ajar 「(ドアなどが)半開きで」 (刑事コロンボ「忘れられたスター」) [刑事コロンボ]
週末にアメリカのTVドラマ「刑事コロンボ」 Columbo をDVDで観たら、違うエピソードの両方に ajar という単語が出てきた。続けて耳にするとやはり印象に残るものだ。
シリーズ屈指の作品と評価が高い2つのエピソード、「忘れられたスター」 Forgotten Lady と「祝砲の挽歌」 By Dawn's Early Light に出てきた。
「(戸やドアが)少し開いて、完全には閉めないで」 slightly open という意味である。名詞の前には置けず、後置 postpositive であると辞書に注意がある(つまり *ajar door とは言えない)。
前者 Forgotten Lady のセリフは、
- Yes, Henry always slept with the door slightly ajar.
後者は、
- 秘書: I don't know what the argument was about. I do know that Mr. Haynes was rude and arrogant.
コロンボ: Then you did hear the argument?
秘書: Just a little. The colonel brought me out something to file and left the door ajar.
この単語は容器の jar とは関係なく、由来は、
- 1450年以前? 中期英語 on char 変わり目の、まさに変わろうとして
(ランダムハウス英和大辞典)
- late 17th century: from a-2 'on' + obsolete char ( Old English cerr) 'a turn, return'
(Oxford Dictionaries)
さらに辞書を見ていたら、a- のつかない jar を使った on the [a] jar という表現もあった。ajar と同じ意味だと知らなければ、私など The window was on the jar. を「窓がジャーの上についている!? どういうこと?」と思ってしまうことだろう。
なお、窓やドアのなどを「ほんのちょっとだけ開ける」動作、あるいはその「すきま」には crack という単語を使えることを以前取り上げたことがある(→「窓をこわす」ではない crack a window)。
ついでに、「半開き」は half open でもいいはずなので、直接関係はないが連想で、half full, half empty という表現について以前書いたことも紹介しておきたい(→「半分は入っている・半分しか入っていない」「楽観的・悲観的」)。
「忘れられたスター」は、ネタバレになるが(「コロンボ」は冒頭で犯行を明かす倒叙もの inverted detective story なのでかまわないだろう)、往年のミュージカルスターが犯人という設定だ。
それを演じるのは実際にミュージカル女優だったジャネット・リー Janet Leigh (有名な出演作は映画「サイコ」 Psycho)だが、彼女自身が出演した Walking My Baby Back Home という1950年代の映画が、犯人の過去の出演作として使われている。つまり、映像の中の若き日の自分をうっとりと見つめている登場人物の姿は、そのままそれを演じている本人に重なるわけである。
「コロンボ」では、これ以前にも女優が女優の役を演じるエピソードがあり、英語表現にからんで以前取り上げたことがあるが(→typecast (否定で)「~というタイプには見えない」「らしくない」(刑事コロンボ「偶像のレクイエム」))、さらにそれを進めたような内容となっている。ジャネット・リーは、ある種残酷とも言える設定、そして哀しい結末を迎える登場人物を凄演しており、そのプロ根性に圧倒される。
また、もうひとつの「祝砲の挽歌」は、時代の変化を受け入れることができない軍人を描いたもので、アメリカが勝つことができなかったベトナム戦争終結の頃、1974年製作のエピソードだ。原題の By Dawn's Early Light は、アメリカ国歌 The Star-Spangled Banner 「星条旗」の冒頭直後に出てくる歌詞の一部である。
この2つのエピソードは、ミステリやトリックという点では正直「ゆるい」出来だが、俳優陣の好演もあって、どちらも見終わった後に残る余韻はシリーズ中トップクラスを争う名品に仕上がっている。
シリーズ屈指の作品と評価が高い2つのエピソード、「忘れられたスター」 Forgotten Lady と「祝砲の挽歌」 By Dawn's Early Light に出てきた。
「(戸やドアが)少し開いて、完全には閉めないで」 slightly open という意味である。名詞の前には置けず、後置 postpositive であると辞書に注意がある(つまり *ajar door とは言えない)。
前者 Forgotten Lady のセリフは、
- Yes, Henry always slept with the door slightly ajar.
後者は、
- 秘書: I don't know what the argument was about. I do know that Mr. Haynes was rude and arrogant.
コロンボ: Then you did hear the argument?
秘書: Just a little. The colonel brought me out something to file and left the door ajar.
この単語は容器の jar とは関係なく、由来は、
- 1450年以前? 中期英語 on char 変わり目の、まさに変わろうとして
(ランダムハウス英和大辞典)
- late 17th century: from a-2 'on' + obsolete char ( Old English cerr) 'a turn, return'
(Oxford Dictionaries)
さらに辞書を見ていたら、a- のつかない jar を使った on the [a] jar という表現もあった。ajar と同じ意味だと知らなければ、私など The window was on the jar. を「窓がジャーの上についている!? どういうこと?」と思ってしまうことだろう。
なお、窓やドアのなどを「ほんのちょっとだけ開ける」動作、あるいはその「すきま」には crack という単語を使えることを以前取り上げたことがある(→「窓をこわす」ではない crack a window)。
ついでに、「半開き」は half open でもいいはずなので、直接関係はないが連想で、half full, half empty という表現について以前書いたことも紹介しておきたい(→「半分は入っている・半分しか入っていない」「楽観的・悲観的」)。
「忘れられたスター」は、ネタバレになるが(「コロンボ」は冒頭で犯行を明かす倒叙もの inverted detective story なのでかまわないだろう)、往年のミュージカルスターが犯人という設定だ。
それを演じるのは実際にミュージカル女優だったジャネット・リー Janet Leigh (有名な出演作は映画「サイコ」 Psycho)だが、彼女自身が出演した Walking My Baby Back Home という1950年代の映画が、犯人の過去の出演作として使われている。つまり、映像の中の若き日の自分をうっとりと見つめている登場人物の姿は、そのままそれを演じている本人に重なるわけである。
「コロンボ」では、これ以前にも女優が女優の役を演じるエピソードがあり、英語表現にからんで以前取り上げたことがあるが(→typecast (否定で)「~というタイプには見えない」「らしくない」(刑事コロンボ「偶像のレクイエム」))、さらにそれを進めたような内容となっている。ジャネット・リーは、ある種残酷とも言える設定、そして哀しい結末を迎える登場人物を凄演しており、そのプロ根性に圧倒される。
また、もうひとつの「祝砲の挽歌」は、時代の変化を受け入れることができない軍人を描いたもので、アメリカが勝つことができなかったベトナム戦争終結の頃、1974年製作のエピソードだ。原題の By Dawn's Early Light は、アメリカ国歌 The Star-Spangled Banner 「星条旗」の冒頭直後に出てくる歌詞の一部である。
この2つのエピソードは、ミステリやトリックという点では正直「ゆるい」出来だが、俳優陣の好演もあって、どちらも見終わった後に残る余韻はシリーズ中トップクラスを争う名品に仕上がっている。
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