a lugubrious face
lugubrious は「悲しげな、憂鬱な、ふさぎこんだ」(sad and serious, gloomy) という意味だと辞書にある。特に古い世代の日本人はまじめな顔をしがちという気がするが、フランシスコ法王はラテン系とあってか、"So let us not lose that joyful, humorous and even self-deprecating spirit which makes people amiable even in difficult situations." と呼びかける。

13. 物欲にとらわれるなかれ
The disease of hoarding
hoarding は「蓄積、貯蔵、貯金、買いだめ」(ついでに hoard of という表現は覚えておきたい)。accumulation としている英文記事もあった。物理的な充足を求めても欲望は満たされるどころか一層増し、重荷になっていく、ということを宗教的な意味で戒めている内容だが、「精神的な豊かさを損なうことがあってはならない」と読み換えることもできそうだ。

14. 内輪のグループをつくって閉じこもることの戒め
The disease of closed circles

15. 世俗的な利益を求め、見せびらかすこと
The disease of worldly profit, of forms of self-exhibition
すでに触れた「病」と重なる点もあるような気もするし、俗人の私は世俗的な利益追求とはなかなか縁を切れない(同時に見せびらかすほどの富も権力もない)が、心に留めておくべき警鐘と考えたい。

フランシスコ法王は「自撮り」を実践したり(→selfie 「自分撮り」 (オックスフォード版・2013年流行語大賞))、つい先日はアメリカとキューバの国交交渉を取り持ったりと(→hark back 「昔のことを思い起こす」 (ローマ法王がアメリカとキューバを仲介))、何かと話題を提供している。今回の「クリスマスメッセージ」も、改革に向けて法王が取った行動だろうが、どのような結果をもたらすのか興味深い。

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